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「もしもヘタクソがキック100万回練習したら?」をYouTubeで実践。ついには、海外クラブでサッカー選手になった進撃のYさんに努力を継続するコツについて聞いてみた。

みなさんは「1万時間の法則」をご存知でしょうか?ある分野でスキルを磨いて一流として活躍するには1万時間もの練習・学習が必要だというものです。

「進撃のY」こと、矢部光太郎さん(29)は、この「1万時間の法則」を自身のYouTubeチャンネルで実践・検証しているサッカー選手です。

「1万時間の法則」の時間を回数に換算し、「もしもヘタクソが100万回キックを練習したら?」というタイトルでYouTubeに動画を掲載。動画掲載して1年、次第に反響が集まるようになり、現在はチャンネル登録者数12.5万人、総再生数は3,400万回を超えています。そしてなんと、2020年1月から海外クラブに所属。目標であったサッカー選手になることができ、努力によって夢を実現しています。

今回はYouTubeを始めたきっかけや努力を継続するコツについて、矢部さんにお伺いしました。

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矢部光太郎さん
写真撮影:藤井翔太

挫折を経験しても
サッカーを諦めきることができなかった

ーー矢部さんは小さい頃からサッカーをプレーしていたのですか?
矢部さん:

サッカーを始めたのは小学校5年生のときですね。最初は児童館で友達と遊びでサッカーを始めて、そのあと地元のクラブチームに所属しました。中学・高校ではサッカー部に所属していたのですが、高校3年生の春に受験勉強のために、冬の全国大会を待たずして引退を決意しました。

サッカーを続けることも考えていたのですが、当時の高校トップレベルの選手と自分を比較した時に「今から頑張ってもあそこには届かない」と思い、サッカーを辞めて受験勉強を始めることにしたのです。その後、2浪して千葉大学に入学しました。大学進学後はサッカーに触れず勉学の日々。当時、大学で専攻していた物理学に時間を費やしていました。


ーーそんな中、もう一度サッカーを始めるきっかけは何だったのでしょう?
矢部さん:

うーん、心のどこかで「サッカーを諦めきることができなかった」からだと思います。物理の研究も楽しかったのですが、やっぱりサッカーの方が自分にとっては熱くなれたんです。サッカーから離れて初めて分かったのですが、サッカーが生きているという実感をくれるものになっていました。結局、千葉大学には4年間在籍していましたが、もう一度サッカーをやるために中退して、横浜国立大学に入り直しました。


ーー社会人チームではなく、大学サッカーを選ばれたのですね。どういった理由で大学サッカーを選択したのでしょうか?
矢部さん:

7年くらいサッカーから離れていたので、復帰にはとにかく練習の「量」が必要だと思ったのです。学生サッカーであれば平日も頻繁に練習しているので、学生サッカーを選びました。


「キックを上達する」「成長していく過程を見てもらう」を
目的に取り組んだYouTube

ーー「もしもヘタクソがキック100万回練習したら?」の動画を撮り始めたのはいつ頃でしょうか?
矢部さん:

2015年の冬ですね。タイミングとしては横浜国立大に入学した一年目の冬です。部活で一ヶ月ほどのオフがあったので、長期のオフを利用して動画撮影を始めました。最初は単純に「サッカーが上手くなりたい、特にキックが上手くなりたい」というのを目標に始めた企画です。ちょうどいいので、自分が成長していく過程をみんなに見てもらおうと。

また、成長していく過程を見てもらうことで僕と同じように挫折した人を励ますことができるのでは、と考えていました。高校までは、自分では努力してサッカーに取り組んだつもりでした。でも、努力しても努力しても上手くならない感覚が当時はありました。それは、単純にやり方が悪かったかもしれないし、量が足りなかったかもしれない。振り返れば、いくつかの不十分な点に気づくことができます。

ただ、当時はそれを明確に気づくことができず「自分には才能がない」で終わらせていました。こんな昔の自分のように、停滞に苦しんでいる人が動画を見れば、「取り組み方を変えれば、効果も変わっていく」と感じてもらえるのでは、という考えがありました。


ーー動画を撮り始めてから、苦労したことはありますか?
矢部さん:

