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国際試合カレンダーに注目 世界のラグビー界のトレンドに迫る

世界のラグビー界の動きは刻一刻と変わってきています。これまで、こちらのnoteでは過去何回かにわたりラグビーに関する記事をご紹介してきました。ラグビー界は歴史と伝統がある一方で、それだけにとどまらず時代の流れに乗った取り組みを次々と発表しています。
今回の記事では、今のラグビー界のトレンドや、今後詳細が発表されるであろうビッグイベントについてお伝えしていきます。

国際試合カレンダーが変わる?

4月の上旬、あるニュースが海外メディアで報道され、世界中のラグビーファンから大きな注目を集めています。
その報道では、ラグビー界で初となるクラブワールドカップが2028年に開催されるというもので、参加クラブについても具体的な言及がありました。

これまで世界のラグビーカレンダーは4年に一度の国別のワールドカップを中心に、南半球では、オセアニア地域のクラブを中心としたスーパーラグビー・パシフィック、太平洋周辺の国別のパシフィック・ネーションズカップが行われてきました。対して、北半球では欧州のクラブを中心としたチャンピオンズカップ、国別のシックスネーションズが行われてきました。それらの大会の間を埋めるように「ウィンドウマンス」と呼ばれる南北での代表チーム同士のテストマッチが行われます。

ラグビーはコンタクトスポーツと言われ、非常に消耗が激しく通常1週間に1度しか試合を実施できません。野球などのスポーツのように毎日試合を行うということができないという大きな特徴があります。

今回の報道で注目すべきは、元々行われていた北半球のチャンピオンズカップのノックアウトステージの代わりにクラブワールドカップが行われるという点と、日本のリーグワンから2チームが出場する可能性があると言われている点です。1点目のチャンピオンズカップについては、長年世界規模でのクラブ対抗戦を行う構想が出ていた中で懸念とされていた大会日程に関して関係団体、大会での調整が付いたことを表しています。2点目の日本のリーグワンから2チームが出場する可能性があるということについては、国際的に見ても国内リーグの競争力の高さが認められたということと、これまでの記事でお伝えをしていたハイパフォーマンスユニオンへの加入が大きな影響を及ぼしていると考えられます。
いずれにせよ、今後の大会主催者側からの詳報が待ち遠しいところです。

環境への配慮も重要となる国際大会のニュースタンダード

先ほど説明をした、太平洋周辺諸国で行われるパシフィック・ネーションズカップは2024年夏の大会から、フォーマットを大きく変更することが発表されました。
パシフィック・ネーションズカップはカナダ、フィジー、日本、サモア、トンガ、アメリカの6協会が加盟しています。

フォーマットの変更が発表されたというワールドラグビーのニュースリリースを読み解いていくと、興味深い内容が記載されています。1つ目は大会の開催地です。2024年からのパシフィック・ネーションズカップは1組3チームのプール制へと変更されました。フィジー、サモア、トンガの3チームがプールA。日本、アメリカ、カナダの3チームがプールBと分かれホームアウェイで各国2試合を経て、各プールでの上位2チームが決勝ラウンドに進みます。比較的距離が近く、移動時間が短く済む近隣国同士でプール分けを行うというワールドラグビーとしての一つの姿勢が示されています。

ワールドラグビーの「環境サステイナビリティ計画2030」に沿って、選手の疲労回復を最適化し、長距離移動の疲労を軽減し、大会の二酸化炭素排出量を削減するために、3チームからなる2つの地域プールを設けました。

ワールドラグビーHP(筆者和訳)

Player WelfareとSustainabilityというワールドラグビーが掲げる取り組み方針に則った大会フォーマットとも言えるでしょう。ワールドラグビーの取り組みについては、以前のnoteでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
また、決勝ラウンドは日本またはアメリカのどちらかの国で行われることが決まっており、2024年大会の決勝ラウンドは東京と大阪が会場となっています。

The Pacific Nations Cup will culminate in a winner-takes-all finals series, taking place in Japan and USA (in alternating years)​, two strategically important markets for the future advancement of the sport.
パシフィック・ネーションズカップは、このスポーツの将来の発展にとって戦略的に重要な2つの市場である日本とアメリカで(交互に)開催される、勝者総取りの決勝シリーズでクライマックスを迎える。

ワールドラグビーHP(筆者和訳)

今後のワールドラグビーの国際戦略において、日本という市場が重要視されているということがよく分かります。

日本のラグビー界の行く末はいかに

これまで説明してきたように2023年のワールドカップ以降、国際大会の枠組みが大きく変わってきています。日本国内の動きはどのようになっているのでしょうか。実は国内の最上位リーグであるリーグワンも2024年にユニークな取り組みを行っていました。
2024年2月、スーパーラグビー・パシフィックに所属しているニュージーランドの強豪2チームが来日し、JRLO(一般社団法人ジャパンラグビーリーグワン)が主催・主管として「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024(以下CBR)」が開催されました。

リーグワンとして初となるこの取り組みの裏側にはJRFU(日本ラグビー協会)による国際的な交渉があったことはあまり知られていません。CBRが開催される約1年前の2023年5月に日本ラグビー協会とニュージーランドラグビー協会との間でアジア太平洋地域全体のラグビー競技発展のための覚書が締結されていました。各国の協会と国内リーグの連携があり、CBRの開催の枠組みが決まっていったのです。
こういった国際的な交渉を経て、日本のリーグワンと世界最高峰のスーパーラグビー・パシフィックとの接点が生まれていたのです。その一方で、試合の開催時期や試合が持つ意味(リーグ戦の勝ち点に加える等)の問題が出てきています。次回の開催は未定とのことで今後どうなっていくかの情報はまだ出てきていませんが、日本のラグビー界が世界の強豪国、強豪クラブと接点を持つことができたことは非常に意義のあることだと思われます。
クラブワールドカップ、クロスボーダーマッチ共に今後の詳報に期待です。

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