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ラーメンマンVSマリキータマン(キン肉マン二次創作)

【前回までのあらすじ】
 大魔王サタンが放った恐るべき刺客、オメガ・ケンタウリの六鎗客。
 絶対の窮地に現れたのは、かつてキン肉マンと王位を争った知性チームの超人達だった。
 オメガの刺客であるヘイルマン、ギヤマスターを相手に知性チームは順調に勝利を納めていくが、マリキータマンの翻弄する動きを前に必殺のレインボー・シャワーが当たらず、プリズマンは苦戦。
 しかし、僅かな隙を見せたマリキータマンにとうとうレインボー・シャワーが命中しようとしていた。

煽り:架かるは勝利の虹!

「レインボー・シャワー!!」
『おおっと!!窮地のプリズマン、絶好のチャンスにとうとう必殺技を放ったーーっ!!』

 とうとうマリキータマンの背後を取ったプリズマン。
 その半透明の身体の全身にヒビが入っており、無機物超人ながら痛々しく見える。
 だが、一発逆転のチャンスである。
 その構えた両手から、虹色の光線が放たれた。
 思わず声を上げてしまうような美しい七色の光である。
 しかし、その正体はかつて超人を絶滅寸前に追いやった殺人光線である。
 太陽光があれば、プリズマンはこの恐るべき必殺技を無尽蔵に放つことが出来るのだ。

「キョキョキョーッ!馬鹿めーっ!オメガだかなんだか知らないが、お前も所詮は超人!!お前はわざわざこの星に死にに来たに過ぎねぇぜーっ!!」
「カピラリア七光線……その恐るべき殺人光線のことは知っている……だが!」
『おおっと!どうしたマリキータマン!!迫る殺人光線を前に、背を見せたまま動かないぞーっ!!』

 臆したか、マリキータマン。
 恐るべき即死光線に対し、一切回避する様子を見せない。
 なれば、どうなる。
 当然――虹色の死がマリキータマンを襲うのだ。

『マリキータマンにレインボー・シャワーが命中ーっ!かつての王位争奪戦において、超人血盟軍とキン肉マンチームを散々に苦しめた必殺技は、今回も……なんと!?』
「何ぃ!?」
 誰もが驚愕の声を上げたが、それも無理のないことだろう。

『レインボー・シャワーが命中したマリキータマンですが……なんと何も起こらなかったかのように平然と立っています!そして……一体、どのような理由があるのでしょう!?マリキータマンの羽の七つのボタンが一つの巨大な黒い丸に変わっています!!』

「エクリプス・ドット」
「その心理テストがどうしたって言うんだーっ!」
『レインボー・シャワーをマリキータマンに向けて放ち続けるプリズマン!!しかし、どうしたことでしょう!?マリキータマンはその背で恐るべき殺人光線を平然と受け止め続けています!!』
「地球でもっとも黒い物質であるベンタブラック……その黒さは光の99.965%を吸収すると言われている……が、オレの羽にあるボタンは99.995%!!ベンタブラックの十倍以上の光線吸収率を誇る。カピラリア七光線と言えども、所詮は光……これがどういうことかわかるな」
「知るかーっ!」
『おおっと!プリズマン!!傷ついた身体で飛び蹴りだーっ!』

「テメェにオレのレインボー・シャワーは効かねぇってわけじゃねぇ!!だったら当たるようにしてやればいいだけのことだぜーっ!」
『プリズマンの飛び蹴りをキャッチし、マリキータマン……放り投げたーっ!』

「その通りだ、お前にレインボー・シャワーがある限りおちおち技も仕掛けられぬ……それ故にーーっ!!」
『おおっと!!マリキータマンの背の模様が……なんだこれは~~~っ!!』
「何ぃ~~っ!!」

 巨大な一つの丸となったマリキータマンの背の模様。
 それが、テントウムシの形を取って彼の身体から抜け出し――太陽へと向かっていく。

「テントウムシは太陽に向かって飛んでいくことから、太陽神の使いとも呼ばれ、それがテントウムシという昆虫の名前の由来にもなっている」
「だから、どうしたってんだーっ!お前を守る黒い丸が――」
『プリズマン、再びレインボー・シャワーの構えを取ったーっ!もはやマリキータマンに彼を守る黒色は無い!!もしや、これで勝負が決まってしまうのか!?』

「消えちまったぜーっ!」
 しかし、プリズマンの手からあの恐るべき虹色の殺傷光線は放たれない。
 いや、異常はそれだけではない。
 昼の試合であるというのに、急に夜になったかのように周囲が暗くなっている。
 
「オレの背にあるエクリプス・ドットが太陽へと飛んでいき、陽光を吸収し……今を夜と変わらないようにしてやった、そして……」
『おおっと!!組み付くのを避け、打撃技で攻め立てていたマリキータマンが、とうとう得意のコネキリツイスターでプリズマンに組み付いたーっ!!』
 相手に抱きつくようにして両腕で相手の片腕を極めつつ、その片足は相手の腹に巻き付き、さらにもう片足は相手の脚を抑えている。
 実際、恐るべき関節技である。

