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【Doctor Tのスポーツ医学】イギリスで学んできたスポーツ医学とそれを日本で広げたい理由①

 こんにちは、Doctor Tドクター ティーです。これまではスポーツ医学の具体的な話をしててきました。個々の話から少しズームアウトして、スポーツ医学そのものについてお話したいと思います。

 私が学んできたスポーツ医学がどんなものかを知ってもらう前に、自己紹介をしたいと思います。プロフィールにも書きましたが、医師12年目で、スポーツ医学を勉強するためイギリスUniversity College London (UCL)に留学しました。

整形外科医ではないスポーツドクター
 私は整形外科医ではないスポーツドクターです。そういった医師は日本ではまだ数が少なくその役割に名前もありません。「スポーツ総合医」というとわかりやすいでしょうか。ケガの手術をするのではなく、手術をしなくてもいいケガの診療(実はスポーツがらみのケガは手術が必要でないことが多い)や喘息などの内科の問題のメンテナンス、風邪や腹痛などの体調不良の対応、さらには予防接種の提案などもします。

スポーツ選手も「ひとりの人」である
 スポーツ選手もアスリートである前に一人の人間であることを忘れてはいけません。風邪も引きますし、元々喘息などの持病があることもあります。一般の人と同じようにプライベートのことで悩んだりストレスを感じて精神的にまいってしまうこともあります。これらに加えて、アスリート特有の健康問題を抱えるわけです。

米英のスポーツドクター
 ケガ以外にも健康問題があるのでそれに対応できる医師が必要です。しかし、日本ではそのような医師は数少なく、医師の専門資格としては確立していません。アメリカでは、整形外科医とは別にfamily medicine(家庭医)や小児科、救急科の専門医が受けるsports medicine(スポーツ医学)という領域のフェローシップ*があります。イギリスにもSEM (Sports and Exercise Medicine)  consultantという、スポーツや運動に関する医療を専門とする医師がいます。カナダ、オーストラリアなどにも同様のシステムがあります。もちろん、そう言った国ににもスポーツ整形外科もいます。彼らの仕事はケガの手術中心なのです。
*日本でいう初期研修→後期研修で専門医を取得した後にさらに得意分野の研修としてフェローシップがあります。

日本には資格やプログラムがなかった
 私がなぜスポーツ医学を勉強するために海外留学を選んだかというと、日本にはそのような教育プログラムがなかったからです。私は医学生や後期研修医時代、数回イギリスやアメリカで医学研修を受ける機会に恵まれました。その一つのミシガン大学で、家庭医がスポーツドクターとして活躍するのを実際に見て、そのフェローに1ヶ月間ついて回りました。日本のスポーツの現場にも必要な役割の医師だと確信しました。しかし、日本に同様の仕事をしている医師はいたかもしれませんが、米国のスポーツドクターのような明確な立場は認識されていなかったと思います。少なくともそのようなスキルを習得する研修プログラムは存在しませんでした。

 米国、英国の恵まれた環境に憧れるだけでなく、日本でもケガ以外を診ることのできるスポーツドクターが必要だと思った経緯があります。

整形外科以外のことは誰がカバーするのか疑問に思った経験
 医学部の臨床実習で、とあるスポーツ選手が「腹痛」を理由に受診しました。そのチームは整形外科の医師と契約を結んでいたので診察には整形外科医が当たりました。そもそも整形外科医というのはケガの手術をするのが役割です。この場合、腹痛の原因が、感染性腸炎(胃腸風邪)や急性虫垂炎(盲腸)だと、得意領域から外れてしまうのです。その光景を見て、「体調不良など、スポーツ選手のケガ以外の健康問題は誰が診ているのだろう」と疑問に思い始めたのです。

 こういった経験を経て、医師になってからも長年に渡り疑問を抱き続けていました。なんとなく誤魔化すこともできたかもしれませんが、自分の性分を考えても、しっかり勉強した方が納得できると思い、一般的には遅めですが医師12年目に留学を決意したのです。

 実際に学んできたことは、やはり日本ではまだ知られていないことが多く、それを多くの人に知ってもらおうと思い、noteにも書いています。

スポーツ医学の対象はアスリートだけではない
 「スポーツ医学」という言葉が定着していますが、イギリスではアスリートの健康管理だけでなく「一般の人の健康のために運動をする」という考えも含めてSports and Exercise Medicineと呼びます。日本語だと「スポーツ運動医学」です。

Exercise is Medicine!
 この考え方はとても大切で「Exercise is Medicine (運動は薬みたいなものだ)」というフレーズも世界で共通の概念になってきています。日本のスポーツ庁もこの考え方をホームページに載せています。

 健康のことは医者だけが知っていればいいわけではなく、一般の皆さんが知っていた方がいいこともたくさんあります。そういうことをここで発信していきたいと思います。

 今後、実際に、留学した大学院のプログラムがどんなコース内容だったかをご紹介します。コースの概要を知ることで、スポーツ医学が何たるかが伝わるのではないかと思うからです!

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