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指定管理者制度について正しく理解する_前編【実践!スポーツビジネス道場#26】

←第25話

ポッドキャスト番組「実践!スポーツビジネス道場」の文字起こし記事です。
実践!スポーツビジネス道場」は一般社団法人スポーツビジネスアカデミ(SBA)の公式オンラインサロン「THE BASE」が毎週木曜日に配信しているポッドキャスト番組です。
スポーツビジネス界で奮闘する若手ビジネスパーソン、酒井翼さん(東京都社会人リーグ2部所属のサッカークラブ「TOKYO.CITY.FC」でスポンサー営業を担当)が日ごろの業務での葛藤や悩み、アイディアをスポーツビジネス界の第一線で活躍し、SBA代表理事を務める荒木重雄さんに壁打ちし、成長していく様子をお届けしています。


酒井)みなさんこんにちは。TOKYO.CITY.FCの酒井翼です。
今日も荒木さんよろしくお願いします。

荒木)よろしくお願いいたします

酒井)今日収録が2020年11月16日(月)で、現在僕らは「TOKYO.CITY.FC」という名前で活動しているんですけれども、来年2021年から「SHIBUYA.CITY.FC」 に改称するということを先日発表させていただきました。

荒木)すごいニュースになっていたね!

酒井)すごいかわからないですが…(笑)ありがとうございます!

荒木)(笑)みたよ、みたよ!その件に触れてもいい?

酒井)はい、ぜひ!

荒木)このタイミングで2021年TOKYO.CITY.FCからSHIBUYA.CITY.FCに変えた一番の狙いってなんですか?

酒井)色々あるんですが、根本の想いとして渋谷を象徴したクラブになりたいというのがずっと一番にあって。昨年2月にTOKYO.CITY.FCとして渋谷からJリーグを目指しますと公表して地域で活動する中で、地域の方からなんでSHIBUYA.CITY.FCじゃなくてTOKYO.CITY.FCなの?と聞かれることがとてもあって。僕らもそうだよねと納得する部分、当たり前だよなという部分がかなりあって。渋谷らしいクラブになるには名前もSHIBUYA.CITY.FCにした方が地域の活動もしやすくなるだろうし、スポンサー企業の営業の時も、僕らのわかりやすさも上がるし、渋谷の中でいろんな活動して行くにあたって名は身を挺すと言いますか、活動もやりやすくなってくるかなと。やるなら早い段階の方がいいねとなり、来年からということになりました。

荒木)反響は?

酒井)すごい良かったですね。特に発表式を区役所近くのコワーキングスペースでやらせていただいたんですが、渋谷の街づくりに関係する方々が多くいらっしゃて、商店街の方や区役所の街づくりに関係する部署の方や区議会議員の方とか団体の方とかが来てくださって、渋谷の街づくりの一環としてSHIBUYA.CITY.FCが使えるんじゃないかとか、僕ら自身に対しても街づくりに関わる方々が期待している事を肌で感じることができてすごくよかったなあと思いました。

荒木)略称とかあるの?通称なんて呼ばれたいの?

酒井)通称はあまり決めてないんですが、SHIBUYA.CITYか、シティかSCFCとか…

荒木)決めた方がいいんじゃないの?

酒井)そうですよね。僕らの中では内外で「シティ」と呼ばれるんですが、略称も渋谷って付いた方がいいですよね。

荒木)シティだと割と大きめなライバルがいるよね(笑)

酒井)日本全国、世界中にいますね(笑)

荒木)世界中だね(笑)

酒井)確かにそこはあんまり考えていなかったので、愛称募集とかやってもいいかもしれないですね…。

荒木)SHIBUYA.CITY.FCになって戦略的に大きく変わる事はあるのかしら?もともと渋谷拠点に活動しているから活動自体は大きく変わらないのかな?

酒井)そうですね、大きくは変わらないですね。でも地域の中でどれだけ認められるかというと所は大きく変わってくるかなと思っていて。地域との連携やサッカー協会との連携はやっぱり受け入れられ方が違うというか。今までも応援したいとおっしゃっていただいていましたが、より本格的に一緒に取り組んだり、公的なお墨付きもらいつつ、やりやすく変わってくるのかなと思っています。

荒木)翼は渋谷に住んでるの?

酒井)住んでいます。ちょうど法人化するタイミングで、渋谷のクラブなのに渋谷区民じゃないのってどうなんだろうと思って引っ越しました。

荒木)監督は?

