今週のリフレクション【新規事業の実践論(麻生要一氏)】
今週は、麻生要一さん著「新規事業の実践論」を振り返ります。要点をザックリ要約すると・・
1.日本の労働者は手厚く守られているから、優秀なサラリーマンは起業しない。超先進領域は起業家が向いているが、社会課題の解決は企業内新規事業が向いている。大企業がすべきは(外でなく)社員・社内事業に投資すること。取り組む領域(誰のどんな課題を)× 圧倒的当事者意識(なぜ自分が)=原体験化。ゲンバ=課題の震源地で対話し、ホンバ=新規事業開発の最前線で刺激を受ける。
2.創業メンバーは、WILLが同じで役割の異なる少人数(3人以下)を選ぶ。コミュニケーションスピード・レジリエンス・マンパワーを検討。絶対外部に委託できない役割が競争優位性の源。創業メンバーに必要な力は、①Network=異分野をつなぎネットワークする力。垣根が融解する部分がビジネスチャンス。②Execution=あらゆる業務を圧倒的に実行しやりきる力。局地戦での勝利の積み上げ。③Knowledge=深く広い教養と知識。無知の知。
3.①ENTRY期→魅力的で検証可能な事業仮説の提示を目指す。妄想でいいので、検証できるプランを示す。②MVP期→事業性を伴った魅力的な事業計画の提示を目指す。売り方/コスト構造/儲かる計算を証明。③SEED期→商用レベルでの事業の成立とグロースドライバーな発見を目指す。営業・マーケティング手法の発明。④ALPHA期→実際にビジネスが最初のグロースを実現することを目指す。CAC悪化/組織の疲弊/競合。⑤BETA期→経営会議で議論できる最小限の規模に達し、成長状態を目指す。既存事業と比較できる最小規模/ガバナンス。⑥EXIT期→新規事業の枠組みを卒業し、成長投資を獲得し、企業戦略の一部に組み込まれることを目指す。投資戦略/社内での位置付け/IR方針。
4.ENTRY〜MVP期は、仮説を顧客に持っていき修正するサイクルをひたすら回す(300回)。リリース直後はマーケティングをせず、LTVを高める。Primary Customer発見のため、Channel(あらゆる手法)/Communication(トークスクリプト)/Customer Success(サポート)を試行。社内会議を通すため、①数値ロジック、②顧客の生の声、③リスクシナリオと撤退ライン、④関連諸法規の提示、⑤社内キーマンのコメント、⑥空気を読んだ戦略図、を準備する。経営陣は、アイデアではなく人と領域を評価し、個人決済権限をできる限り降ろし、規模は問わずに外部への投資戦略と接続を検討する。
社内で新規事業を立ち上げる際に「儲かるのか?」を聞いてはいけない、というところに深く共感します。まだアイデアが形になっておらず、MVPを回している段階ではうまく説明ができなないからです。しかし、一方で企業としてはアカウンタビリティを果たすため、一定の明快な判断軸が必要です。ここをどう折り合うか?です。
この手の話になると「うちの経営陣は考え方が古い」といった経営者批判になりがちですが、実行者の準備な足りないことが原因だと書籍には書かれています。そうは言っても検証をどう進めるかの具体的な数値ロジックは持ち、数字が弱ければ顧客の声で補足し、リスクを先回りして可視化し、社内キーマンを味方につけ、全社戦略と紐付けて提案しろ、ということですね。
大企業で新規事業を企画する時、どうやって届けるか?が手薄になることが多いように思います。すごく良いサービスだけど、具体的にどうやって進めるの?という状況です。この時に、1歩目が踏み出せる段取りが(小さくてもいいので)できているかどうかが、検証できるプランになるかどうかの分かれ道のように思います。
書籍にある通り、経営企画室や新規事業準備室のような部署が会議室で作るプランではなく、ゲンバを巻き込まない限り、検証の1歩目は踏み出せないと感じました。いかにゲンバを巻き込むか、ゲンバの協力を無駄にしないよう、いかにホンバの知見を自社に合わせた形で持ち込むか。そんなことを考えさせられた、非常に具体的な示唆に富む書籍でした。
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