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月がみている

こどもの頃は満月の夜が苦手だった。

真夜中に目が醒めてトイレに起きると
満月の灯りだけで
廊下が歩けるほどに明るい。

月灯りに照らされて裏山の草木の葉一枚まで
くっきりと浮かび上がるモノクロの世界。

昼間と同じようで何かが違う。
満月に照らされた窓ガラスの額縁の世界は
なんだか不気味で怖かった。

田舎の山奥には街灯も少なく
夜は真っ暗なのが当たり前だった。

夜の暗がりで
見えない事に恐怖するのが
一般的かもしれないけれど

月灯りで普段は見えないものが
明瞭に浮かびあがる事に恐怖した。

見えてはいけない世界と目が合った
気がした。


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