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日記#1 「Love Song」/麻枝 准

Love Songとは


「Love Song」は美少女ゲームブランド"Key"に所属する麻枝准さん(以降敬称略)が2005年にリリースしたコンセプトアルバムである。

コンセプトアルバムという単語が聞き慣れない人がほとんどだと思う。コンセプトアルバムとは、

コンセプト・アルバム(Concept Album)は、ある一定のテーマまたは物語に沿った楽曲によって構成されたアルバム。 アルバム全体でひとつの作品になっている作品をさしている。

ということで(Wikipedia引用)、簡単に言ってしまえばアルバム全体の楽曲で世界観を共有しており、繋がりがあるアルバムなのだ。

Love Songは一言で表すと"聴くKey"とも呼ぶべき代物で、CLANNAD制作直後に麻枝が送り込んだ傑作CDだ。全13曲の楽曲すべてが"僕"と"キミ"の破滅へ向かう恋を描いており、13曲の連なりはリスナーに麻枝准がAirやCLANNADで見せた切なさと幻想を1時間10分で体験させてくれる。

(Love Songは最近生産完了し、今は流通しているのが少しとこちらで配信している)


Love Songの見どころ


このアルバムは筆者の音楽への向き合い方を未来永劫変えてしまった。

Keyの麻枝准といえば、Air、CLANNAD、リトバス、Angel Beats、Charlotteなどを制作し、泣きゲーの礎を築いたクリエイターである。彼の描く世界は学園モノや閉鎖された人間関係を描きつつ、同時に幻想や世界の謎といったマクロのセカイに繋がっていくという特徴がある。

そんな彼の作品は非常に評価が高いが、ミクロを丁寧に描きつつマクロな世界も表現するその手法に長大な尺を使う必要があるのも同時に知られている。

ノベルゲームはもともと長大なプレイ時間をユーザーに求めることが出来るが、アニメに関してはCLANNADは全48話、評価も高く大ヒットとなったAngel Beatsに関しても主な批判が尺不足であったりする。個人的にはコンセプトに対する尺のまとめ方は適切だと思いつつも、広大な世界観は限られた尺に収まっていないことが多いと感じるのも事実だ。


Love Songは13曲、1時間11分49秒という限られた時間の中に麻枝准のCLANNADまでで培った才能が凝縮されている。長大な尺を必要とする彼の作家性を、音楽の情報量と極限まで切り詰めた歌詞で表現することに成功しているのだ。

もしあなたがCDを買い、一度聴いただけでは似たような曲の連なりに感じるかもしれない。しかし何度も聴き、扉絵をみながら歌詞カードを読み込むことで、それぞれの曲の繋がりに気づくことが出来る。

そしてLove Songの真に面白い点は"歌詞だけでは情報量が足りない"点だ。
本アルバムでは本来絵や独白で整理されるべき情報を与えない、聴き手の想像にまかせている部分が多く存在する。聴き込んでいくことで物語は聴き手それぞれのものへと変貌していくのだ。ある段階からLove Songは聴き手の想像の素材に変わるのである。

想像や創作が好きな人は是非買って聞いてみて欲しい。それぞれの曲の連なりと、そして物語が終わるからLove Songへとつながるクライマックスに感動できる頃には、Love Songはあなたの宝物のアルバムへと変わるだろう。


余談1:ちなみにしゃりんは"僕らの恋"が大好きで、麻枝さんにリプして仮曲のURLをもらった時は嬉しすぎて泣きそうだった。

余談2:"走る"という曲に聞き覚えがある人はいいセンスだ。これはリトルバスターズ!の朱鷺戸沙耶の個別BGM、"駆ける”の元バージョンで、沙耶√の元ネタであるらしい。

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