「カピラリア七光線の源は太陽光、それゆえに太陽の光を封じてしまえば無効化することが出来ることはもう分かっている……さらに」
「キョ……キョキョ……ば、馬鹿め……!!」
『おおっと、プリズマン!この姿勢からレインボー・シャワーを放とうとしている!』

「太陽が消えても、まだオレの中にレインボー・シャワーを撃つエネルギーは残って……キョ~~~~ッ!?」
 驚愕の声を上げるプリズマン。
 レインボー・シャワーを放つためのエネルギーが残っていないのだ。

「もう遅い、オレが散々にレインボー・シャワーを撃たせてやったのは、お前のエネルギーを切らすためだ」
『プリズマン、最早進退窮まったか~~~!?』
「キョキョ、だったら……」
 プリズマンの声から闘志は消えていない。
 だが、コネキリツイスターでへし折られ、その身体は上半身と下半身に分かれようとしている。それだけではない。圧力がかかり、最早プリズマンの全身が割れる寸前のガラスに過ぎなかった。

『おおっと、マリキータマン!!プリズマンの胴体をへし折った~~~!!』
 ゴングが鳴った。
 無慈悲なる鐘の音色は、教会の葬儀の際に鳴る、それに似ていた。

「ケッ……相性が最悪のやつに……ぶつかっちまったぜ……」
 上半身だけのプリズマンが絞り出すように声を出す。
 人間ならばとっくに死んでいるような状態でも、超人ならば出来ることはある。
 
「恐ろしい相手ではあった、だがお前は所詮一芸超人に過ぎない。たとえオレが相手でなくても……オレたちの中に神の光に負ける者はいない」
「一芸超人……一芸超人か……キョキョキョ~~~!!!」
 心底愉快そうにプリズマンが笑う。

「何がおかしい」
「お前の鼻を明かしてやる方法を考えていたんだ……キョキョキョ……ブロッケンJrにやらせるか、ジェロニモにやらせるか……考えていたんだが……決めたぜ~~っ!!!」
 瞬間、プリズマンの腕が自身の胸を貫いた。
 ガラス片が弾ける。
 砕かれた透明の肉体の中に色づく心臓――プリズマンの腕の中に握られたそれはパズルのピースの形をしている。

「何をするつもりだ」
「お前をぶち殺してやるつもりだったが……それがダメだったから……オレの代わりにお前をぶち殺せる奴を呼ぶのさ……」
 勢いよく投げられた心臓はプリズマンの元を離れ――キン肉星マッスルガム宮殿へと飛んでいく。その軌跡は虹色の光線のようであった。

「なんじゃ~~~っ!!!」
 キン肉真弓が驚愕の声を上げる。
 猛スピードで放たれたプリズマンの心臓は、マッスルガム宮殿を覆うサタンの結界に突き刺さり、その半身、パズルのピースの凸の部分だけを結界の内部に見せている。

「これは……」
「プリズマンの……」
 プリズマンの心臓は何故、サタンの結界を破るほどの強大な力を持っているのか。いや、重要なのはそのことではない。プリズマンの心臓が空けた僅かな穴からサタンの結界を脱出することが可能なのではないか。

「しかし、こんな小さい穴でどうしろって言うんだ~~!!」
 プリズマンの心臓は人間のそれよりも一回りも二回りも大きいが、それでも猫の子一匹通れるほどの大きさはない。
 さらに、恐るべきかなサタンの結界。
 結界に突き刺さったプリズマンの心臓を押し返さんと、結界が復元を始めている。
 このままではプリズマンの最期の行為は無駄に終わってしまう。

「いや、わかった」
 その時、ラーメンマンがプリズマンの心臓の凸を掴んだ。
 その手に迷いはない、正義超人として何が出来るのかを知る者の厚く、温かい手である。

「ラーメンマンよ、何をする気なんじゃ」
「当然、この穴から抜け出すんだ」
「なにぃ~~~~っ!?こんな小さい穴じゃぞ!?」
「なるほど……そういうことか……」
「あぁ~~~~!!!そういうことかぁ~~~!!!」
「わかったズラ~~~!!!」
 アルカイックな笑みを浮かべるラーメンマン、そしてラーメンマンがこれからすることを理解した三人の正義超人。
 それに対し、キン肉真弓はラーメンマンの意図がわからず困惑している。

