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CINK COACH PRO②-日本人が欧州のプロクラブで指導者として働くために必要なことは- を受講して考えたこと✍️

2021.09.03 FRY
 スペイン、イタリア、メキシコ、オランダと世界を渡り歩き、本田圭佑選手の個人分析官や、欧州1部のサッカーリーグクラブのコーチングスタッフなど世界で活躍する白石尚久さんをお招きしてのセッションを受講しました。指導者として、サッカー界の最前線でコーチングを行う上でどんなことを意識するのかや、指導者として、どんな存在にならなければならないのか、目から鱗の1時間でした。その講義の内容について、まとめていきます!

1.メンタルタフネス

海外に飛び込んで、異国の地で指導者としてやっていく時、「あなたは何者?どんなひと?」というところから始まります。海外で指導者をやるとなると、もちろん自分自身は外国人なので周りに味方が1人もいない中でやっていかなければなりません。そのような環境の中で、指導経験のない女子選手の監督を任された白石さんが、指導の中で学んだことを次のように教えてくださいました。

女子選手を指導する時に、大切になってくるのは
チームマネジメントと、メンタルを科学すること。

①チームマネジメントについて
 広告代理店で働かれた経験がある白石さんは、チームマネジメントを、マーケティングの市場調査に例えた視点から行ったと仰っていました。

チームは、
イノベーター(監督がこれをやれと言ったら、このひと  についていけば、何でもできるぞという人々。)チームに何人かいる
アーリーアダプタ(監督が指導していると、この人いいじゃんとついてくる人たち) どこのクラブにもいる
アーリーマジョリティー(様子見ながら)
残りは(結果を見て、みんながこっちいくなら私たちもそっちに行ったほうがいいんじゃない?)という人たちと、どうしてもついてこない少数の人たち。
これらの人々に分類される。

そして、スペインのサッカーの女子選手の場合、
監督は常に選手に寄り添うような存在であることが重要である。

選手たちをこのようにカテゴライズしてみたことがなかったので、面白いなと思ったし、いつか自分もコーチングすることがあったらこのようにチームを見て、監督が最初のイノベーターとして機能していく必要があるのだと勉強になりました!

②メンタルを科学すること
  指導する上でもう一つ大切なことは、メンタルを科学することだと白石さんは仰っていました。では、具体的にメンタルを科学するとはどういうことなのでしょうか?

 メンタルを科学するというのは、情緒的なことではなく、何が理解できていて、何が理解できていないのかを明確にするということ。
 女子の選手のメンタルは、男子選手よりも強いので、選手のコミットメントを取ると、女子選手は男子選手よりもパフォーマンスを発揮する。男子よりも事細かく、なぜこれをしなければならないのかこれをしたら将来どうなるのかを明確に伝えないと、女子選手はついてこない。

 例えばチームが負けた時、その負けには必ず理由があります。ただ選手のやる気がなかったとか、集中していなかったなどの情緒的なことが本当の理由ではなく、負けた原因は別にあります。試合後、選手1人1人にヒアリングをして、監督が伝えたことがどこまで理解できているのかや、どれだけ実践できているのかをとことん分析して原因を見つけ出します。これがメンタルを科学するということなのです!

これを監督が、イノベーターとして発信していくことはすごく大変で、初めは難しいことだらけだったそうです。そのような環境に置かれても、やり抜くこと。これこそが、プロチームで指導するにあたって必要なことの1つである大切なメンタルタフネスなのですね!

2.パフォーマンス=才能×感情

2013-2016年に白石さんが、男子の3.4部リーグを指導した際に、才能と感情は必ず比例していて、この2つはものすごく密接に関係しているということを実感したそうです。

チームの中には、なかなか試合に出られず、コーチ、監督の言うことを全く聞かない選手もいます。そういった選手に出会ったとき、どのように指導しながらチームマネジメントを行なっていたのかについて教えてくださいました。

コーチは、選手のやる気を引き出すことが大事

そのために、選手の夢やどうしたいかなどをヒアリングしながら、その目的にあったパフォーマンスアップをはかっていく。

自分が指導することによって、どんなことが起こるのか、このチームを出て、次はどのようなステップを図りたいのかを書かせる。

選手のやる気を引き出して、モチベーションを高めていくことが、結果として共に才能も伸ばすことに繋がり、結果としてパフォーマンスも上がっていくという方程式が出来上がるということです。

3.選択と集中/エゴ障壁と盲点

2017年に本田圭佑選手と一緒にACミランに行った時、ビッククラブでの指導者の働き方を見て、学んでいたという白石さん。当時、ACミランの選手は、全員代表選手で、自分が1番と思っている選手たちの集まりだったそうです。トップクラブのコーチや監督は、このようにエゴ(個性)が強い選手たちをどうまとめていくのか、クラブの中の人たちは、そう言った人たちとどのように接してどのように取りまとめているのでしょうか?

まず、白石さんから見た当時のACミランについて教えてくださいました。

サッカーチームは、ビッククラブに行けば行くほど専門化されていると言われるように、ACミランに行くと1人の選手に1人の指導者(映像分析からコーチングをするような指導者から、ボクシングのコーチ、陸上のコーチなど、その選手に必要なコーチが必ずついている)がついていたそうです。練習については、トップクラスのチーム全体で練習する時は、90分拘束されるうち、実際に動く時間は10分程度だったそうです。このような唯一集まって行うトレーニングする際は、11人がどのように動くのかという戦術のトレーニングと、コンディションを整えることがメインの練習になります。

選手は、この90分間のトレーニング以外の個人トレーニングをしたりすることに時間をかけていたそうです。要するに、主なトレーニングはほぼ個人トレーニング。このレベルになると個人戦術が大切になのだそうです。
選手たちは、一つのポジションに2-3人いるので、仲はいいとは言えないけれど、はっきり言って選手同士はギラギラしている雰囲気だったようです。

