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いじめに関するNHKの番組の感想

子供が生まれたから(まだ早いかもしれないけど)いじめの問題にも興味が向いているようで、NHKの番組【ストーリーズ】事件の涙「34年ごしの宿題~鹿川裕史くん“葬式ごっこ”事件~」を録画して見ました。

34年前に事件を取材した記者が、当時は寄せ書きに加担した教師の取材を拒否され、いじめに加担した理由について教師の証言を得ることができませんでした。しかし34年たって、弁護士の継続的な活動に触発された記者が再び動き、やっと取材することができた。教師の答えは、「生徒に寄せ書きを求められたので仕方なく書いた。自殺については全く予測できなかった」という内容でした。

「全く予測できなかった」というのが、諦めずに取材した甲斐のあるポイントかと思います。いじめに関わる人たちの中に、予測ができる人はほぼいないと考えられます。なぜなら、死ぬ人の気持ちを普通の人は分からないからです。ましてや、この事件の場合もそうですが、いじめられても気丈に振る舞う子供が相手であれば尚更わかりません。

だいたいにおいて私達は、クリティカルな結末にならなかったいじめについては把握することがなく、クリティカルな結末になったいじめをニュースで知ることになります。ですからそれを見て、あり得ないと思うわけですが、前者のいじめも「結末が予測できない」という点では変わりませんから、それをスルーして後者のいじめだけ防ごうというのは危険だと思います。ギリギリを見極めようとして待っていれば、手遅れになるものが出てきて当然です。

昨年末、インスタグラムに「いじめ防止」機能、AIが問題投稿に警告というニュースがありましたが、こういうのは良い取り組みだと思います。要するに、本人の気持ちに関わらず、いじめらしき行いについて警告を発するということです。これはネットへの投稿に関する取り組みですが、リアルな世界においても応用できそうです。AI的な応用もありそうですが、まずは「軽いいじめ(エスカレートする前の行為)をスルーしない」ことが重要ではないでしょうか。

いじめの重大性を認識させる目的で、クリティカルな事例を取り上げることはよくあります。でも、どういう行為が軽いいじめになりうるのかという議論は、あまり聞いたことがありません。また、被害者にならないための対策として、小さいことでも嫌なことは話すという重要性を聞いたことがありません。両親とも余裕を持つことも日常的な対応余力を備える点で重要そうですが、これも働き方改革的な観点でしか聞かないように思います。

海外の事例で、シティズンシップ教育オルヴェーズいじめ防止プログラムといったものがあります。このような社会的な取り組みは重要ですが、親として基本的なことは、子供とよくコミュニケーションを取ることだと思います。両親とも健在であれば片親に育児が偏らないことが重要です。片親が子供のある異変に気づかなくても、あるいはうまく子供の言葉を引き出せなくても、もう一人いれば対応できる可能性が高まります。

教師の言葉は、いじめても自殺することが予測できないから問題ないと思っていじめた、と言っているに等しいわけですが、これはある意味で、予測した上でいじめるよりも危険な考えです。狙って悪事を働くのは少数の悪者でも、軽い気持ちでやってしまう普通の人は大勢いるからです。

鹿川くんの遺書には、このようなことは自分で最後にしてほしいと書かれていたそうです。世界の貧困者の数は減っても、日本のいじめの認知件数は横ばいか、小学生ではむしろ上がっています。自殺率も上がっているので、見えていなかったいじめが情報収集能力の向上によって見えるようになっただけとも考え難いものがあります。そうだとすれば鹿川くんの願いは全く叶えられていないわけです。

日本のいじめの特徴は、傍観者率が高いことだそうです。前述したように、どういう行為がいじめの種になりうるのかを考えた上で、そうした行為をスルーせず、軽いうちに皆がすぐ指摘し合えるようになれば少しは良くなるのではないかと思います。本当の悪者の対策は分かりやすいので、これまでも誰かが考えてきたはずです。だから、流されやすい普通の人向けの対策を考えたほうがいいんじゃないかと、この番組を見て思いました。

ちょび丸(1歳)の応援をよろしくお願い致します~😉