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非認知能力特集その2 取り組むべき課題にきちんと向き合う「誠実性」

誠実性とは何か

簡単な表現にとどめるならば「取り組むべき課題にきちんと向き合い、取り組む力」。もう少し踏み込んだ表現をするならば、「自分の衝動を社会の規範に沿って適切にコントロールし、課題指向的かつ目的指向的な行動」をとる傾向」のこと。具体的には、規律正しさや勤勉さ、慎重さ、責任感の強さ、計画性など。

高い誠実性がもたらすもの

経済に関わる事柄(収入や働き方など)、健康に関わる事柄(身体的な健康や寿命、メンタルヘルスなど)、社会的な関係性に関わる事柄(婚姻関係やパートナー、友人との関係)と関連することが過去の研究で明らかになっている。つまり、高い誠実性は、上記の要素について好ましい状況をもたらすという結果が得られている。研究は以下。
①1965年 個人の発達と適応に関する縦断研究 スウェーデン
②1970年 イギリス出生コホート研究 イギリス
③1972年 ダニーディンコホート研究 ニュージーランド
④1958年 全国子ども発達研究 イギリス
⑤1959年 パーソナリティと健康のコホート調査

子どもを対象とした介入の効果とは

成人に対する介入よりも、子ども(とくに10歳以下)への介入による数値の伸びが顕著であった。
ヘックマンらによれば、「パーソナリティの変化可能性は、幼少期の方が相対的に高い」とされている。

「社会性と情動の学習」(Social Emotional Learning =
SELの効果をまとめた結果として、獲得されるSELコンピテンスには以下の5つのものが想定された。
①自己認識
自分の感情や関心、価値観、強みなどを正確に認識し、それらに基づいた根拠ある自信を維持するもの。
②自己管理
ストレスに対処するための感情調整、自身の欲求や衝動をコントロールしたり、課題に対処するために粘り強く取り組んだり、適切に感情を表出したり、自分の目標に向けて解決のプロセスをモニタリングすることなど。
③社会意識
他者の視点に立って物事を考えたり、他者に共感できたりすることや、他者との類似点や相違点を認識し、互いを尊重すること。家族・学校・地域社会の資源を活用できることを表す。
④対人スキル
他者との協働に基づいた健全な関係性の確立と維持ひゃ、不適切な同調圧力にしっかりと抵抗することなど。
⑤責任ある意思決定
倫理的な基準や安全上の懸念、社会的な規範、他者への尊重、自分の行動がもたらしうる結果などを考慮して、自分で意思決定を行うことや、その意思決定のスキルを学習場面や実社会に応用し、学校や地域社会に貢献すること。

以下に、「社会性と情動の学習」と「放課後プログラム」についての関連記事を紹介します。このような介入が、子どもの誠実性を伸ばすといわれています。

スキルがスキルを生む

「スキルがスキルを生む」とはヘックマンの言葉です。
幼少期の非認知能力獲得が、その後に非認知能力を生み出し、雪だるま式に発達していくと指摘。非認知能力とは人間的な資本であって消えることなく蓄積されていくものであり、最初に非認知能力の高い子どもの方がより多くの学習投資を受けられ、かつ非認知能力の高い子どもの方が同じ経験からより多くを学ぶことができると考えられている。
この誠実性についていえば、幼少期に介入による伸びが得られた場合の生涯発達的な効果はより大きなものになる。

「伸ばす」と言っちゃってよいのか?問題

非認知能力という単語は、文字通り様々な特性を「能力」として捉えています。能力は高い方が良い、ということでどんどん伸ばそう!ということになっていきます。しかし、高すぎる誠実性はマイナスの効果をもたらすことも。例えば、誠実性のひとつである自身をコントロールすることに長けている場合、豊かな感情表現が抑えられてしまったり、簡単な仕事におけるパフォーマンスの低下が指摘されています。
誠実性については、能力としてとらえるより、あくまでも「特性」として関わることがよいのではないかと言われています。特性としての誠実性はそれぞれの豊かな個人差を捉えるひとつの切り口に過ぎず、それを外的な、一方的な働きかけで伸ばそうというのはその人のパーソナリティを否定することにもつながりかねないことだということについて、関係する大人は自覚的であるべきです。尊重すべき人権に充分配慮された介入を目指すことが望ましいあり方なのではないでしょうか。

今回は第2回として【取り組むべき課題にきちんと向き合う「誠実性」】についての学びをまとめてみました。

Supportiaでの学びは、こうした非認知能力に関する最新の知見をもとに、教育の責任者と環境設計責任者とが議論を重ねながら学びの環境を整えています。体験イベントも月に2回程度実施していますので、ご参加をお待ちしています。下記フォームからご参加いただくことができます。

https://docs.google.com/forms/d/1_qHGcyQbvZ0dWVjZn7xSClh9egprun34p5J8mTHOCPk/edit

また、HPもマインクラフト教室を中心にリニューアルしましたのでぜひ参考となれば幸いです。

次回もどうぞお楽しみに!