見出し画像

【10/4開催】「オープンイノベーションって?アイデアの価値に迫る」Spread×DEMOLA HOKKAIDO オンラインイベントレポート


北海道大学が主催する、学生のアイデアと企業の課題を結びつけるフィンランド発祥のオープンイノベーションプログラム『DEMOLA HOKKAIDO』と、北海道のスタートアップカルチャーの醸成を目指して活動するスタートアップコミュニティ『Spread』がコラボしたトークセッションを10月4日(月)に開催。オープンイノベーションによる起業の方法をゲストのお二人にお聞きしました。



杉村 逸郎さん:スタートアップ創出部門 副部門長
2000年 北海道大学大学院水産学研究科博士後期課程修了。乳業会社、再生医療ベンチャー、公的研究機関、受託研究会社を経て、現在 スタートアップ創出部門副部門長を務める。2018年 企業と学生による価値創出プログラムであるDEMOLA HOKKAIDOの運営を開始、アントレプレナーシップ醸成を進めている。

大久保 徳彦さん:株式会社POLAR SHORTCUT 代表取締役 CEO
北海道帯広市出身。慶應義塾大学を卒業後、新卒でソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)に入社し、プロジェクトリーダーとして多くの新商品企画や新規事業推進プロジェクトに従事。その後、動画制作のスタートアップ企業 Crevo株式会社にて、経営企画・人事・財務・新規事業開発領域をNo.2として統括。2020年4月に札幌へ拠点を移し、北海道の成長産業・ベンチャー支援をテーマとして株式会社POLAR SHORTCUTを創業。2021年4月にベンチャーキャピタルファンドを組成。

種市 慎太郎(モデレーター):IRENKA KOTAN LLC 代表
一般社団法人北海道共創デザイン機構 事務局長。
Hokkaido StartUp Community Spread 事務局長。
NoMaps実行委員会 学生担当
2001年生まれ。学生時代より若者の挑戦の場をつくる団体を立ち上げ運営し、札幌を中心に活動を展開。
2020年4月により良い社会設計の方法を自身で探究/実践するための組織として、「 IRENKA KOTAN LLC」を創業し代表社員に就任。まちづくりや教育事業/コミュニティに関する調査企画を担うコミュニティシンクタンク「C.R.A.B」共同代表。探究をテーマにしたwebメディアや記事の制作や映像などを企画制作するコンテンツレーベル「SENSE:D」共同代表。デジタルクラフトをテーマにデジタル基盤のデザインやWeb制作を担うデザイン事務所「KraftsmaN」共同代表。


アーカイブはこちらから▼
https://twitter.com/spread_hs/status/1444965613206523912?s=20

YouTube版はこちらから▼
https://youtu.be/3PGtxSUhPEM

____________________________________________________________

DEMOLA HOKKAIDOについて

〇DEMOLA HOKKAIDOとはどんなプログラムなんでしょうか?

杉村さん(以下、杉村):企業が出してきたチャレンジ課題に対して、企業と学生が一緒になり、2ヶ月かけて新しい価値の創出を考えていくプログラムです。
学生と企業の担当者の方とでやり取りをしつつ、企業の課題ベースでの話から社会課題まで、広い目線で課題を設定しています。

10年後20年後の未来を担ってくれる学生がいま何を考え、何に価値を感じ、どういう世界を作っていきたいと思っているのかは企業にとっても気になる部分です。

具体化と抽象化を行ったり来たりしながら、解決策はそれでいいのか?とワークショップと思考のターンを挟みながら、最後には企業の社長さんなどに5分間のプレゼンを行います。
採択された場合には報奨金が企業から学生へ送られることもあります。

北海道大学では2018年からこのプログラムを導入していて、今までの4年間で22課題くらいを取り上げてきました。
大学生、大学院生を中心に札幌近郊の大学などから北大生以外も受け入れています。社会人学生や留学生の方も中にはいたりしますね。

またDEMOLA HOKKAIDOでは「デモーラファシリテーター」と呼ばれる、メンター的立ち位置のメンバーがサポートにつきます。「デモーラファシリテーター」は全員がDEMOLAの生まれたフィンランドで研修を受け、認定されるという仕組みになっています。

〇DEMOLAのようなプログラムが学生へ与える影響についてはどう思いますか?

