【全文公開イベントレポート/ベクトルグループでは、なぜこれほどの速度で事業提携が進むのか?】
自己紹介
Spready株式会社 代表取締役社長 佐古 雅亮(以下、佐古):皆様本日はよろしくお願いいたします。Spreadyの佐古と申します。私は大学卒業後一貫してHRマーケットにおりまして、ベンチャーキャピタルでのHRのアクセラレーター経験もあり、スタートアップ関連が特に明るいです。
前職の事業会社では、新規事業部隊の立ち上げと、そこでの事業責任者の経験もありますので、スタートアップサイドと大企業発の新規事業と、この両方を経験をしている立場です。本日主催のSpreadyの創業は2018年の5月となりますので、現在三期目でございます。
株式会社ニューステクノロジー 取締役兼 株式会社ベクトルオープンイノベーション責任者 大北潤氏(以下、大北):皆様はじめまして、大北と申します。私は「ニューステクノロジー」というベクトルグループの子会社の役員とベクトルのオープンイノベーション部の責任者をやっています。
新卒で人材紹介会社に入社後、サイバーエージェントグループにて国内外の支社立ち上げ、その後ベクトル社とマイクロアド社の合弁会社であるニューステクノロジー社を設立しました。簡単な実績としては九州大学との産官学連携やライトアップ社との助成金支援事業、及び今日のSpreadyさんとも一緒に事業を行っています。
ベクトルグループについて
ベクトル社について少しお話すると、経営理念としては「いいモノを世の中に広め人々を幸せに」ということを考えております。
ベクトル社はPR領域とその他の領域に分かれており、PR領域の売上は43%でその他の領域では57%ですので、ベクトルのご存じの方からすると少し驚かれることも多いですが、そういう文脈ですとかなり他業種に攻めている状況でございます。
佐古:ありがとうございます。PR領域の売上はもう半分以下なんですね。
大北:そうですね。PRからの脱却みたいなところが直近のテーマになっていますね。そもそもPRって何にでも使えるなと思っていて新しい商品・サービスができたら必ずPRが必要になってくるのでどんなことにも連結できると考えています。ですのでDtoCや化粧品といった自社事業を作ることでPR・マーケティングノウハウを培っていきたいという視点に切り替わってきて、現在多業種に攻めている状況ですね。
佐古:ありがとうございます。ここだけで十分話を広げられそうですが一旦停めます。
「ベクトルはどうしてこんなに事業を生み出せるのか」
ではここからは「ベクトルはどうしてこんなに事業を生み出せるのか」というテーマでお伺いしたいと思います。ここにある9つのテーマに沿ってお話しをお聞かせください。
まずお聞きしたいのが3番目に関連してですが、「ベクトルの資産」とはどんなものか、社内の皆さんはどう捉えているか、ということです。
大北:「人」が一番の強みだと思っていて、良くも悪くもベクトルにはエンジニアが殆どいなく営業が大部分を占めるため、技術が無い分どことでも組めるのが強みかなと思っています。
タクシーサイネージ事業を例に挙げますと、都内で最大級のサイネージ事業を手掛ける中でマネタイズやコンサルティングに関する相談を多く頂くようになりました。そこで何故タクシーサイネージがうまくいっているのか因数分解をしてみると、ビジネスパーソン・個室空間・乗車時間15分程度....という具合に分けていき、これがビジネスパーソンじゃなくて美容系だったらどうなるか、15分を60分にすればどうなるか、などと色々と広げていきながらサイネージの展開を考えています。そうなったときに個室とサイネージがone to oneでのコミュニケーションにフィットしていると導き出すことが出来たので、最近では美容室×サイネージを組み合わせての新規事業も考えています。
既存事業を1つ創ったらそれを因数分解して、その因数を基点に事業を広げていくということをやっていますね。
あと他に良かった部分ですと、身の回りのサイネージのコンテンツだと天気予報や直近のニュースぐらいしかない場合が多いんですよ。ですがタクシーサイネージだとニュースピックスさんや旅ラボさん、東京カレンダーさんなどがビジネスパーソンにアプローチしたいという思いで素材を提供してくれるので、コンテンツホルダーになることもできます。そのようなコンテンツホルダーを強みとしてビジネスの横展開も十分考えられますね。
佐古:ありがとうございます。ニューステクノロジーを立ち上げる際にもうタクシーサイネージ事業に取り組むのを決めていたのでしょうか?
大北:設立が2014年でタクシーサイネージ事業が2019年ですので5年ほどブランクがあります。ベクトルがPRのデジタル化を考えていて、そこでデジタルノウハウを豊富に持つマイクロアドと組んでニューステクノロジーを設立しました。最初のメンズコスメ事業は大失敗だったのですが、当時JAPAN TAXIさんが有名になってきていたので、二番煎じでしたがまだ取りにいけてないマーケットを取りにいこうということで、タクシーサイネージ事業に参入しました。
佐古:なぜ新規参入から都内最大級に成長できたのでしょうか?