指導の面では、テクニカルスタッフとしてACミランのミランラボという部署で働かれたそうです。ここでは、80年代からとっているデータをどういう風に分析して、どういう風に使っていくか、人が使われてない能力に焦点を当てていました。

人間は、目で見ていて記憶にしているものは無意識に目の中に記憶しているものがあります。
サッカーにおいては状況判断がものすごく大事になってきます。しかしながら、目に記憶してる情報を使ってない選手がほとんど。目に記憶している情報を脳に記憶させて、意識的にその記憶を使うというトレーニングを行ったそうです。このことによって、目で見たものを脳から身体にすばやく伝達させることができるようになり、無駄なプレーがなくなったといいます。トレーニングではバルサのトレーニング(フィジカル、戦術、テクニック、意思決定)、個人トレーニングでミランの神経回路のトレーニングを行い、1ヶ月で本田選手の動きが変わり始め、2ヶ月経つ頃には全く変わっていったそうです。これはしっかりと数字で表れています。

ここで白石さんがポイントとしているのは、選手たちは指導者に言われたことをピッチでしっかりと実践していたこと。エゴがあることによって、人の話を聞かない選手も存在していて、そういった選手たちは自分で自分の可能性をつぶしてしまい、駆け上がって行けるチャンスを選手自身が逃してしまうのです。そうさせないために必要なことをこのように仰っていました。

プライドがある選手ほど、監督は選手に寄り添ってあげることが大切。難しい選手ほど純粋なのでその気持ちを理解してあげようとすること。そういう選手ほど才能を持っていることが多いので、いかにして心を開かせるか。いいように引っ張っていくこと。これが指導者の役割

プライドのある選手は、何を言っても聞かないと突き放すのではなく、そういった選手ほど純粋に上手くなりたいという気持ちが強かったりするので、監督やコーチは気持ちに寄り添った指導をすることが大切なのだそうです。

4.まとめ


指導者は、どんなに難しい環境にいても、欧州のプロチームであろうがあるまいが、1番大切なのは信念と情熱だと仰っていました。

ビジネスに例えると、よく市場があって、お金があったりすると上手くいくと言われたりしているけれど、そんな人には人がついてこない。やはり、リーダーとなる人は、自分の信念を貫いている人で、周りを動かせる人にならなければいけない。だからこそ、1番指導者として大切なのは、信念と情熱である。

どんなにすごいメソッドを用いたとしても、結局は指導者に信念や情熱があるかないかで周りの選手がついてくるかが変わってきます。リーダーとなるべき人は、強い信念と、熱い情熱を持って指導していくことで、イノベーターとしての役割を全うし、チームを変えていくことができる力を持つことができるということがよく分かりました。

5.講義を聞いて考えたこと🏃‍♀️

これを聞いた時、小学校から高校まで女子校の中で育った私は、このコーチング論を聞いてなるほどなと非常に共感しました。私は、中学から大学を卒業するまでの10年間、陸上競技をやっていました。その中でも、中学と高校の6年間は女子選手しかいない環境で、中学1年生から高校3年生までの6学年が共に同じ練習内容の中、競技に取り組んでいました。

私たちを学生時代に指導してくれていた指導者は、いつも「この動きが100mを走る時の後半の動きに繋がる」とか、「ここを改善すれば、助走のリズムが変わってきて記録が伸びる」など、いつもその練習をした先にどうなるかを明確にしてくれていました。もしあの時、私たちの指導者が、「これやっとけば上手くなる」とか、「空中動作はこうしたほうがいい」というように部分的に指導してくれても、心のどこかで「この動きは何に繋がる?」って思ったり、「どうして自分のフォームじゃダメなんだろう?」といった疑問が残ったまま、

とりあえずやってみる→できてるかわからない→よく分からない→この指導者の言ってることはわからない→この指導者にはついていかない

という負の連鎖に陥っていたと思います。

当時の自分の練習日誌を読み返しても、
明確に指導してもらった時や、記録が悪かった理由まで分析できていたときは、その後の試合で修正することができていました。あの時は、なんとなく言われたことをやっていたらうまくいっていたけれど、ビジョンを明確にして、しっかりと分析したうえでコーチと選手で共通認識できると、パフォーマンスが上がっていたんだなと改めて思いました。

また、白石さんのチームマネジメントをする際の考え方を、マーケティングの市場調査の例に例えるというのが非常に勉強になりました。これを聞いた時に、もし私が教師になって、母校で部活動の指導をするとしたら絶対に参考にしようと心に誓いました🏃‍♀️!!実際に、自分が学生だった時も、このようにビジョンを明確にしてくれる指導者についていっていたし、チームの雰囲気も周りを巻き込みながら良い連鎖が起きていたからです。サッカーと陸上競技では、競技特性は異なりますが、チームマネジメントやコーチング論には通じるところがたくさんあるのだと学びました。

しかし、一番すごいなと感じたのは、白石さんが選手を本当に良く見て、その選手たちやチーム特性に合わせて指導のアプローチの仕方を変化させていたことでした。自分のやり方に選手を合わせるのではなく、選手に合わせて自分のアプローチの仕方を変えていくその姿勢がやっぱりプロなんだなと思いました。海外チームの監督という重役を成し遂げるには、それだけの観察力と、どんな環境でも、チームを、技術を、より良くしていこうというという信念と熱い情熱を持ち続けることが大切だと学びました。私がここに書いたのは、ほんの一部で、セッションの内容は情報分析のことや、メンタルを科学するってどういうことなのか、などここには書き切れないくらい面白くて勉強になることばかりでした!!もっと聞きたい...👂 貴重なお話、本当にありがとうございました!

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