ラーメンマンVSマリキータマン 序章

【前巻までのあらすじ】
 大魔王サタンが放った恐るべき刺客、オメガ・ケンタウリの六鎗客。
 絶対の窮地に現れたのは、かつてキン肉マンと王位を争った知性チームの超人達だった。
 オメガの刺客であるヘイルマン、ギヤマスターを相手に知性チームは順調に勝利を納めていくが、マリキータマンの翻弄する動きを前に必殺のレインボー・シャワーが当たらず、プリズマンは苦戦。
 しかし、僅かな隙を見せたマリキータマンにとうとうレインボー・シャワーが命中しようとしていた。

「レインボー・シャワー!!」
『おおっと!!窮地のプリズマン、絶好のチャンスにとうとう必殺技を放ったーーっ!!』

 とうとうマリキータマンの背後を取ったプリズマン。
 その半透明の身体の全身にヒビが入っており、無機物超人ながら痛々しく見える。
 だが、一発逆転のチャンスである。
 その構えた両手から、虹色の光線が放たれた。
 思わず声を上げてしまうような美しい七色の光である。
 しかし、その正体はかつて超人を絶滅寸前に追いやった殺人光線である。
 太陽光があれば、プリズマンはこの恐るべき必殺技を無尽蔵に放つことが出来るのだ。

「キョキョキョーッ!馬鹿めーっ!オメガだかなんだか知らないが、お前も所詮は超人!!お前はわざわざこの星に死にに来たに過ぎねぇぜーっ!!」
「カピラリア七光線……その恐るべき殺人光線のことは知っている……だが!」
『おおっと!どうしたマリキータマン!!迫る殺人光線を前に、背を見せたまま動かないぞーっ!!』

 臆したか、マリキータマン。
 恐るべき即死光線に対し、一切回避する様子を見せない。
 なれば、どうなる。
 当然――虹色の死がマリキータマンを襲うのだ。

『マリキータマンにレインボー・シャワーが命中ーっ!かつての王位争奪戦において、超人血盟軍とキン肉マンチームを散々に苦しめた必殺技は、今回も……なんと!?』
「何ぃ!?」
 誰もが驚愕の声を上げたが、それも無理のないことだろう。

『レインボー・シャワーが命中したマリキータマンですが……なんと何も起こらなかったかのように平然と立っています!そして……一体、どのような理由があるのでしょう!?マリキータマンの羽の七つのボタンが一つの巨大な黒い丸に変わっています!!』

「エクリプス・ドット」
「その心理テストがどうしたって言うんだーっ!」
『レインボー・シャワーをマリキータマンに向けて放ち続けるプリズマン!!しかし、どうしたことでしょう!?マリキータマンはその背で恐るべき殺人光線を平然と受け止め続けています!!』
「地球でもっとも黒い物質であるベンタブラック……その黒さは光の99.965%を吸収すると言われている……が、オレの羽にあるボタンは99.995%!!ベンタブラックの十倍以上の光線吸収率を誇る。カピラリア七光線と言えども、所詮は光……これがどういうことかわかるな」
「知るかーっ!」
『おおっと!プリズマン!!傷ついた身体で飛び蹴りだーっ!』

「テメェにオレのレインボー・シャワーは効かねぇってわけじゃねぇ!!だったら当たるようにしてやればいいだけのことだぜーっ!」
『プリズマンの飛び蹴りをキャッチし、マリキータマン……放り投げたーっ!』

「その通りだ、お前にレインボー・シャワーがある限りおちおち技も仕掛けられぬ……それ故にーーっ!!」
『おおっと!!マリキータマンの背の模様が……なんだこれは~~~っ!!』
「何ぃ~~っ!!」

 巨大な一つの丸となったマリキータマンの背の模様。
 それが、テントウムシの形を取って彼の身体から抜け出し――太陽へと向かっていく。

「テントウムシは太陽に向かって飛んでいくことから、太陽神の使いとも呼ばれ、それがテントウムシという昆虫の名前の由来にもなっている」
「だから、どうしたってんだーっ!お前を守る黒い丸が――」
『プリズマン、再びレインボー・シャワーの構えを取ったーっ!もはやマリキータマンに彼を守る黒色は無い!!もしや、これで勝負が決まってしまうのか!?』

「消えちまったぜーっ!」
 しかし、プリズマンの手からあの恐るべき虹色の殺傷光線は放たれない。
 いや、異常はそれだけではない。
 昼の試合であるというのに、急に夜になったかのように周囲が暗くなっている。
 
「オレの背にあるエクリプス・ドットが太陽へと飛んでいき、陽光を吸収し……今を夜と変わらないようにしてやった、そして……」
『おおっと!!組み付くのを避け、打撃技で攻め立てていたマリキータマンが、とうとう得意のコネキリツイスターでプリズマンに組み付いたーっ!!』
 相手に抱きつくようにして両腕で相手の片腕を極めつつ、その片足は相手の腹に巻き付き、さらにもう片足は相手の脚を抑えている。
 実際、恐るべき関節技である。