大北:ちょっと話しにくいのですが、マイクロアドにデジタルサイネージのノウハウがあったのでタクシー会社と話す際に、自社のデジタル技術をフックにして口説き落としていった、という形ですね。
ベクトルグループの強みは圧倒的な決断スピードの速さ
佐古:なるほど、面白いですね。ニューステクノロジーは元々合弁会社ですが、そういう文脈だとベクトルグループは余り自前主義にはこだわらずに他社との連携が中心になるのでしょうか?
大北:そうですね。ベクトルの強みとしてはナショナルクライアントが多く、営業先を豊富に持っていることだと思っています。なので技術力はあるけど営業先を持っていない企業と提携するケースが多いですね。
佐古:ありがとうございます。ちなみに大北さんは他の会社も多く経験しているかと思いますが、ベクトルを客観視するとどんな会社なんですか?
大北:「決断が速い」・「挑戦スピリッツが高い」の2つですね。あまり「出来ない」という考えがない会社だと思います。
事業化・会社化に関してはベクトルグループの役会で承認を得る必要がありますが、毎週子会社役員定例の中で、事業にいくまでのプロセスを決める段階では社長の前でアメリカのリリース情報を共有して「これは今後日本に来ます、やらせてください。」、「よしやろう!」というレベルですね。
佐古:本当ですか。そんなすぐに進むんですか?
大北:はい、リリース情報を見て役員陣が日本で流行りそうだなと思ったらもう進めますね。
既存アセットがない領域でも新規事業を生み出す方法
佐古:既存アセットとの親和性が薄い領域でも参入しますか?
大北:それでもいくと思います。それが採択されたらもう採用の段階からヘッドハンティングに動きますね。
佐古:先程の図でいくとこの飛び地の領域もやっているということなんですね。最近の話ですとESG投資の連携も単なるリリース情報から始まったんですか?
大北:弊社が取引している証券会社さんからグローバルだとESG投資が流行しているという情報が代表の長谷川の耳に入り、調査を進めていくと、マーケット的に面白そうだったので新たに取り組むことになりました。ただ、何をするか決まってないのでSpreadyに「ESGについて詳しい人とお会いしたい。」という案件を載せた所、九州大学の教授を紹介頂き、そこで提携が決まりましたね。
※Spreadyに掲載中の案件
佐古:ありがとうございます。そう考えると世の中にPR会社が多数ある中で、ベクトルがこれ程素早く事業を生み出せるのは、どこに違いがあるのでしょうか?
大北:役員陣の決済のスピードが本当に速いですね。特に決まった予算は無く稟議が動きます。面白い事業のネタがあれば子会社の役員がアサインされます。進めていく中で相応の資金が必要になった場合でも役員の決裁ライン以内であればその場で決まります。
佐古:事業の撤退ラインなどはあるのでしょうか?
大北:それはありますね。30~50億規模のマーケットを取りに動いてますが、そこで半年くらい取り組んでも全く目が出なさそうであれば撤退します。そこは事業責任者の決断に委ねられています。一応子会社で役員をやっている方々なので撤退の意思決定にも対応できるメンバーだと思いますね。
新卒入社の社員でも、新規事業について試行錯誤ができる
佐古:ちなみに例えばPR関連の方に新卒で入った方々でも新規事業に従事するチャンスはあるんですか?
大北:全然ありますよ。僕の下にも新卒入社の人がいて、彼がアイデアを出して実行してもらえれば、もう事業になると思います。年次や経験に関係なく「やってみる」・「撤退する」・「失敗する」ことをどれだけ試行錯誤できるかが重要だと考えています。
佐古:面白い事業体ですよね。ちなみに今進捗中の事業ネタって会社全体だとどれくらいになりますか?
大北:社長直下のプロジェクトですと50くらいですが、グループ全体で見ると3桁はいくと思いますね。非常に面白いフィールドがありますので、是非ご入社をご検討ください。
新規事業が社内で評価されない問題
佐古:ありがとうございます! 社内評価にも触れてみたいのですが、新しい事業を創造する中で「評価されない問題」ってあると思うんですよ。新規事業よりも本業の方が得になるケースが多いかもしれませんが、ベクトルはどうなのでしょうか?
大北:まず、自分の会社をやりながら新規事業に取り組むケースが多いです。新たに事業がローンチされた時は、インセンティブとして株式や利益の何%がもらえる選択権があります。全員役員たちなので、自分たちの会社を動かしつつ新しい城を創り、それに対するリターンも貰えるよう交渉をしていくのが、社内評価の形になります。自分の会社が既にある分、撤退の意思決定も早くできるのも弊社の特徴ですし、今年に入って事業の発案者を社長に抜擢して、自分の城を新たに作れる仕組みもできあがってきましたね。
Q&A
佐古:ありがとうございますここからは参加者様の質問もひろっていきますが、ベクトルグループ全体で利益のどれ位を新規事業に費やすか、という指標はあったりしますか?