酒井)監督も渋谷のはずです!

荒木)だったらよかった(笑)

酒井)そんな改称に合わせてというところもあるんですが、指定管理についてアドバイスいただきたいと思っています。

荒木)指定管理ねえ。

酒井)渋谷でやっていくとなったとき、長期的な大きな課題はチーム強化や興行、渋谷での地域の活動等やスクールをやるという時に、ハード面をどうしていくか、整えていくかというところが重要になってくると思っていて。そうなった時に地域のスポーツ施設の管理者になるのは大事なのかなと思っています。僕らも既存の指定管理者と一緒に共同事業やったり入札部分とかお話させていただいたりとかはあるのですが。
せっかく荒木さんにお話お伺いできるので、規模感はもちろん違いますが、千葉ロッテの事例とか、一体経営で収益をどう最大化させるとか。千葉ロッテの指定管理者を主導された荒木さんに、抑えるべきポイントや戦略をお伺いできればと思います。

荒木)今だいぶサッカーも指定管理が増えてきたよね。一番最初に指定管理を取ったのが千葉ロッテマリーンズと鹿島アントラーズが2006年に同時期に日本初のプロスポーツチームが指定管理者を取ったという事例が始まったんだけど。俺も指定管理についてよく聞かれることが多くて。でも残念だけど勘違いされていることが多くて、魔法の制度みたい思われていて。指定管理を取ると売り上げ上がるとか、指定管理取らないと一体経営できないとか、売り上げ上がらないとか。あるいはスタジアムとかアリーナの使用料が高いから指定管理を取って安く抑えるとか。足元の課題を解決する為に指定管理を取るという感覚を持っている方が多くいるように感じる。言うまでもなく指定管理者はスポーツの制度ではないし、あれ、指定管理は法律のどこに書いてあるんだっけ?

酒井)法律は…地方自治法とか?

荒木)おお、いいねえ!何条だっけ?

酒井)何条は…

荒木)(笑)何条かはどうでもいいね。
244条の2ってところに書いてあるんだけども。つまりね、そもそも管理制度が導入された背景みたいなところを理解する必要があって。もともと小泉政権の一つの施策だったんだけど、公的施設を民間に委託するという事がどういう事かというと…。行政からするとなんで民間に託そうとしたかわかる?

酒井)ポイントとしては多分、僕その時生まれてませんが、国鉄がJRになった話と近いのかなと思っていて。資本の原理が公共サービスにも入っていくことによって公共サービスの質を高めて、その施設の収益性を高める事によって、施設が赤字ではなく健全に経営をしていくという2つがポイントなのかなと思っています。

荒木)そうだよね、他のJRだとかの公的な事業を運営するところはユーザー・消費者に対してより高いクオリティでより充実したサービス提供みたいな、あるいは民間に託す事によって民間の知恵を使って新しく投資をしながらより価値を高めていくみたいな。ここはすごく理解をしやすいと思うんだけど、公的施設、スポーツに限らずスタジアム、体育館、公民館というものがそもそもなんで公的施設だったのかという事はわかる?

酒井)なんで公的施設なのか…

荒木)例えば電車とか通信とかって民間がやってもいいじゃない?儲かるじゃない?

酒井)なんでか…、逆に言えばそもそも儲からないから?

荒木)そう、儲からないから。日本を、いや世界を代表する生産性の低い土地なのよ。サッカーに至ってはあれだけ広い施設というかあれだけ広いフィールドを使ってプレイヤーが11×2とかのわけよね。物としての生産力は全くないし、稼働時間もすごく限定的だし。だけど必要とするから税金で作るわけだけどね。でもそれは民間がやりようがなかったから。そこが儲かるのであればもっと民間がスタジアムとかアリーナとか競技場、体育館を作りまくっても良かったけど、作ってないでしょ?ということはそもそも儲からない施設という事が前提。でも公共が必要ということで作ってきた歴史がありますと言いうところがスタートラインで。それでなんで今度、指定管理制度を民間に託す事になったかというと、地方財政が結構厳しくなってきたわけですよ。その地方の財政赤字を少しでも押さえこんでいく中で、赤字垂れ流しの施設に対して、そこを民間に託して何とかリカバリーをしようというか、あわよくば民間の知恵を使って市民サービスを向上させていこうというのがそもそもの狙い。となると税金で賄っているコストよりも民間に託したらコスト上がっちゃうっていう選択肢はないじゃん?

