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量子力学の教科書

物性理論を専攻している者です。COVIT-19の影響で在宅での研究をしいられており,精神的に疲れたので息抜きに記事を書いてみます。

今回は量子力学の教科書について紹介します。ここでは基礎的な微分方程式の解法や線形代数,力学と電磁気学を学んだ人を対象としています。大体学部3年生くらいでしょうか。

まずは初学者に向けて。著者は低温物理学の権威です。この本は薄く非常に読みやすいです。最近(?)新装版になり,ハードカバーからソフトカバーになりました。あと安いですね,素晴らしい。丁寧に計算を追うことで計算方法がわかるようになります。


次は私が最も好きな砂川先生の本です。この本は非常に教育的で懇切丁寧です。易しくはありませんが,とても優しく,初学者の壁であるブラケットについてよくわかります。頑張れば独習も可能でしょう。私は研究で量子力学を多用していますが,依然として参考にすることが多いです。特に散乱理論についてGreen関数を用いた議論が記述されており,役に立ちました。また後述する猪木川合はサプリメントというか『栄養分』といった印象を受けるのですが,こちらは『味』がする本です。箱に入っていてかっこいい。


次はJ.J.サクライです。高いですね…こちらもブラケット中心の記述です。角運動量に詳しくなれます。シュレーディンガー方程式の解法とかは載ってませんのでテスト対策にはならないかもしれません。抽象度は高いですが,一般論中心なので研究にも役立ちます。時間反転対称性の議論は参考になりました。大好きです。

2022/5/9追記 3rd editonになってみたいですね。自分が持ってるのは1st editonなのですが、どうなのでしょう?


定番とされている猪木川合です。おしゃれこれはほぼ問題集でしょう。計算トレーニングになります。(2022/5/9追記 今思うといい本だと思いました。レベルが高くて当時の自分にとっては問題集のように感じていました。話題が多く研究でも役に立つと思います。)壁を通り抜ける確率など問題のバリエーションが豊富です。群論についての記述があり,群論を何も知らないと読めません。初学者には薦められません。(2022/5/9追記 群ってこんなものかと思って一旦受け入れて、後からまた見直すと理解が深まりそうです。)


Landauの小教程です。名に反して内容は全然小さくありません。後半はほとんど読めていませんが,やはり素晴らしいですね。シュレーディンガー表示において,時間微分された演算子が,ハミルトニアンと時間微分する前の演算子の交換関係で書くことができるという記述は,普通の量子力学の教科書には載っていないのでは?


素晴らしい本ばかりですね。どの本にも良い点はありますが,もう少し詳しく書いて欲しいと思うこともあります。ただ,完璧な本なんて存在しません。一冊の本では不足しますので,様々な本を読むことをお勧めします。




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