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フードエッセイスト・平野紗季子さんによる、Podcast『味な副音声』の語彙力のゆたかさたるや。


眠れないとき、皆さんはどうしますか。
ひたすら羊を数える? とりあえず目を閉じて身体をリラックスさせる? マインドフルネス? 寝るのをあきらめてなにかする?

私は、「ひとりごとをぶつぶつ言う」をたま〜にやるのですが(まじでいつの間にか寝てる)、だいたいはなにかを聴きます。ASMRとか、聴きそびれていたラジオ番組とか(タイムフリー便利だねえ)、Podcastとか。この辺を聴いているとすや〜……っと。は、残念ながらあんまりならない(ならんのかい笑)

今日もなかなか寝られなくて、おやすみのおともを探していたのですが、そのとき偶然見つけた『味な副音声〜voice of food〜』が本当にすてきで! あまりにも感動してしまったので、今回はその話をしたいと思います。


『味な副音声〜voice of food〜』とは。

フードエッセイスト・平野紗季子がお届けするおいしいPodcast。毎週異なる食(メニュー)をテーマに様々なトークを繰り広げていきます。食に対して全力で愛を注ぐ彼女にしか表現できない描写や発する言葉で、日頃私たちも食している「ごはん」の楽しみを新しい切り口で紹介していきます。この音声を聞きながら登場する料理を実際に食べると、料理がもっとおいしく、もっと魅力的になる?おしゃべりなごはん好きが繰り広げる、新しいフードトークをお楽しみください。
(番組Webより)

そうそうそう、この説明文の通りなんですよ。特に「食に対して全力で愛を注ぐ彼女にしか表現できない描写や発する言葉で」というところが。かわいらしい声にやわらかい語り口で、ふわ〜っと心地よい気持ちになるのですが、聴いているうちに平野さんの語彙力のゆたかさ、表現力の幅広さに心動かされ、いてもたってもいられなくなってしまいます。

たとえば、「定食」の回。
「定食」というものについて語る彼女の言葉がこちら。

小鉢があって、お漬物があって、炊き立てのご飯があって、汁物があってメインがあるっていう、あの味のフルアルバムみたいな光景がめちゃくちゃ愛おしくて。

「味のフルアルバム」。なんという的確かつおしゃれな表現なのでしょう。定食ってね、あのバランスあってこそなのですよね。見た目のにぎやかさ、味の色とりどりさ。私も好きでよく食べにいくのですが、なぜってやっぱりそういうところに魅力を感じているからなんですよね。

そしてこの回では、実際に平野さんが牛タン定食の「ねぎし」というお店に出向いて、しろたんセットの食レポをしているのですが……。レポがうますぎて勝手に想像がむくむくとふくらみ、おなかが空いてきてしまう。

まず熱々の牛タンをほお張るじゃないですか。するともう、適度な脂と肉の歯応えに引き込まれるんですよね。で、もう「うま〜い!」ってなるところに、麦めしをかき込むっていう。麦めしと一緒に食べるとまた、脂と塩気がコメに染みて甘味が引き立って、また「めちゃめちゃうま〜い!」っていう状況になって。で、そのあとスープひと口いきますよね。牛タン屋さんのスープって、牛テールスープなんですよ。味噌汁とかじゃない。つまり、出自が一緒なんですよね。だから阿吽の呼吸みたいなのがあって、それで肉の旨味を底上げしてくれるっていう効果があるんですよ。

ギャー! もう、いますぐ食べたい! ってなりません? なったでしょ?
「麦めしに染みたお肉の脂と塩気」。もうありありと思い浮かぶでしょう?まるで目の前で自分が対峙しているかのようなリアルさ。

そして私がより感銘を受けたのが、牛テールスープを「(牛タンと)出自が一緒」と表現し、「阿吽の呼吸みたい」「肉の旨味を底上げしてくれる」と続けるところです。わかる。わかるけど、そのあらわし方はいままで思いつかなかったなって。

平野さんの著作には『生まれたときからアルデンテ』という有名なエッセイ集があるのですが、恥ずかしながらまだ読んだことがなく。Podcastの中で新刊(『私は散歩とごはんが好き〈犬かよ〉』)が出たともおっしゃっていたので、どちらかをまずはすぐ手に入れて、平野さんの食表現を堪能したいと思います。

あぁ、いいなぁ。こんなに愛情豊富な食レポをしてもらえるなら、ごはんたちも食べられ甲斐があるってもんですよね。きっとつくり手側もすごくうれしいだろうな。

現在第2回まで更新されています。
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