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VODの楽しみ方と、ネットの楽しみ方

Netflix『失くした体』

『失くした体』とは、フランスで2019年に製作されたアート系アニメーション映画で、1つの「切断された腕」が街をさまようという、少々異質な物語。

冒頭で描かれるのは病院の一室だろうか、そこに保管されていた「切断された腕」がひとりでに動き出す。指を使って4足歩行するように歩きながら、フランスの街中で人混みに紛れたり、車に乗り込んだり、川に流されたりしながら、何かを目指すかのようにさ迷い続ける。
それと平行するように、ある若者の人生が描かれる。幼少期の頃に両親を事故で亡くし、大人になっても仕事は上手くいかず、適当な毎日を過ごす。この2つが、物語の最後で繋がりを見せる。

フランスは「芸術の都」と言われるだけあって、本作もアート色の強い作品となっている。物語の中では特別に大きな事件が起こるわけでもなく、描かれているものは普通の一般家庭と思われる人の生活。そして彼らが住むアパート、道路を走る自動車、地下鉄など、フランスの一般的な風景を描いていると思われるが、日本と大きな違いはない印象を受ける。日本もフランスも「普通」は同じという、異国の文化を垣間見るようでもある。

そんな普通と「若者の人生」というリアルな現実に「腕が動く」という非現実的なものと、相反する要素が交錯していく。
この作品を観ていると、私達も同じ、普段見えている日常と見えていない非日常が交錯しながら生きているのではないだろうか、そんな感覚を持つ。

…と、映画について書いてみたが、別にレビューを書き続けるつもりはない。この映画を観るために、先日、ネットで映像を有料配信するサービス「ビデオ・オン・デマンド(VOD)」のひとつ『Netflix』に入会した、それについての話。

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Netflixは月額料金だけで全てのコンテンツの視聴が自由。またVODは、視聴履歴やブックマークなどを元に他のお勧めを表示するのが特徴の一つだが、このおかげで、まだ観ていなかった10年以上前の作品に触れることができたり、アイルランド製作のアニメなど全く知らない作品を見つけたりして楽しんでいる。
私は他のVOD『Amazonプライム・ビデオ』も利用しているが、それとはまた違ったラインナップが揃っているようで、それぞれ特徴があって面白い。

TVとは違った楽しみ方と感じ方

でも、その「楽しい」とは、少し違った印象を持つこともある。それは、このアニメを観たこと。

アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』

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『BNA ビー・エヌ・エー』とは、アニメ製作会社として知られるトリガーが製作したTVアニメーションで、TVでは現在放送中。
でも、Netflixではすでに12話全て公開されていて、現時点でもう最終回まで観ることができる。

おかげで、私はすでに全部観て楽しませてもらった。TV放送ではまだ完結していないので、さすがにストーリーについてなどネタバレの書き込みは控えるが。
…そう、私が思った「楽しいとは違った印象」とは、その

今書くと多くの人にとってネタバレになる

ことだ。
Netflixで最終回まで一気に見終わって、その感想を軽くTwitterにでも書こうと思ったが、そんな考えが出てきたので踏みとどまった。それはこのnoteでも同じこと。
別に、SNSでいちいちそんなこと気にせず、書くとしてもネタバレしない程度で語ればいいが、自分の中でそのような考えがよぎると気が引けるというか、書きたいテンションが下がってしまった感覚。

それはアニメの視聴だけに限らない。BNA公式サイトやアニメの情報サイトでは、TV放送に合わせて新キャラクターが紹介されるなど、情報が順次公開されている。それに、エピソードでは最終回直前で「次はどうなる?」と期待するような終わり方もあって、一気に全て観るよりも、1週間ずつ待って観た方が楽しめたかも…、などと考える。
と言っても、作品自体は大変楽しめたので不満は無いのだが。

多くのコンテンツから選ぶこと

そもそもTVなどのメディアは、見るタイミングが送信側に委ねられる。アニメなど1クール12~3話で構成された作品は、それに合わせて製作するのだから、TVで観る方が楽しめるのも当然ではあった。
結局VODの、観る権利を自分で選択できることは「観てしまうこともできる」にもなると実感した。

でも、これはVODに限らず、インターネットの情報そのものと同じことでもある。
ネットに流れる情報は1クリックや1タップで簡単に見ることができるが、人によっては見るべきではないものも多い。自分で選択できる分、自分で選別しないといけない

結局、VODの楽しみ方は、インターネットの楽しみ方と同じ。自然に流れてくるメディアとどう使い分けるか、それが今の楽しみ方になるのだなと思った次第。


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