当初は、1日500本くらいやって100万本のキックを6年くらいで終わらせる計算だったんですけど、初日に頑張りすぎちゃって、1日で1500本キックの練習をして怪我をしました(笑)。今は、一回の練習につき200本くらいに抑えています。


ーー動画への反響が来たのはいつ頃でしょうか?
矢部さん:

動画を出して1年後くらいに急激にアクセスが増えました。特に何かに取り組んだわけではないのですが、サッカーとギターの動画を1本ずつ上げていて、チャンネル上に放置していたら急にバズっていました(笑)。

反響としては、「頑張ってください」などの応援の声もあれば、「この動画を見て僕も剣道の練習をたくさんして大会で優勝しました」や「動画を見て受験勉強頑張ります」のようなコメントもいただいていてさまざまです。

また、数カ国語で動画のタイトルをつけたら、海外の人も見てくれるようになりました。動画の内容も言語をほとんど使っていないので、海外を含めて、多くの人に見てもらえるようになっています。


努力し続けることができる人と
そうでない人との違いとは?

ーートレーニングの内容は壁に向かってボールを蹴り続けるというものですが、一人で地道な練習を続けていくモチベーションはどこから生まれているのでしょうか?
矢部さん:

まず、僕には「サッカーでお金をもらいたい」という目標があったからです。その目標を叶えるためには練習し続けることも苦ではなかったですね。

また、キックの練習を続けることは、自分の成長していく姿を共有することで、見ている人に勇気を与えられると思っていました。この取り組みは、自分のためだけではなくて、他の人にも役に立つだろうと。「他の誰かのためにもなる」という期待感もあって続けることができています。


ーー矢部さんは高校時代に一度挫折されてサッカーから離れています。高校時代と今のご自身の違いは何だと思いますか?
矢部さん:

まずは、努力をした先の未来が信じられるかどうか?だと思います。未来には自分の叶えたい目標があり、それの実現を自分がどれだけ信じられているかが大きな違いですね。

あとは、練習の意味を分かっているかどうかも大きな違いです。「この練習でこういう技術を身につけたらどこで役に立つ」というように練習の意味を明確化できているかということです。それを知っているかどうかで、練習に対するモチベーションや技術向上に対する効果も異なっていくと思います。

最後に、小さな成長に気付けるかということも重要だと思っています。1日練習して自分は何が得られたかを気付けると練習は楽しくなりますよね。例えば、「キックの1つの要素であるボールの当てる位置だけわかった」など、ほんの小さな気づきでもいいのです。そういう小さな成長に気付くことができれば、「今日は練習してよかったな」と思えますし、明日も練習しようと思えるようになってきます。


ーー現在は、海外のクラブでプレーされていますが、どういったことがきっかけだったのでしょうか?
矢部さん:

大学を去った後もサッカーを続けていたところ、長年オーストラリアでプレーしている選手に出会ったことがきっかけですね。話を聞いたら面白そうだったので、オーストラリアへ行ってテストに参加して契約しました。ßコロナでリーグ戦が中止になってしまったので様子を見ていますが、目標としていた「サッカーでお金をもらう」という夢は叶いつつあります。


ーー夢が叶いつつあるのですね!次なるチャレンジはありますか?
矢部さん:

サッカーに関していえば、選手としてプレーできる年齢を意識しています。サッカーを長く出来たとしても、長くても後10年程度だと思います。
この残された時間でどこまで上のリーグで戦えるか?どれだけの結果を残せるか?ということが次のチャレンジですね。


ーー矢部さんはいきいきとチャレンジに邁進されている人生を送られていると思うのですが、一方でチャレンジを無意識的に避けている人も少なくはないと思います。チャレンジングな人生を送るマインドとしてはどういったものが必要になるのでしょうか?
矢部さん:

自分の人生を1つの物語だと思って、その物語が面白くなるような選択していけば面白い人生になると思います。もちろん、全員が大きなリスクを取る必要はないのですが、自分が許容できるリスクの中でどう生きていくかは自由なので、その中で自分の物語を面白くしていってほしいですね。


ーーありがとうございました!

矢部さんのYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCrmwUBVU1omSKRJy47S0fMQ

矢部さんのTwitter
https://twitter.com/japanfoot