大久保さん(以下、大久保):北海道で起業しようと思った時にはまだロールモデルが少ないので、きっかけづくりをどうしていくかがすごく重要。DEMOLAのようなプログラムを通じて起業について考える機会があるのは貴重なことだと思います。

杉村:学生には"自分の得意なところを伸ばせ"と言っています。1人が所属する会社を作るにしても本当に1人で作るわけじゃない。経営や法律のことが分からない時は知識を持った人と思い切って協力することも大事だなと思います。苦手な部分を人並みまでに成長するのを待っているとどうしても時間がかかってしまうんですよね。

全く別の人の考えを知ることも大切だと思っていて、学生はこのプログラムを通して自分で考えて行動する力が身につくと思っています。企業は学生の突飛なアイデアを求めていたりするので、バラバラの分野の学生が混ざってシナジー効果のように、今まででは思いつかないようなアイデアが出てきたりします。


〇企業から見て学生のアイデアは実際欲しいものなんでしょうか?

大久保:企業側はアイデアを考え尽くしていて、新規事業部なども人員が限られているので新しいアイデアが出てきづらいのが現状だと思います。DEMOLAと関わるなら企業としては学生のリアルな声やアイデアを聞きたいところですね。
ただ、こういった取り組みでネックになるのが、"単に学生と企業の新規事業担当をマッチングするだけだと、学生側から良い形で意見を引き出すのが難しい"というところなんですけど、DEMOLAの場合はデモーラファシリテーターという存在が学生と企業の間に入って調整してくれるのがありがたいなと思いますね。

◯企業が求めているアイデアと学生から出てきたアイデアのすれ違いはあるのでしょうか?

杉村:"すれ違い"という言葉に異議を唱えたいですね。
今まで考えもしなかったアイデアが生まれることが醍醐味なので、良い意味ですれ違わなかったらプログラムをやる意味はないかなと思っていたりします!
あまりにも凝り固まっていたら逆にデモーラファシリテーターが全く違う話題を提示する時もありますね。

急に集まった学生が3日間でイノベーション!って結構難しいと思うんです。
無意識の中で枠を作ってしまっていることが多いので、イノベーションっていうのは自由で、まずはアイデアを広げてみようという考えをプログラム前半では特に大事にしています。

◯大久保さんも学生の起業相談に乗ることがあると思いますが、どんなことを意識して学生さんと接していますか?

大久保:”クロスインダストリー”という切り口を意識しています。不動産業界では当たり前なことを小売業界に持ってくるなど、他の業界での考え方を組み込んでみる、かけ算の考え方が面白かったりします。
そういうアイデア創出の際に大事な考え方などをプログラム化したものがDEMOLAなんだとお話を聞いていて感じました。

杉村:自分で起業するのも会社の中で新規事業を作るのも、実はあまり変わらないので、将来どんな進路を選んでも実になるプログラムにはなっていると思います。
今のところ学生のアイデアの採択率は70パーセントほどです。


大久保:結構多いですね!

杉村:そうですね、多くのアイデアが採択に繋がっています。ちなみに採択されたりプログラムを通して繋がった学生と企業のその後に関しては両者に任せていて、中には実証的にアイデアを試す中で、プログラムで関わった学生をアルバイトとして雇っていた企業もあったりしますね。

コロナの前はフェイストゥーフェイスだったので、東京の企業などは少なかったですが、コロナ禍でオンラインがメインになったので、企業も学生も全国から集まるようになりました。

運営側でそこまで業界をバラしている訳では無いですが、自然と色んな業界から声がかかるので学生のアイデアは求められているのだなと自分たち自身も実感しています。

大久保:北海道ではIT企業が少ないこともあり、IT企業では一般的な「外部の業務委託やコンサルティングを活用する」「他組織とコラボする」といった仕事の進め方に馴染みが少ないように感じます。なので、DEMOLAのように企業が他組織や学生と協力する流れは良いと思いますね。

オープンイノベーションで生まれるアイデアの実装


◯実装しやすいアイデアの特徴やポイントはありますか?