「カピラリア七光線の源は太陽光、それゆえに太陽の光を封じてしまえば無効化することが出来ることはもう分かっている……さらに」
「キョ……キョキョ……ば、馬鹿め……!!」
『おおっと、プリズマン!この姿勢からレインボー・シャワーを放とうとしている!』

「太陽が消えても、まだオレの中にレインボー・シャワーを撃つエネルギーは残って……キョ~~~~ッ!?」
 驚愕の声を上げるプリズマン。
 レインボー・シャワーを放つためのエネルギーが残っていないのだ。

「もう遅い、オレが散々にレインボー・シャワーを撃たせてやったのは、お前のエネルギーを切らすためだ」
『プリズマン、最早進退窮まったか~~~!?』
「キョキョ、だったら……」
 プリズマンの声から闘志は消えていない。
 だが、コネキリツイスターでへし折られ、その身体は上半身と下半身に分かれようとしている。それだけではない。圧力がかかり、最早プリズマンの全身が割れる寸前のガラスに過ぎなかった。

『おおっと、マリキータマン!!プリズマンの胴体をへし折った~~~!!』
 ゴングが鳴った。
 無慈悲なる鐘の音色は、教会の葬儀の際に鳴る、それに似ていた。

「ケッ……相性が最悪のやつに……ぶつかっちまったぜ……」
 上半身だけのプリズマンが絞り出すように声を出す。
 人間ならばとっくに死んでいるような状態でも、超人ならば出来ることはある。
 
「恐ろしい相手ではあった、だがお前は所詮一芸超人に過ぎない。たとえオレが相手でなくても……オレたちの中に神の光に負ける者はいない」
「一芸超人……一芸超人か……キョキョキョ~~~!!!」
 心底愉快そうにプリズマンが笑う。

「何がおかしい」
「お前の鼻を明かしてやる方法を考えていたんだ……キョキョキョ……ブロッケンJrにやらせるか、ジェロニモにやらせるか……考えていたんだが……決めたぜ~~っ!!!」
 瞬間、プリズマンの腕が自身の胸を貫いた。
 ガラス片が弾ける。
 砕かれた透明の肉体の中に色づく心臓――プリズマンの腕の中に握られたそれはパズルのピースの形をしている。

「何をするつもりだ」
「お前をぶち殺してやるつもりだったが……それがダメだったから……オレの代わりにお前をぶち殺せる奴を呼ぶのさ……」
 勢いよく投げられた心臓はプリズマンの元を離れ――キン肉星マッスルガム宮殿へと飛んでいく。その軌跡は虹色の光線のようであった。

「なんじゃ~~~っ!!!」
 キン肉真弓が驚愕の声を上げる。
 猛スピードで放たれたプリズマンの心臓は、マッスルガム宮殿を覆うサタンの結界に突き刺さり、その半身、パズルのピースの凸の部分だけを結界の内部に見せている。

「これは……」
「プリズマンの……」
 プリズマンの心臓は何故、サタンの結界を破るほどの強大な力を持っているのか。いや、重要なのはそのことではない。プリズマンの心臓が空けた僅かな穴からサタンの結界を脱出することが可能なのではないか。

「しかし、こんな小さい穴でどうしろって言うんだ~~!!」
 プリズマンの心臓は人間のそれよりも一回りも二回りも大きいが、それでも猫の子一匹通れるほどの大きさはない。
 さらに、恐るべきかなサタンの結界。
 結界に突き刺さったプリズマンの心臓を押し返さんと、結界が復元を始めている。
 このままではプリズマンの最期の行為は無駄に終わってしまう。

「いや、わかった」
 その時、ラーメンマンがプリズマンの心臓の凸を掴んだ。
 その手に迷いはない、正義超人として何が出来るのかを知る者の厚く、温かい手である。

「ラーメンマンよ、何をする気なんじゃ」
「当然、この穴から抜け出すんだ」
「なにぃ~~~~っ!?こんな小さい穴じゃぞ!?」
「なるほど……そういうことか……」
「あぁ~~~~!!!そういうことかぁ~~~!!!」
「わかったズラ~~~!!!」
 アルカイックな笑みを浮かべるラーメンマン、そしてラーメンマンがこれからすることを理解した三人の正義超人。
 それに対し、キン肉真弓はラーメンマンの意図がわからず困惑している。

「フフ……ラーメンマンめ……考えたな!!」
「どういうことじゃ!一体ラーメンマンは何をしようと言うんじゃ~~!!」

煽り:ラーメンマンの秘策とは……

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