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今週のリフレクション【自分の頭で考える読書(荒木博行氏)】

今週は、荒木博行さん著「自分の頭で考える読書」を振り返ります。ザックリ3点で要約すると・・

1.グローバル×自由につながった予測不可能な世界では、抽象化する思考の力が必要。本には他者の知見が詰まっており、抽象化に必要な経験の糧となる。本は情報量の少なく、五感的にも時間的にも思考できる余白があり、自分の経験や思考をフル動員して解釈せざるを得ない。過去を忘れて没入から入り、自分の経験で解釈していくことで本はオリジナルになる。熱狂7割・懐疑3割のバランスを大切に、問いの方向性を自分に向け、モヤモヤした問いを抱えて育てる。べき論(他者評価)から離れ、本を自由に味わおう。

2.本は、①問いの発見、②答えの発見、③既知のリマインドのポートフォリオが大切。自分を進化させるには、問いの発見カテゴリーが必要。読んだ冊数ではなく、本当に自分にとって大切な問いや答えに向き合うことが大切。アウトプットから始めて逃げ場のないかたちに仕立て、抽象化した自分の大切な問いと本質的な共通点に気付き、ラストワンマイルは自分で具体化する(具体と抽象の三角飛び)。読むコンテクスト(文脈)によってコンテンツの味わいは全く変わるので、場所とタイミングを本の内容と符合させることがポイント(コンテクストリーディング)。

3.読書には5つの病がある。①完読の病=本には相性やタイミングがある。概要だけ把握してやめていい。②コミットメントの病=自分のコンディションに合った本を並行読書する。③積読の病=積読はビオトープ(小さな生態系)。知的好奇心が湧き上がる知的空間となる。④実践の病=スノードーム理論。刻み込む・冷凍保存する・つなげるで沈殿物を増やす。⑤読書時間不足の病=自分にとって大切な時間は何か。読書において、役に立つか?は本質を見失って役に立たなくなる。一方、役に立てようと思わないと結果的に役に立つ発見が見出せる(読書のパラドクス)。

最短距離でインプット(学習)を行って最短距離でアウトプット(実践)する。これが成果につながる生産性の高い行動である、という考え方があります。私は賛成が半分/反対が半分です。賛成の部分としては、社会人になって間もない頃や、転職してすぐのスタートダッシュとしては、正しい文脈だと思っています。反対の部分としては、ある程度の経験値が溜まってくると、書籍に書かれたパラドクス「役に立つか?は本質を見失って役に立たなくなる。一方、役に立てようと思わないと結果的に役に立つ発見が見出せる」という側面が強くなるように思っています。

私は企業で人材育成の仕事をしています。企業の人材育成は経営に資すること=企業価値を増加させることが目的になります。企業のスタンスにもよりますが、多くの場合は単年の売上/利益を増加させることが企業価値を増加させるための取り組みになると思います。そして、売上/利益増加のために戦略があり、それを実行する能力を持った人材を育てるのが人材育成です。このロジックは、資本主義経済において当然の流れだと思います。

そして、時間は非常に大切な経営資源ですから、従業員の労働時間を投入するのであれば、できるだけスピーディーに成果(年間の売上/利益の増加)を目指すことも当然と言えます。経営トップが覚悟を決めれば時間をかけての人材育成も可能ですが、少なくとも株主に対する「人材に投資するから、一時的にコストが増加するよ」という説明責任が発生します。つまり、構造的に数年後に成果の出るような人材育成には投資がしにくいということが言えます。

しかし、一方で人が単年で成長するのには限界があります。最初に書いた通り、新卒や転職したてであれば単年での成長は可能だと思います。しかし、経験を積むほど、成長カーブの角度はゆるやかになっていきます。そういった状態では、スピーディーに成果の求められる企業の人材育成はマッチしにくくなってしまいます。

では、どうしたらいいのでしょう?そこで必要なのが時間を将来の自分に投資する「自己啓発」で、特に威力を発揮するのが本だと思っています。

経験を積んでくれば、自分の業務に対して自分なりの問いを持っていると思います(そうありたい)。そんな時に、その問いに新しい視点を与え、新たな問いに進化させてくれる本に出会えれば、書籍にある「具体と抽象の三角飛び」によって自分の成長を後押ししてくれるように思います。もしくは、すぐにはピンとこなくても、自分の中に静かに沈殿して、新たな刺激との新結合を待つ準備に入る知識もあるかもしれません。このような沈殿物は、企業の人材育成ではなかなか提供することが叶いません。

「数年後に実を結ぶ新たな問い」「いつ必要かはわからないけどきっと大切な知識」これらは、未来の自分のために時間が投資できる自己啓発でしか身につけることが難しいと思います。いつかは企業でも提供できるようになるかもしれませんが、それまでは積極的に自分で学んでいきたいと感じました。

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