酒井)そうですね。

荒木)そうだよね。今赤字10で運営しているところが、民間に託したら15になりましたってそんな馬鹿な話ないじゃない?だから赤字を抑え込んでいくために民間に託していかなきゃいけない。だからプロスポーツの観点で言うと、球場使用料が高いから指定管理をとって安くしようって話になるけど、それが真だとしたら、球場使用料を減らすことができるという思惑があると、球場使用料が下がるよね。球場の使用料が下がるということは維持費がペイ出来ないので、赤字が増えることになる。そのまま現在のA社が指定管理業者が持っている施設を、スポーツチームが指定管理者を取って球場使用料を下げた時に、行政の負担が増えるという事。でも指定管理者取って球場使用料上げますという考え方は普通しないわけよ。という矛盾があったりするわけよ。
行政が持っている物を民間が引き継ぐという事は行政の負担を減らす、プラス行政の持っている物の価値を民間がやる事によってどれだけ高められるか。市民サービスの向上という概念はとても良くて、行政からしたら税金を使うということは説明責任がある。この民間の事業者に委託する事によってこれだけ地域社会にメリットがあるんですという事が言えれば言えるほど、指定管理者に託した意味ができてくる。大きく分けるとその2つ。
指定管理者をさせることによって税金がこれだけ減りましたとって言えるかあるいは、民間に託す事によってどれだけ市民サービスが向上できましたよってこと。逆も真なりで、指定管理者にしたら財政圧迫しちゃいましたっていうのはアウトだし、指定管理者にしたら全然予約が取れなくなっちまったとか対応が悪いとかになっちゃったらこれはもう本来行政が望む姿ではない。

酒井)むしろ逆ということですね。

荒木)それが本質なわけですよ。最大のステークホルダーの行政が思っているのは負担が減りなおかつ市民サービスが向上する事が彼らの理屈が通るところだし、じゃあここに任せますとなる。そこに原点があるところと、一体経営は関係ない。

酒井)そうですね、チーム側の論理ですね。

荒木)冒頭翼が言ったように、これからチームで強化だとかをやっていくにあたって、ハードは自分たちでやっていかないと、とか収益化するときに一体経営だ、という事は行政には関係ないということ。その文脈においては。これはもうステークホルダーマネジメントの世界だけど、対行政への戦略、対チームへの戦略、対地域への戦略は微妙に異なっている。その異なった戦略を合わせた交わりのポイントを全ステークホルダーで共通化していくという事をグランドデザイン的に描かないと失敗するかなと思うよね。

酒井)ありがとうございます。ステークホルダーの中で僕らの論理だけではなくて、きちんと地域・行政に対して市民サービス関してどうかというところを総合的に判断した上で、もちろんタイミングとかもありますが、公募に対してきちんと応募していくということですね。

荒木)そうだね。公募スタイルになるかもしれないけど。そうなると制度的に市議会・区議会マターなので、そこに対してその施設がそもそも指定管理者の対象にするかどうかの話から始まって、そこに応募がかかったときにどういう戦略で臨むかというところは知恵の勝負になってくる。
その時に注意するのは、自分たちの論理で持って行っちゃったら民間が税金を悪用することになっちゃうわけで。あくまでそれは税金を使わしていただく上で公的施設をお預かりして市民サービスを保証していくのかっていうトータルの画が無いと当然勝てないわけだよね。


≪第26話 終わり≫

■登場人物
➤荒木 重雄 Shigeo ARAKI

一般社団法人スポーツビジネスアカデミー(SBA)代表理事。
株式会社SPOLABo、株式会社スポカレ代表取締役。2005年に千葉ロッテ球団の執行役員・事業本部長、パシフィックリーグマーケティングの取締役執行役員を歴任。日本サッカー協会(JFA)の広報委員をはじめ、官公庁のスポーツ関連プロジェクトなどにも多数参画。
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➤酒井 翼 Tsubasa SAKAI
J1から数えて8部に相当する、東京都社会人リーグ2部に所属するサッカークラブ「TOKYO CITY F.C.」にてスポンサー営業などを担当。
スポーツクラブで働きながら、1000万円プレイヤーになることを目指し、日々奮闘中。
TOKYO CITY F.C. 公式サイトはコチラ

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