杉村:10〜20年後に目指す社会に向けた第一歩目になるような具体案をローンチすることが多く、”今”の視点だけでなく、未来からバックキャスティング(逆算)したアイデアは採択されやすいし実装しやすいですね。

大久保:オープンイノベーションというものは、「大企業の新規事業」として動かしていかないといけないという縛りがあります。ゼロから何かアイデアを発想するというよりは、学生の視点や切り口を参考に、企業側の「既存事業」のターゲットや課題の捉え方をズラしていくという考え方のほうが、現実的な実装はしやすいかもしれないですね。

◯アイデアの実装とお金の面についてお聞きしたいです!

杉村:実際にそのアイデアの実装にどれだけお金がかかるのかなどは、まだ学生には分からない部分です。だからこそ企業の担当者の方と協力することで、アイデアの広がりと収束、実現性のバランスが取れる気がします。「自分たちが本気でやりたいと思っていないと企業も採用してくれない」というのは学生によく伝えていますね。自分自身がそのアイデアや実装された先の社会にワクワクするかはすごく重要だと思います。

大久保:学生の中でおそらくイメージがついていないところとして、スタートアップでの新規事業を立ち上げる実装の仕方と、大企業での新規事業を立ち上げる実装の仕方は必要になってくるスキルや考え方が全く違うというのがあります。

大企業で新規事業を立ち上げる時の事業計画は、各企業によって異なるお作法があったりするので、学生はそこには深入りせず企業の担当者に任せてしまって良いと思います。

それでも基本的な売上や利益計算の考え方を知っておくことは大切ですね。そのために、学生のうちから小規模でもお金を自分で動かす経験をしておくと良いと思います。カレー屋さんを運営してみるとか...


◯今後の北海道においてのスタートアップに期待するところは?

杉村:北海道でやるならやっぱり東京でやっていないことをやってほしいという気持ちはあります。

大久保:北海道のエコシステム的な課題として、やはりスタートアップが少ないというのがあります。東京のニュースを見ていると、”何億円調達した”とか、”大学と連携してディープテックを実現した”など、わりとハイレベルな話が多いように思うんですけど、もっとスモールビジネスやライトなスタートアップがまずは学生の中から生まれてくるといいなと思いますね。テックに寄らないスタートアップの方が取り組みやすい気がします。

最後に


杉村:昔に比べて少しづつ学生の方がスタートアップを始めやすい世の中になっていると思うので怖さもあると思いますが、まずはチャレンジしてみてほしいです!僕自身「明日から来なくていいです」と言われたこともありましたが無事に今生きています(笑) 

大久保:DEMOLA HOKKAIDOやSpreadのイベントに参加すること自体がスタートアップについて考える第一歩になると思うんですけど、こういうイベントやプログラムの情報を聞いても参加しない人が多いので、そこで一歩踏み出すかどうかが大事だと思います。
あと個人的に北海道ぽい事業アイデアってなんだろうと考えているので壁打ちしたい方がいればぜひお待ちしています!



* * *

次回のイベントもお楽しみに。
文・長 幸絵子

登壇者のtwitterアカウントはこちら▼

DEMOLA HOKKAIDO
https://twitter.com/DemolaInJapan?s=20

大久保 徳彦さん
https://twitter.com/OkbNori

_________________________________

こんなことを聞きたい!Spreadの運営に関わりたい!感想等々、ご意見をお待ちしています。 
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeC9Fa1-Yv6kDPoR_UcwxpEsFHlCFSoh7EzvW879wDPBg-udA/viewform

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?