選手のブランド化
選手のブランド化とブランディング
有力なスポーツ選手はその多くが名声を得ている。
例えば、ロサンゼルス・ドジャースに所属している大谷翔平は同一シーズン50本塁打50盗塁という前人未到の記録を打ち立て、まさに空前のスポーツ選手である。
開幕戦では視聴率25%という、テレビ離れが叫ばれる近年ではまれにみる高視聴率をたたき出し、スポーツや野球というジャンルではなく、大谷翔平という一つのコンテンツや文化にすらなっている印象もある。
国外に目を向けても、世界的に人気のある競技の選手であるクリスティアーノ・ロナウドやレブロン・ジェームズといった選手はさらなる名声を得ている。
そのような選手は近年自身をブランディングしていることが多い。
そもそもブランドとは、こう定義されている。
この定義を解釈すると、ある選手が人に識別されているとそれは自ずとブランドであると言えよう。
例えば、有名なサッカー選手の三浦知良の場合、「サッカー選手」や「ヴェルディ川崎所属の選手」では識別されてない。だが、「ヴェルディ川崎所属の三浦知良」とすれば個人が識別されており、どのような選手か分かる。つまりこの場合だと自分の名前がブランドとなっている。
後に詳細は記すが、その自身の名前を売りにして様々な商品展開を行う選手も存在し、自身の名を冠したスポーツ用品をはじめ、アパレルや化粧品などを。
三浦知良といえば1993年のJリーグアウォーズなどで見せた派手な服装を思い出す人も多いだろう。
これは見方によってはブランディングの一つである。
ブランディングは企業などの場合、以下のように定義されている。
ブランディングには様々なやり方があるが、基本的には抜群の成績を残さなければならない。
例えば、個人タイトルを複数年に渡って多く獲得した選手や新記録を達成するといった選手はその選手自体がブランドとなる。
野球で言えば、三冠王や完全試合を達成した選手、ベストナインやゴールデングラブ賞を複数年に渡って受賞した選手はそれにあたる。
そうして有名になった選手が、自らの競技場外の行動(メディアに出演したり、自らが得た富を寄付したりするなど)でさらに知名度やブランド力を高める努力をする。ド派手な登場や行動もそれにあたる。
これを良い塩梅で繰り返すと押しも押されぬスター選手が生まれていく。もちろん、練習しなさすぎも競技場外での行動を起こさなすぎも選手のブランド化には繋がらない。
もちろん、レギュラーを掴めなかった選手が人となりで人気となり、誰もが知るスター選手になることもあり得る。誰とは言わないが、野球ファンならある顔が思い浮かぶだろう。
では、スポーツ選手がブランド化することでどのような効果があるのだろうか?
基本的にはこの3つだろう。
自身がプロデュースした商品の展開
他業種への参入障壁の軽減化
発言力の向上
まず、商品展開についてだ。
スポーツ選手は名前が売れている。そんな中で、「プロスポーツ選手の〇〇が手掛けたスポーツグッズ・サプリメント」なんて聞いたらファンならずとも効果覿面ではと思い買ってしまうだろう。たとえそれが一般的な商品と効果が一緒だとしても比較にすらならないだろう。
また、カリスマ性やルックスでも売っている選手は美容グッズなどのスポーツ以外の商品も多い。例えば、クリスティアーノ・ロナウドはCR7ブランドを立ち上げて、香水や下着、靴などを手掛けている。勿論人気だ。
これは他業種への参入障壁の軽減化にもつながる。本来、ブランドは長い時間をかけて消費者や小売業者などと信頼関係を築き上げ、自身の名前を売るというフェーズが必要だが、すでに名前が売れている点、そのフェーズは限りなく圧縮できる。海外では企業の株主に名を連ねる選手も多く、それ以外にもアパレルや時計、食品などでコラボレーションを行い、ブランド力を互いに高めるケースもある。変わり種では銀幕に参入し、映画の主演を務めたりやプロデューサーになることもある。
もちろん、これは失敗することもあるが、大抵の場合は自身のブランド力をさらに高めている。
そして、発言力もブランド力と共に備わっていく。
トップクラスのスポーツ選手は万人に注目されている。そういった際の発言というものは非常に影響力を持つ。TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」にスポーツ選手が選ばれることも少なくない。
2020年のある調査によると、スポーツ選手の社会課題に対する発言の価値は約460億円相当にあたると言われている。
発言力が上がることで社会問題に対抗する旗印となることもある。その一方で重圧や責任も伴うこともある。
不用意な行動や言動によって批判の格好の的になることだってあるし、発言したことにより、反対意見を持つ人々にバッシングを受ける可能性もある。
仕方ないと言えば仕方がないことかもしれないが、時々度が過ぎることもある。我々も注意したい。
選手は商品である。そしてその価値はプレーだけに表れない。選手のブランド化はその選手の価値尺度と言える。
ただ、ブランド化によって選手の過大評価や過小評価されることがある。スポーツ選手の本質はスポーツそのものである。そこを疎かにする者に成功はない。トップランカーは常にスポーツが第一だ。その上で自身をブランド化させ、唯一無二の存在になっていく。その流れが最重要であり、不可逆的である。
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