大北:具体的な数字は控えますが、弊社は基本的に利益ベースで考えており、そのあたりの数値を基に決めていますね。
佐古:コロナが新規事業創出のスピードに与える影響を知りたいという質問もきています。
大北:上がったと思います。ベクトルとしても元々PR会社ですので、イベントなどのオフラインコミュニケーションは強かったのですが、それがコロナで止まったため代替手段を考える必要性が増してきました。ですので事業創造のスピードやPRからの脱却に関する意思決定スピードは数倍上がりましたね。
佐古:ありがとうございます。ベクトルグループが新規事業を推進する中で独自の「成功」・「失敗」の定義はあるのでしょうか?
大北:成功に関して言うと、売上の基盤を作っているPRチームが新規にできたサービスを積極的に拡販しているのを見ると成功だと思います。逆にPRチームからの反応がよろしくないと失敗感を感じることはありますね。ただ失敗しても諦めずに回転し続ければ良いという考え方も根付いていますし、思いついたアイデアをすぐクライアントにぶつけることができるのでフィードバックも素早くゲットできPDCAも回しやすいなと感じています。
佐古:ありがとうございます。次の質問でオープンイノベーション部の責任者である大北さんのミッションはどこまで定義されていらっしゃいますか?
大北:そうですね、シンプルに年内に数社設立といった数値的目標は持っています。
新規事業創出の困難を手助けするサービスは"Spready"
佐古:ありがとうございます。大北さんがこれまで数多くの新規事業創出に携わった中で最もローンチが困難であった事業は何でしたか。またそれをどうチームで乗り越えたのでしょうか?
大北:まだ達成感はないですが、今向き合っているESG事業ですね。SDGs関連のサービスになるのですが、「格付け機関になる」・「コンサルティングする」・「PRする」という三つの軸で進めています。ですがアメリカやイギリスの格付け機関に協業を持ちかけても鼻で笑われますし、コンサルの文脈で話をしても「うちはマッキンゼーのような企業としか組まない」などと言われますので、困難な壁ではあります。しかしある程度の光明は見えてきているのでやり甲斐もあります。
どのように方法で乗り越えるかは、僕は結構Spreadyさんを使う機会が多いです。とりあえず相談するとそれを案件化してくれて相談の壁打ち相手を紹介して頂けのは嬉しいですね。他にもオープンイノベーション系のプラットフォームや顧問サービスなどを使っていますが、Spreadyさんの費用感・スピード感は本当にオープンイノベーション部の支えになっています。別にやらせとかではなくて、皆さん使って頂けるとめちゃめちゃシナジーがが生まれますよ。
※Spreadyに掲載中のニューステクノロジー社の案件一覧
佐古:仕込み無しでのコメントありがとうございます笑 元々あらゆる人探しを行うために走りだしたSpreadyですが、ニューステクノロジーさんの案件のように直近だと新規事業創出時のネットワーク創りで利用頂いている企業さんが多いですね。その中で大北さんはもうすでに10種類以上の案件を出されていたと思います。
大北:そうですね。何かしら案件を出したらどれだけ厳しくても1名は必ずインサイトをくれるので事業を創っていく上では不可欠なツールだと本当に思います。
最後にメッセージ
佐古:ありがとうございます。今日のオーディエンスにはBizdevや事業開発に従事されている方が多いのですが、ベクトルの事業創出の意志決定スピードを他社で実現するにはどうすれば良いのでしょうか?
大北:もちろん会社規模次第ですが、とりあえず「勝手にやってみる」のが良いと思います。例えば上司としては意思決定によって責任を持ちたくない場面もあるでしょうが、部下が勝手に進めた場合逃げれる時もあると思うので、そういうやり方もアリだと捉えています。
むしろ勝手にやれる胆力がある人の方が相応の結果もはね返ってきやすいかもしれませんね。
あと、ベクトルにお声がけ頂いたら僕たちはすぐ判断して勧めますのでその辺りもお手伝いできます笑
佐古:なるほど、実際ベクトルさんは連携先としても本当に幅広いリソースをお持ちですよね。
事業提携に興味ある方は大北さんまでご連絡を
大北:そうですね、お声がけ頂いたら何かしらお手伝いできる部分はあると思いますね。相談したら「提携先のベクトルはGOサインを出していますが、どうですか?」という具合にポジティブな意志決定を促すやり方でも良いかなと思います。いつでもFacebookで申請して頂いて構いませんし、是非一緒に面白いサービスを創っていければと思っています。
佐古:ありがとうございます。最後になりますが、今回ご参加いただいた皆さんにメッセージをお願いいたします。
大北:「事業提携」というワードだけが大きくなって小難しいように聞こえるかもしれませんが、僕自身大手やスタートアップの方々とコミニケーションを取る際に、資料を一枚も持たずにブレストから始めて事業構想を拡げていく時が多いんですよね。自社やマーケットを入念に調べて分厚い資料を作成してからでないと始められないというイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、僕らとしては真っ白な状態から一緒にブレストして新たなサービスを見つけていくことも多いので、気兼ねなくご連絡頂いて何かしら良いシナジーが生み出せればいいなと考えています。どんどん"Do"して良いアウトプットを創っていきましょう!
Spreadyは今後も新規事業担当者向けにイベントを開催していきますので、ご興味がある方はこちらのFacebookページをフォローいただくか、Peatixページをフォローください。
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