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脱水とパフォーマンス発揮

はじめに

前回までは、脱水の評価方法について話を進めてきました。脱水の評価がなぜ必要かというと、脱水が暑熱環境下でのパフォーマンス発揮や運動時の体温調節に影響を与えるからです。

脱水とは発汗などで体水分量が減少することを言いますが、一般に脱水量が2%を超えると運動パフォーマンス、特に持久的なパフォーマンス発揮が低下すると考えられています。子どもを対象とした比較的長い時間の高強度自転車ペダリング実験においても、大人と同様に、脱水によってパフォーマンスの発揮が低下することが指摘されています。

持久力のみならず、他の体力要素(筋力、瞬発力など)も脱水による影響を受ける可能性が指摘されていますが、持久力以外の体力要素(筋力発揮、ジャンプ力、認知機能等)に関しては、持久力のように明確な線引きができるほど、一致した見解が得られていないのが現状のようです。

脱水による循環系への影響

暑熱環境下での運動時には特に、発汗による体水分量の損失が顕著になります。このことによって血液量が減少し、その結果、運動時に必要な血液を心臓から活動筋へ効率よく送ることができなくなります。具体的には、1回の拍動で心臓から送り出される血液量が低下したり、それを補うために心拍数が増加したりして、血液循環に負担が掛かるようになります。このことが、特に持久的なパフォーマンス発揮に影響与える要因の1つとして考えられています。

脱水によるパフォーマンス発揮を考える際には、脱水していない正常体水分量状態でのパフォーマンス発揮と脱水時のパフォーマンス発揮を比較することが当然のことながら必要です。
正常な体水分量状態でのパフォーマンス発揮の値が正確でなければ、パフォーマンスの変化が脱水による影響かその他の要因からくるものなのか区別することができないからです。

正常体水分量状態での体重測定法や脱水の評価は、前回までのコラムを参考にしていただき、次回から、成人を対象とした研究成果から、脱水が各種運動能力へ与える影響について紹介していきます。

【参考文献】
- American College of Sports. American College of Sports Medicine position stand. Exercise and fluid replacement. Med Sci Sports Exerc 39, 377-390, 2007.
- Cheuvront, SN., et al. Dehydration: physiology, assessment, and performance effects. Compr Physiol 4, 257-285, 2014.
- Gonzalez-Alonso, J., et al. Muscle blood flow is reduced with dehydration during prolonged exercise in humans. J Physiol 513 ( Pt 3), 895-905, 1998.
- Wilk, B., et al. Mild to moderate hypohydration reduces boys’ high-intensity cycling performance in the heat. Eur J Appl Physiol 114, 707-713, 2014.

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