見出し画像

#19

第一巡選択希望選手
阪神 藤浪晋太郎 投手 大阪桐蔭高校

和田豊現二軍監督が右手を突き上げ、会場が湧き、テレビ中継右下のワイプで笑みを漏らした青年の姿を忘れることは無いと思う。

初めてちゃんと見たドラフト会議だった。

「藤浪君の運というか、藤浪くんは甲子園のマウンドが似合うということです。チームは少し低迷していますけど、立て直しとかではなくて新しいチームを作っていきたいと思うので、その一員として頑張ってもらいたいと思います。」

思い返せばこの時から変革は始まっていたのかもしれない。

高卒ルーキーで2桁勝利をあげ、順調な滑り出しだった。初年度は新井良太がやたら打ってたようなそんな記憶がある。
2年目も2桁勝利、ポストシーズンでも投げた。
極めつけは3年目。ヤクルト戦で売り出し中の山田哲人をねじ伏せた姿。8回ツーアウト満塁で代打小笠原をねじ伏せた姿。現地だった。
長身 先発完投 150㌔を超えるストレート 切れ味鋭い変化球 感情を前面に出した雄叫び
斉藤和巳に植え付けられたエース像そのままだった。
甲子園が似合う その通りの姿だった。

しかし、翌年から成績を落としてしまう。
何の因果か監督はドラフト会議で放送席にいた金本知憲だった。

球速は伸びるが制球が定まらない、投球フォームに入ってからボールを落とす、正直見てられない期間だった。
この頃からだろうか、藤浪相手なら何を言ってもいいという雰囲気があった。心底不愉快だった。
本人がネット民なら何を言ってもいいのだろうか、そんなはずが無い。
ストレスで10円ハゲを作り、背中に激痛が走り眠れない、そんな日々を過ごしたとあった。
図太く見える人間は得てして繊細なのだろう。
いま、タイガースにいる大スターになりうる打者もそうなんだろう。

バラバラのフォーム、投げる度に傾げる首、定期的に出る○○フォーム!もがき苦しんでいるのは明白だった。オフの新変化球習得記事は風物詩になった。
「仙台は投げやすいので」
甲子園が似合う男は、甲子園以外で伸び伸び投げた。
コロナの感染、野球以外でも標的になるようなことが増えた。

けれど、諦めきれなかった。
藤浪晋太郎という選手は惹き付ける何かがあると思う。
2014年のオフ、マートンと藤浪のサイン入りユニフォームどっちがいいと聞かれて藤浪と即答したあのころの気持ちは消えないままだ。

2020年、中継ぎで光が見えた。山本昌様々だ。
162㌔を投げる、中継ぎでこれから生きるのかと思った。終わらない旅で出てくる姿は、球場の空気を変える武器だった。
でも彼の理想は先発完投だった。

2021年キャンプ、ワインドアップの導入。
相変わらずの試行錯誤の人。変えなくていいんじゃないかと思う。でも、結果が出なかった時期 何かを変えなければ という意識が強すぎたのかもしれない。自分の理想に辿り着くために試行錯誤する。プロとしてあるべき姿なのかもしれない。でも目先の数字を求めてしまうのはファンの性。

2022年
求めていた姿が、そこにあった。
開幕投手スタート、不安定な投球とコロナ感染で降格し、再昇格したあとまるで別人だった。
圧倒的出力とまとまった制球、殺人的なスプリット
それまでの、感情を出さずたんたんと投げ込む姿と打って変わって表情が明るくなった。
10年目にして第2章が始まったと確信した。

2022年オフ、メジャー挑戦表明。
想定外の第2章だった。

アスレチックスと契約、それなりのスプリングトレーニングから開幕ローテーション入り。
まずはいい滑り出しだった。
朝4時に起きて先発登板を見た。日曜日でありがたかった。
しかし、気がつけば、中継ぎにいた。
防御率は跳ね上がり、敗戦は積み重なり、なぜか勝頭だった。…なぜ?

6,7月とんでもないゴリラがそこに居た。
164㌔を投げ込みまくる姿に興奮すると共に、2020年に語っていた「腕が振れすぎてしまう」が過ぎってしまう。

前半戦が終わった、身体は元気か?無理しすぎていないか?怪我はしてないか?メジャーリーグは楽しいか?
まだまだ楽しませてくれ。
ワクワクさせてくれ。
夢を見させてくれ。
がんばれ。がんばれ。がんばれ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?