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虎の穴みたいな講座を受けた修業時代 その1

実質無料で最後まで御覧いただけます

まずは作例を御覧ください

2004年1月撮影
 並び順で時間の経過を表現した組み写真です。横書きの本をめくる感覚で左上から右下へ順番に御覧ください。

2004年1月撮影

実は、持ち時間3分で撮りました

 自分で言うのもオカシイけれど、完成度は低いです。しかし、全カットを持ち時間3分で撮ったことを思いますと、けっこう頑張っています。

 組み写真を学ぶ月に一度の講座で撮ったのですが、スパルタ式なんていう生易しい言葉では充分じゃありません。担当講師はアイドル時代の斉藤慶子さんなどの水着グラビアを撮っていた写真家で、講座の主催者もまた杉浦幸さんなどのグラビアを撮っていた写真家でした。講師と受講者との力量の差は隔絶しており、講師が模範を示して「俺の真似をしてみろ」と言ったってまず無理です。だから、いきなり受講者によるモデル撮影から丸一日がかりの講座がスタートしました。

 受講者は一人あたり3分ずつモデルを独占できます。ポーズを指示できるのも、カメラ目線を貰えるのも、わずか3分の持ち時間に限られました。ほかの受講者が撮っているとき邪魔にならないよう脇撮りすることは出来ましたが、使えるカットを脇撮りで拾うのは難しく、1カット拾えたらラッキーといった程度でした。撮影の様子は、いずれもグラビア向けの写真を撮っていた講師と主催者とが観察していました。

 そうやって撮った写真を撮影後ただちにパソコンで選び出し、組み写真をつくって講評を受けました。そこで散々にダメ出しを喰らいながら、写真を入れ替えたり、並び順を前後させたりして組み写真の完成を目指しました。

 つまり、この記事で御披露した全カットを3分で撮り、ほんの一時間程度の作業で組み写真をつくり、20分から30分くらい辛口の講師に絞りあげられながら組み直しを求められたり、夜の更けるまで検討が続きました。いろいろ辛かったけれど、いまでは良い思い出です。

流れと繋がり

 写真の並び順に意味を持たせたものが組み写真で、特に脈絡も無く写真を並べたものはコラージュです。組み写真は、写真が並ぶ順番で時間の流れを表現し、かつまた、隣り合う写真に繋がりを持たせます。

 この作例では、クールな印象だったお姉さんが、破顔一笑して戯けるまでが「流れ」であり、仏頂面で石段を上がってくる場面から、腰を下ろして上着を羽織る場面へと繋ぎ、脚を投げ出して機嫌良さげな表情を見せる場面に繋がります。

 さあ、そこから破顔一笑の場面は繋がるかというと、変化が唐突なので繋がらないと思います。場面転換を図るため、白黒の猫でワンクッション置いてから破顔一笑へ繋ぎました。そして、「終わったぜ」と印象づける大の字ポーズで締めました。

 組み写真は無言劇みたいなものだと思います。ストーリーといえるほどの流れをキャプションなしで語るのは困難ですが、語り手の主観による時間の流れを物語る掌編の一人称小説のようなナラティブであれば、組み写真でも読み手に伝えることが出来ます。

自己満足かもしれません

 まあ、しかし、組み写真でナラティブを表現したとしても、読み手が酌み取れるかどうかはわかりません。推理小説を読むのに真っ先に結末から読み始める人もいますから、組み写真だって並んだ順に見る人ばかりではありません。順番通りに見たとしても、その並び順に込められた意味を見いだせるかどうかは、読み手の感受性にかかっています。さんざん考え抜いて組みあげても、それは単なる自己満足なのかもしれません。ただ、眼力を備えた人も少なからずいますから「伝わる人にだけ伝われば良い」と思いつつ、私は写真を組んでおります。

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謝辞

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