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貴重品の全てを電車に置き忘れてから、戻ってくるまでのぐちゃぐちゃな心の声

貴重品の入ったもの。財布や鞄。大切にしていたはずのそのものを無くしてしまったことがある方も多いのではないでしょうか。僕にもこの前起きてしまいました。幸い手元には戻ってきたのですが、もう二度と同じ思いはしたくないですね。今日は、その時の心の動きを書いてみます。

その日は雨が降っていた

結構強めの雨で、傘を差しているとしっかりと音が鳴るくらい。たまたま出社勤務の日で、リュックを背負い、ビジネスバッグを手に持って出勤していた。1日の仕事を終え、その夕食は軽めに丸亀製麺。帰宅しようとしたその時、事件は起きた。

電車は雨もあり、通勤ラッシュで乗車率は100%を超えていただろう。少し押されるように電車に乗り込んだ。あまりに混んでいるから、携帯を見るわけにはいかない。傘も、バッグもあるし。

しばらくの間電車に揺られたが、快速停車駅につき、どっと人が降りる。ようやく気が抜け、スマホを見ようと鞄を網棚に置いた。そして最寄駅に着き、改札を出た。ただ、明日も乗るからSuicaに現金をチャージしようと券売機に足を運んだ。そして、気づいた。鞄がない。

身体に警報が鳴った

何かが身体を突き抜け、皮膚が敏感になる。心臓の鼓動が速くなっているのを感じる。血圧が上がっている。明らかに頭に血が昇っている。呼吸が浅い。そして、耳には、電車が次の駅へと向かっている音が聞こえる。あぁ、まずい。

努めて落ち着くように意識をしながら、急いで駅員さんに話しかけ、鞄を置き忘れたことを伝える。多分、快速からの乗り換え時。車両は前から3番目くらい。茶色の革製の鞄。貴重品が入っている。

駅員さんが、僕が焦っていることを受け取ってくれているのがわかる。あぁ、この人は大事なものを忘れたんだなとそう目が言っている。そうなんだよ、忘れちゃったの。

車両を特定し、忘れ物がないか車掌さんに伝えてもらい、終点の駅でもみてくれるようだ。そこまでやってくれるんだ。動いてくれることに感謝。遺失物の連絡先の紙をもらい、やりとりは終了した。家に帰る。

何もかもが入っていた

雨はまだ大降りだ。傘に衝撃を感じる。落ち着きたいからノイズキャンセリングを全開にして、意識を内側に寄せる。

財布には、現金の他に、社員証、銀行のカード、マイナンバー、保険証、免許証が入っていた。貴重品と呼べるもの、全てだ。何から始めたらいいのだろう、何をすべきなんだろう。ああ、どうしよう。思考がぐるぐると回りながら、ただただ落ち着きたいがために家に向かう。

家について、荷物を置く。当然落ち着かない。PCに向かって、一旦、JRの遺失物届けの登録だけする。深く息を吐く。もちろん呼吸は浅いまま。それでも、深呼吸しないと浅いままだ。

こういう時の思考は信頼できない。何かをしないといけないが、その何かを考える頭が、多分、今は働いていないはずだ。僕は、そう考え、こういう時に話を聞いてくれそうな人に片っ端から連絡をした。アドバイスの前に、まず、自分が落ち着くために耳を傾けてくれる人、そういう人に。

ひとり、ふたりと連絡するが、繋がらない。それもそうだ。時間は晩御飯の時間。状況が良くない。三人、四人と連絡したが、やっぱりだめ。少し後なら、と返してくれる友人もいたけれど、必要なのは今ここ。ああ、どうしよう。

もう一度深く息を吐く。ふぅ。雨はまだ降っている。そうだ、思い当たる人が見つかる。連絡をかけると、繋がる。ようやく言葉を紡ぐことができた。「落ち着くために、話を聞いてほしい。」自分の痛みが受け取られていく。そうだ、とても傷ついているのだ。そうして、ようやく自分の気持ちが落ち着いてきた。

できることをひとつずつ

何が入っていたのか、何をした方がいいのか。友人は相談に乗ってくれただけでなく、参考になりそうなサイトも探してくれた。一番参考になったのは、ここだ。

こんなにまとまっているものがあるなんて。当てはまるものを探し出し一つ一つ対応して行った。社員証は上司に連絡。銀行のカードは、アプリで機能を停止。マイナンバーもオンラインで機能を停止。

ここまでくると、何をすればいいのかという具体的な事柄や、影響の度合いが見えてくる。そうか、このくらい影響があるんだな。リカバリーにどれくらいの時間がかかるかな、と。

ここにきてようやく、情報以外の物に意識が向き出す。替えのメガネ、腕時計、お気に入りのボールペン、シルバーのアクセサリ。あぁ、情報はリカバリーできたとしても、物は戻ってこないな。そういうタイミングだったんだろうか。

一度JRさんから連絡が来て、終点の駅では無いことが伝えられた。がっくり。続く通話の中で、乗ったであろう電車が折り返してくるから、中を探されますか?との提案が。そんなこともできるんだ。

とはいえ、一方では、こうして電車を調べさせた方が後々クレームが来ないという経験則から言っているだけなんじゃ、という邪な声も頭では聞こえる。今日やれるのはここまでだなと思い、電車を待って調べた。無かった。

忘れ物はするものだ

結局見つかったのは、その次の次の日。JRさんでは連絡がなく相互乗り入れしている別の路線の遺失物案内に連絡をしたところ、そこで見つかった。急いで遺失物センターに取りに行き、手元に戻ってきた。

持ち歩くことのリスクがいかに高いのか、身に染みた。少し前にも、同じように財布を忘れたと思った時があった。その時は別のバッグに入っていただけだったのだけれど、大事なものを一つにまとめておくと、その1つを失った時に何もできなくなる。

忘れるはずがない、なんて思っていると今回のような痛い目を見る。忘れるかもしれない、という可能性をどこかに入れながら、過ごすためにこの後AirTagを買って帰った。




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