今、ワクチン接種より大切なこと。

予想通りというか、残念なことにというか、ここ1週間以上、コロナの陽性者数が、前週の数値を上回り出しています。

メディアもリバウンドの懸念を表明し、行政関係者からは、感染抑制のための努力要請や、緊急事態宣言の再発令を示唆するような発言が、今さらのように飛び交っている。

「どうやって、新規陽性者の発生を抑えるか」

ここが、今やニッポンの最大の争点。

でもこれ、私たち国民の健康のため、というよりも、オリンピックをやるのかやらないのか、観客を入れるのか入れないのか、あたりに争点が終始しているのが情けない。

は、さておき、そのための最後の砦が、早期のワクチン接種ということで、日々、それがらみのニュースが、テレビを賑わせています。

でもこれ、直面する危機には、多分役に立ちません。そもそも、直面する危機を、取り違えています。

なんで、それを指摘しないのか。
というか、それに気づかないのか。

このままだと、ニッポン、というか首都圏は、オリンピック期間中に、相当厳しい事態に直面するのではないかと、わたしは思うのです。

なぜか。

なぜなら、コロナの課題は、陽性者数を抑制することではなく、死亡者を増やさないことだから。

どんなに沢山の人が感染しても、死ぬ人が少なければ問題はない。インフルエンザと一緒。だからなによりも大事なのは、死亡者を減らすこと。

え、そんなの当たり前?

そもそもワクチンで陽性者が減れば、死亡者も減るじゃないかって?

一見するとそうなんですが、もはや事態は違う方向へ進み出しつつあるようです。どうやら、ちょっとだけ手遅れ

なぜかというと、すでに陽性者が増え出してしまっているから。理由はおそらく少しだけ早い段階の、緊急事態宣言の解除です。
そしてこの増加傾向は、多分、しばらくは止まりません。たぶん。

もちろんこれまでだって、陽性者数が前週を上回ることはありました。だからといって、ずっと増加するとは限らない、と言いたいところなのですが、今回は少し違います。

なぜなのか。

なぜならすでに、陽性者の7日間移動平均が、数日にわたって、前週を上回ってしまったから。
そしてこれまでの傾向では、ひとたびこうなると、陽性者数の増加は止まりません。

この動きは、最終的に、新たな行動制限が効果を発揮するまで続きます。

実は、このサイクルは、昨年始めのコロナ流行から、少しずつ規模を大きくしながら、4回にわたって繰り返されています。

直近のサイクルでは、3月の初旬から陽性者の拡大が始まり、5月の中旬にピークを迎え、その後の行動制限の効果で、6月の中旬に向けてようやく数を下げていきました。

図1

このままもう少しがんばれよかったのですが、拙速な行動制限解除によって、6月の下旬に差し掛かったまさにこのタイミングで、新たに5度目のサイクル(陽性者の増加)が始まってしまったのです。

しかも、少しだけ、前回よりも陽性者が多いレベルでのスタートで。

問題は、陽性者の増加に遅れて2〜3週間程度で、死亡者の拡大が始まること。当然、先行する陽性者数が大きいほど、死亡者数も大きくなります。

今回、5度目のサイクルが、前回同様のパターンになると仮定すると、半月程度で死亡者が増え出し、その後1ヶ月程度の間(8月中旬くらいまで)に、死亡者数が急速に増加することが予測されます。
その後、新たな行動制限が効いてきて(行動制限が行われたとして)、9月中旬ごろに死亡者数のピークを迎え、その後収束に向かう・・・はず。

でもって。

この予測、ディテールの正確さは実は問題ではありません。当然、ワクチンの接種が進むことにより、先行する陽性者数の状況も変わってくるでしょう。

けれども今注目しなくてはならないのは、

「すでに新しいサイクルに入ってしまったのであれば、この後1〜2ヶ月は、死亡者数が(場合によって急速に)拡大する可能性がある

という視点です。

私たちは、まさに今、そのための準備をしなくてはならないのです。それこそが、リスク管理。

わかりやすく言えば、死亡につながる重症者救命体制の強化です。例えば、病院の受け皿の拡充や、できる限りの治療法・治療薬の準備。
残念ながら、今この時点で、こうした話はほとんど顕在化せず、どこを向いてもワクチン接種とオリンピックの話ばかり。

でも、ワクチン接種体制の強化は、重症者対策には全く機能しません

そして言うまでもなく、この後の1〜2ヶ月と言えば、オリンピック、パラリンピックの、真っ只中。首都圏は、その対応で大わらわをしています。
さらにその少し前には、都議会議員選があり、行政の空白期間も発生するでしょう。

そんな中で、重症者数が急速に増え、緊急的な対策を求められることになったら、一体どうなるのか。

考えるだけで恐ろしい。

ワクチン接種はもちろん大切かもしれません。(わたしは、そこにも大いなる懸念があるのですが、すでにそれは以前に書いた通り)
でもワクチンでは、「当面の」陽性者数削減効果は期待できそうにありません。
なんといっても、すでに5度目のサイクルが、回り出してしまったのですから。

オリンピック対策も大切。ワクチン対策も大切。
でも、いま一番大切なのは、「死亡者抑制のための、重症者対策準備」に他なりません。

そこのところ、実際はどうなのでしょうか。

安全安心なオリンピックにばかり目を奪われているうちに、「バブル型管理」の外では、重症者対応で大わらわになっている・・・。

今のままでは、そんな笑えない事態が起きないとも限りません。

陽性者数に一喜一憂する前に、このパターンをしっかり理解し、準備することこそが、今一番大切なことだと、わたしは思うのです。

もちろん、この予測が外れれば、それに越したことはありませんが。


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