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【Doctor Tのスポーツ医学】運動中に苦しくなる原因の1つ「喉が詰まる」-医療者向け-

こんにちは、久しぶりの投稿になります。

今回は運動中に息が苦しくなる原因の続編です。以前、運動によって喘息のような症状が引き起こされることを紹介しました(記事はこちら)。今回は他の呼吸器の原因について書きます。こちらをまとめた内容です↓

内容がやや専門的なことと、実際の日本の医療ではその診断や治療にたどり着けない可能性があるので、医療者向けとしました。また、医療者でない方はこれを読んで自分で勝手に判断せず、主治医に相談してください。

運動中の息苦しさの病的原因は多岐にわたる

運動中の息苦しさの原因は呼吸器に限りません。原因部位は心機能、貧血や筋肉のミトコンドリアにまで多岐にわたります。重症度に関しても、生理的症状である運動不足から、致死的な心筋梗塞まで幅が広く、診断には気を使います。

運動で誘発される呼吸器障害も「喘息」だけではない

今回は呼吸器に焦点を当てて、運動誘発性「喉頭障害」という運動誘発性喘息(気管支狭窄)とは別の病態を紹介します。ただ、両者を合併しているケースも有るようです。

運動誘発性喉頭障害とは

英語ではExercise Induced Laryngeal Obstruction (EILO)と言います。注釈:Obstructionは閉塞という意味もありますが喉頭が閉塞したら窒息するので、ここでは喉頭「障害」と訳しました。

構造は正常+安静時の機能も正常

EILOは喉頭の構造も安静時の機能も正常であり、運動した時にのみうまく機能しないようです。病態はまだ明らかになっていません。

喘息と同じくらいの有病率とも

EILOは問診や身体所見から診断するのは非常に難しく、実際より低く有病率が出ている可能性があります。思春期から成人の5-10%くらいにEILOがあり、運動中に呼吸器症状があるアスリートの場合の有病率はこれ以上になると考えられています。

診断は難しい

より正確な診断のためにはCardiopulmonary Exercise Test (CPET)で呼吸-循環-血液-筋肉のどこに問題があるのかを絞り、高強度の運動中の喉頭ファイバー Continuous Laryngoscopy during Exercise (CLE)での喉頭の観察を要するため、日本の現状ではほぼ不可能でしょう。

非薬物治療のほうが効果はあるかもしれない

薬物治療で逆流性食道炎や喘息、神経学的なものが挙げられていますが、どれもまだ結論が出ていません。一方で呼吸指導は、吸気の勢いをコントロールすることで空気抵抗を減らす効果が期待されています。こちらもまだ確立された方法はありません。

EILOを知っておくことには意味がある

EILOを知っていることには意味があります。喘息に一致しない症状の場合、アスリートにEILOの可能性を説明し不安を軽減させられるかもしれないからです。呼吸器症状は不安とリンクするので大切なポイントだと思います。また、治療方法も経済的・身体的に負担のない、呼吸の見直しで良くなる可能性があるので試す価値はあると思います。

まとめ

  • 病的な原因は呼吸、循環、血液、筋肉と多岐にわたる

  • 呼吸器の問題でEILOが、EIAとは区別された病態として認識されている

  • EIAとEILOに症状の違いがあるものの臨床的に診断するのは難

  • 高度な診断的生理機能検査にたどり着けなくてもこの知識は意味があるだろう

今回は専門的な内容になりましたが、医療者が知っていると良いと思いテーマに選びました。

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