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カレッジ女子バスケットボールの人気は ”NIL” のおかげ?

近年、カレッジスポーツではNILという今までのアマチュアスポーツでは考えられないルールの導入に対して厳しい意見が挙げられていますが、NILに対して積極的に動いている大学も少なくありません。そんな一長一短のあるNILによって大きな盛り上がりを見せているスポーツがあるのをご存知でしょうか?
現在人気沸騰中のカレッジ女子バスケットボールは、NILによって過去最大の盛り上がりを見せており、それはカレッジ男子バスケットボールだけでなく、NBAをも超えるまでに至っているのです!
ということで、本記事では女子バスケットボールが全米を虜にするほどの盛り上がりを見せている理由に迫りたいと思います!
以前の記事でNILについてより詳しく説明していますので、そちらを読んでNILについての理解を深めていただいてから、本記事を読んでいただけると理解が進むかと思います。


NILとは

今一度、NILとは何か説明します。2021年にカリフォルニア州が学生アスリートのNILの活用による収益化を定めたことを皮切りに、その他の州でもNIL法が導入されるようになりました。NILとは、

学生アスリートが自身の
Name(氏名)・Image(イメージ)・Likeness(肖像)
を活用したマネタイズが可能となること

すなわち、学生選手が自らの「氏名、イメージ及び肖像」を活用してお金を稼ぐことをNILといいます。

数字で見るカレッジ女子バスケットボールの盛り上がり

まずは、カレッジ女子バスケットボールがどれほどの盛り上がりを見せているのか、数字で確認していきましょう。

4月7日(現地時間)にNCAAトーナメント女子決勝が行われ、サウスカロライナ大学がアイオワ大学に87-75で勝利。翌日8日には男子決勝が行われ、コネチカット大学がパデュー大学に75-60で勝利しました。

例年通り、マーチ・マッドネスでは男女ともに白熱した試合が繰り広げられました。女子バスケットボールでは、「エリートエイト」という準々決勝にあたる試合でアイオワ大学とルイジアナ州立大学が対戦し、現地メディアのESPNにおけるこの試合の最高視聴者数が、男女含めたカレッジバスケットボール史上最多の1,230万人に到達しました。これは昨年のMLBワールドシリーズの平均視聴者数910万人やNBAファイナルの平均視聴者数1,160万人を超える数字となりました。

女子決勝ではさらに注目度が上がり、平均視聴者数は1,890万人を記録しました。男子決勝の平均視聴者数1,482万人に比べ、女子決勝が大きく上回る形となりました。女子決勝が男子決勝の平均視聴者数を上回ることは史上初のことで、さらには女子決勝の試合終了前15分における最高視聴者数は2,410万人を記録したそうです。

この視聴者数は過去5年間におけるプロ、アマチュア全てのバスケットボールの試合中継で最も高い視聴者数を記録し、さらにはオリンピックを除いた女子スポーツのイベントにおいて全米のテレビ史上2番目に高い数字になりました。1位は2015年FIFAワールドカップ女子決勝のアメリカ代表対日本代表の試合で、平均視聴者数2,540万人を記録しています。1位、2位いずれも日曜日に試合が行われていたことが高視聴率に繋がったと言われていますが、エリートエイトに関しては平日の火曜日に行われていたにも関わらず高い視聴率数を記録しており、今回の記録の理由が放送時間の良さだけではないことがわかります。

今年の女子バスケットボールへの注目度の高さには、ケイトリン・クラークというスター選手が在籍していたアイオワ大の躍進も大きく影響したと言われています。ケイトリン・クラーク選手はNIL契約の恩恵を最も受けた選手の1人であり、その効果は女子バスケ界全体に波及していると言えます。

また、女子決勝の観戦チケットに関して、StubHubというオンラインチケット販売サイトの情報によると、平均チケット価格が約2,900ドル(日本円で約45万円)に達したそうです!男子決勝はNFLスタジアム、女子決勝はNBAアリーナで行われており、入場可能観客数の違いがあることから、女子決勝の方が希少価値が高く価格が高騰しやすく、このような金額を記録したと言われていますが、平均視聴者数やチケットの価格からわかるように、カレッジ女子バスケットボールは全米の注目の的であったことに間違いないと思います!

▼NCAAトーナメント女子決勝のハイライト

企業が学生アスリートとのNIL契約に注目する理由

アメリカには、NFL(アメリカンフットボール)を筆頭にMLB(野球)、NBA(バスケットボール)、NHL(アイスホッケー)、MLS(サッカー)など様々なプロスポーツで活躍するスター選手たちが数多くいます。それでも企業が学生アスリートとNIL契約を結ぶことに注目する理由は、プロスポーツ選手に比べて全世代的な知名度は低いものの、10代、20代と同世代の若者への訴求力が高く、共感してもらえることが主な要因だと思います。

また、トップ選手への階段を登っている学生アスリートとのパートナーシップによってトップ選手になるまでの種まきのような意味合いもあるのかと思います。

さらには、地域に根付いたレストランチェーンなどローカル企業が、知名度はなくとも地元の大学で頑張っている選手たちをサポートする小規模の契約を結ぶなど、様々な形でのサポートもNIL契約によって行われています。

WNBAとNBAの差

ここまで、カレッジ女子バスケットボールの人気とNILの関連性を紹介しました。NILがカレッジ女子バスケットボールを成長させるきっかけとなったことがわかっていただけたと思います。しかしながら、NILによって多大な収益を手にしている女子学生アスリートがいる中、プロリーグであるWNBAの平均収入の低さが話題となっています。
前出のケイトリン・クラーク選手はアイオワ大学のスターとして今年のNCAAトーナメント準優勝に貢献し、WNBAドラフトにてドラフト1位として、インディアナ・フィーバーに所属することが決まりました。下の投稿はWNBAとNBAのドラフト1位の年俸を比較したものです。2024年のWNBAドラフト1位のケイトリン・クラーク選手は4年契約で約33万ドル(日本円で5,115万円)、2023年のNBAドラフト1位のビクター・ウェンバンヤマ選手は4年契約で5,500万ドル(日本円で85億2500万円)。リーグの人気度もそうですが、この差は男女賃金の格差であると言われています。

最後に

今回はカレッジ女子バスケットボールに関して紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
これまでスポーツは男性のものとされてきた中で、女性スポーツの人気が上がってきているように見られていることから、「男子のスポーツ」「女子のスポーツ」という概念はなくなりつつあるのかなと今回の記事を書いている中で感じました。WNBAとNBAの年俸の差について前項で紹介させていただきましたが、アメリカでも、また日本でも男女の差や違いと言った考え方が残っているように感じました。ですが、今回紹介した、カレッジ女子バスケットボールでの成功がWNBAの発展につながると、日本においても女子スポーツに注目が集まる機会になるのではないかと感じました。

読んでいただきありがとうございました!


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