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ふいに思い出す人

そういえば、Oくんっていま何をしているんだろう?

私の頭の中に急に浮かんできたOくんの顔。たしか小学校3〜4年生の頃に同じクラスだった男の子だ。彼はクラスの中でも目立つ「わかりやすい人気者ポジション」にいたわけではなかったが、「ボソッとつぶやくひと言」が妙におもしろく、独自の地位を築いていた。

彼のおもしろひと言エピソードは、具体的には何も覚えていないけれど、なぜか無性に気になってしまう。あの子はどんな大人になったのだろうか。持ち前のワードセンスを活かせるような職に就いたのだろうか。残念ながら、おそらく彼はSNSの類をやっていない。東京にいた頃の「仲の良かった子」たちは、それぞれの人生を必死に歩む中で接点がないにも等しくなってしまい、私が彼の現在を知る術はいまのところない。

私は転勤族の家に生まれた。
といっても、転校は2度しか経験していない。小3になる春に大阪から東京へ、中3になる春に東京から大阪へ。都会は人の入れ替わりが激しく、これまでに出会った他の転勤族の子の中には、2〜3年に1度は国をまたいで転校しているなんて子もいた。それに比べれば私なんて大阪と東京の行ったり来たりだ(とはいえ、文化が大きく違うので戸惑いは大きい)。しかし「一度も転校したことのない子」と比べれば、顔見知りの同級生の数は多くなる。

だから、いまになって思い出す顔も様々だ。「その後」が気になる子の数も多い。もう10年以上も顔を合わせたことのないあの頃の友人たちは、いったいどんな大人になったのだろうか。高校生の頃にmixiが、大学生の頃にFacebookが流行って、少しずつ、再びつながりが生まれた子もいた。実はSNSを通して、二十歳になる時、東京の中学の同窓会に呼ばれたこともあった。ちょうどいとこの結婚式とかぶってしまったためやむを得ず欠席したら、その後は一切お呼びがかからなくなってしまった(笑)。

だれに何を言われようと自分の世界観を崩さなかったRちゃんや、一時期は毎日のように一緒に遊んでいて、顔まで似てるよねなんて言われていたAちゃん、私と同じく本の虫でやたらと大人っぽかったYちゃんも。みんなどんな人になったのかなぁ。実は、みんな一度はFacebookで検索したことあるんだよ。でも見つけられなかった。

転校を重ねると、「地元」という概念がなくなる。「地元どこ?」と聞かれると私は返答に困る。「大阪でいえばそこ」だし、「東京だとあそこ」なのだが、なんせ小中学校という地場で強くつながった人たちとの交流はもうない。高校は公立受験にスベって、通っていた中学からは遠く離れた私立に通ったし(そもそも卒業した中学は最後の1年しか行っていなかったので、1年間ずっとよそ者感が抜けず気まずかった)、私が社会人になったあとも、父の転勤で家族は2度引っ越しており、「私が昔から住んでいる場所」というものもすっかり存在しなくなった。気になる彼ら、彼女らに会う機会は、もう二度とめぐってこない。

みんな元気なんかなぁ?
小学校や中学校を卒業してから、みんな今日までどんな人生を送ってきたんかな? 答えを聞くことはもうないと思うけど。みんながそれぞれの場で、元気でいてくれたらうれしいなぁ。


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