Mリーグ2020ファイナルシリーズ最終戦 目無し問題について

どこかの好事家がぽんと5000万円を出して「一番つええ奴を決めろ」と言って、暗い地下の密室で死闘が繰り広げられ結果だけが外に伝わって伝説となる、ってんなら、最終半荘で目無しなら、半荘一回をシンプルにトップを目指すというのは苦渋ではあるけれど、対局者同士では納得に足る選択なのだろうし、対局者同士で納得できればそれでよいのだろう。

だから何か引っ掛かるところがあるというか、腑に落ちない感じがするのは、Mリーグのファイナルシリーズ最終戦だからってことなのだろう。

結論から言えば、私は選手の上手いプレーが観たいのだ。ドラマチックな逆転も観たいけれど、大前提として上手いプレーが観たいのだ。わざわざ何時間もパソコンの前で他人の打つ麻雀を眺めているのは選手がみんな私よりずっと上手いからで、もしヘタクソなら親戚が出ているのでもない限り観たりしない。


昨シーズンのファイナルシリーズ最終戦の沢崎選手のプレーは上手いと思った。こんなに上手く消えられるものなのかと感動すら覚えた。極めて限定的な状況で、なのにその極めて限定的な状況に見事に適応してプレーしていると思った。麻雀にはこんな技術もあるのかと奥深さを感じた。優勝の目は無くなっても、上手さを見せて上手さで魅せる機会までは奪われていない。

今シーズンのファイナルシリーズ最終戦の村上選手には競技プロとしての矜持、覚悟、苦渋の決断、とことん辛く勝ち切って、素晴らしい人間ドラマを見た。
理解ってる。理解ってるんだ。
でもさあ!
私は「上手い!凄い!」って叫びたいのだ。凄い人が上手い世界ではなく上手い人が凄い世界を見たいのだ。
なあどうか、隙あらば上手いところを見せておくれよ!魅せておくれよ!
チーム方針とかいろいろあっただろうけどさ、村上さん、あんた「人間ドラマ枠」だったか?「べらぼうに麻雀が上手い人枠」だったんじゃねえのか?
どうして大一番の目無しでも麻雀を見せて麻雀で魅せてくれるんじゃなくて、矜持を見せて覚悟で魅せてくれたんだ。


だいぶめちゃくちゃなことを言っていると自分でも思うけれど、私は興行として一般に公開して行われる対局では、目無しは黒子に徹して欲しい。
それはいくつか取り得る方法のうちで黒子に徹するというのがおそらく技術的に最も難しく、だからこそ上手さを表現する見せ場の一つになり得ると思うから。
正直、また去年みたいな見事な黒子が観られるかもと期待していた。プロの方々はひょっとしたら見せ場になると思っていないかもしれないけれど、私はお金を払っていいレベルだと思っている。
去年のは黒子に徹する矜持というよりも、黒子を見事に演りきった上手さにみんな納得したのだろうと思っていて、今年のは矜持だけなので合う人と合わない人に分かれるだろうなと思う。
私は上手さに納得させられるほうが気持ちいいです。


とかなんとかそれっぽいことを言っておいて、ここから先は完全に感想というか難癖もいいところですが、決勝戦最終戦に一人だけ開幕戦が混じるのは最終戦を作ったとは思えなくて、どうしても最終戦を壊したように見えてしまう。目無しがどんな方法を取っても少なからず結果に影響を与えることが避けられないなら、目無しにも最終戦を戦って欲しい。最終半荘の一打一打という視点では目無しは開幕戦のようにフラットに打つのが最も影響が少ないのかもしれないが、レギュラーシーズンを戦って準決勝・決勝とステップアップしてみんなで見守ってきた短くはない物語の最後に登場するまるでラスボスが、一人だけ決勝戦から降りて無条件の無敵の人というのは、数字では説明できないんだけど一半荘の一打一打よりも大きな何かを歪めてしまうように思えてならない。
もちろん、勝負に人生が懸かっている選手たちが納得できる方法が尊重されるべきであることは重々承知だが、卑怯な言い方をすれば、人生が懸かっていない視聴者へ向けて興行することで成り立たせようとしているということは決して無視できない。単純な勝負事としての目無し問題よりも、さらに少し複雑化している。これから議論されていくのだろう。

私のわがままな希望は前述の理由もあって黒子に徹することだが、さらに付け加えると、目無しにも条件を背負って欲しい。トリプル役満条件を背負えってんじゃないよ。黒子に徹するという条件を背負って、決勝戦を最終戦を作り上げることに参加して欲しい。条件を背負ってさえいれば、勝ち目はなくとも決勝戦最終戦に参加する資格はあるはずだ!共に作り上げる資格はあるはずだ!と、根拠のない自信で言い切って、終わりにしたいと思います。

勝負を知らない甘ったれた考えだと言われれば仰るとおりです。でも悲しいじゃないですか、敗退したチームまで含めてみんなで作り上げてきたシーズンの、最後の最後に1チームだけひとりだけそっぽに行かなきゃならないってのは。



ノーベル賞受賞者だらけの麻雀大会があったら一度は見てみたいけど、週4で半年間見続けたりはしない。
2021シーズンはよこい

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