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固体物理学の教科書

今回は固体物理学です。量子力学や統計力学は既習としています。簡単な順に紹介します。『凝縮系物理における場の理論』など高度なものは私が理解できないので紹介できません。

固体物理学ー工学のために

訳書というのはたいてい固い日本語で少しばかり読みにくさがありますが,こちらは訳書ではないため読みやすいです。入門書としてまずはこちらを最初に読むと良いのではないでしょうか。図が多い点も良いです。

固体物性入門-例題・演習と詳しい解答で理解する-

とにかく演習問題が多く,計算慣れするという意味ではとてもよいです。しかしよく読んでみるとなんでそうなるのか納得しがたいところもあります。したがって簡単な固体物理学の教科書と一緒に取り組む本です。タイトバインディング近似が載ってなかったような気がします…

イバッハ

この本は平易な日本語に訳されており,読みやすいです。特に結晶に関する内容が詳しいと感じます。ところどころコラムもあり,実験装置がどんなものなのかイメージが持てます。。第6章の演習問題は固体の勉強をしていてあまりなじみがないものでした。チャンドラセカール極限…

アシュクロフトマーミン

日本語版は4冊にわかれています。キッテルと並んで有名な本ではないでしょうか。バンド理論や輸送現象など基本的な知識から磁性体や超伝導まで扱っています。結構細かいところまで載っているので,1からこの本で学ぶというよりは,手元に置いておいてわからないところを中心に読むといった本です。あると便利。ただしボルツマン方程式のところで腑に落ちないところもあります。

キッテル

世界で最も有名な(アンチも多そう)固体物理学の教科書。様々な話題が書かれているので,知識を広げるのに便利です。しかし,深いところまで知ろうと思うと他の本のほうが良いかも?

物性物理のための場の理論・グリーン関数

この本にはグリーン関数による伝導計算がおそらく和書では最も詳しく,易しく書かれており,とにかく計算できるようになります。ファインマンダイアグラムに関しても学ぶことができ,多少はグリーン関数に関する論文も読むことができるようになりました。しかし品切れ。電子版ならありそうです。

ハリソン

研究を始めてからかなり利用しています。ハリソンの教科書はボンドからバンドへ展開しており,固体のバンドがどのようにできるのか理解が進みます。特にタイトバインディングに関して詳しく,丁寧です。ちなみに日本語版は絶版です。

グロッソ・パラビチニ

少し難しい固体物理学の教科書。説明は丁寧で具体的です。理論家向けかもしれません。計算が丁寧で省略が少ないです。1電子近似を超えた話題も載っており勉強になります。

フィリップス

こちらは名の通り進んだ内容や最近の話題が多いです。例えば近藤効果やトポロジカル絶縁体,強相関電子系などです。様々な話題がまとまっており,参考文献も豊富なので,辞書的な使い方もできます。各章でまとめがあるのも良い点です。

トポロジカル絶縁体・超伝導体 (現代理論物理学シリーズ)

各論になってしまうのですが,トポロジカル絶縁体・超伝導体の本です。量子ホール効果などから導入されており,分類も記述されています。私はトポロジカル絶縁体までしか読んでいませんが,トポロジカル数との関係がわかりました。多くの教科書にあるSSH模型は分類のところでしか見かけなかったような気がします。SSH模型は高次トポロジカル絶縁体のモデルで,最近話題になっており,エッジ状態だけでなくコーナー状態なども理論的に計算されています。

ザゴスキン,多体系の量子論

Keldysh形式を学ぶために少し読んだが,わかりやすかった。

以下読みたい本

固体電子の量子論

図書館で見かけてはいますが読んでません。少し中身を見たところ,線形応答などの導入から丁寧に記述されており,理論計算の手法を学ぶ際にかなり参考になりそうです。


以上簡単に紹介してきましたが,この分野は他にも無数に教科書があります。軸となる本を決めて勉強しつつ,様々な本を読んでみることが理解の助けになるのではないでしょうか。



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