「フフ……ラーメンマンめ……考えたな!!」
「どういうことじゃ!一体ラーメンマンは何をしようと言うんじゃ~~!!」

煽り:ラーメンマンの秘策とは……

「闘龍極意ネコジャラシ、テャァーッ!」
 ラーメンマンの辮髪が解け、全身を覆うようにまとわりついていく。
 そして、ラーメンマンは全身に己の髪の毛を纏ったまま、プリズマンの心臓を押すように進んでいけば――なんたる奇妙なこと、プリズマンの心臓が空けたほんの小さな穴から、ラーメンマンの身体がするりと抜けて出ていくではないか。
 毛の生えたネコジャラシが手の中をすり抜けていくのと同じ原理である。
 スプリングマンやネメシスの技から抜け出したときのように、ラーメンマンは見事にサタンの結界から抜け出してみたのだ。
 
 しかし、ラーメンマンが抜け出れば、その瞬間にサタンの結界は再び再生し、マッスルガム宮殿は正義超人の牢獄へと戻っている。
 
「プリズマン……」
 プリズマンの心臓を手に、ラーメンマンは一人呟く。
 距離は近しいが、仲間たちは決して破れぬ壁の向こうだ。
 ウォーズマン、テリーマン、ブロッケンJr、ジェロニモ、皆歯痒い思いをしていただろう。なれば、その分も――自分が戦おう。
 そして、この戦いで散った、ティーパックマン、カナディアンマン、ベンキマン、カレクック、プリズマン――復讐のために闘うのではない、それでも自分が背負うものは大きい。

「頼んだぞ、ラーメンマン」
「勿論だ」
 正義超人達がうなずき、ラーメンマンもそれに返す。

「だが、ラーメンマン。キン肉星から地球までどうやって移動するつもりなんだ。宇宙船は全て破壊されてしまったぞ」
 しかし、ここでウォーズマンが当然の疑問を口にする。
 恐るべき大魔王サタンは念には念を入れてキン肉星の宇宙船を破壊しておいたのである。
 近隣の惑星から救助は来るであろうが、これからの超人の運命を握るであろうオメガ・ケンタウリの六鎗客との戦いに一般超人は釘付けである。

「おそらく、このプリズマンの心臓が導いてくれるだろう」
 そう言って、ラーメンマンはその場であぐらをかき、深く息を吐いた。
 その両手は捧げるようにプリズマンの心臓を持っている。
 瞬間、ラーメンマンの手に持つプリズマンの心臓が虹色に光り輝いた。カピラリアの恐るべき光か、否。その光は暖かく、殺傷性はない。そして強く光を放ったかと思えば――光を超える速さでプリズマンの心臓がラーメンマンごと地球に向かって飛んでいくではないか。まるで、流星のようである。

「引力だ」
「引力ズラ?」
「引力というのは物と物同士が引き合う力のことだ。超人なら当然、心臓と自分の体にも引力は働いている。ラーメンマンはプリズマンの心臓の引力を活性化させることで地球へと飛んでいったんだ」
「天然の宇宙船ってワケだな」
「コーホー」

「テヤッ」
 虹色の流星と化したラーメンマンが着地したのはイタリアのデルモンテ城。
 プリズマンとマリキータマンが戦った八角形リングである。

「キョキョキョ……来たかラーメンマン」
「プリズマン……」
「オレが勝って当然の試合をメチャクチャやってぶち壊しにしてくれやがって……キョキョキョ……だから……あのテントウムシ野郎もメチャクチャにぶち壊してやってくれや……」
「ああ」
 プリズマンが震える手をラーメンマンに差し出す。
 握りしめるラーメンマンの手は厚く、熱い。
 プリズマンが事切れるまで、ラーメンマンは手を握り続けた。

「キャミキャミ、なるほど……何がしたかったかと思えば……」
 身長は僅かにマリキータマンの方が高いが、誤差のようなもの。
 リングの中央でマリキータマンとラーメンマンが対等の目線で向かい合った。

「プリズマンは一芸超人と呼ばれたことに気を病んでお前を呼んだということか、1000万の技を持つと呼ばれる超人、ラーメンマンよ」
「それだけの単純な理由ではない、プリズマンは私と戦い、私に戦いを任せるだけの理由を得たのだろう……その信頼を私達は友情と呼ぶ」
「キャミキャミ、なるほど……オレ達の求めるものだ」
 互いが互いを見据える。
 目に見えぬ視線がぶつかり合い、熱を起こす。
 陽炎のように空気が歪んだ。

『おお~~っと!!!流星のごとくに現れたラーメンマン、マリキータマンと一触即発の雰囲気だ~~~!!!』
「待てーいっ!」
 今にもぶつかり合わんとした二人を画面越しに制止するのはハラボテ・マッスルである。

「この五大城決戦はあくまでも同時対抗戦、キン肉マン対パイレートマン、そしてスーパーフェニックス対アリステラの試合が終わっていない以上、宇宙超人委員会としてその戦いは認められん!なによりマリキータマンはたった今試合を終えたばかり、公平性の観点からも問題があるわ!」
「キャミキャミ、オレにプリズマンとの戦いで負ったダメージは無い……何より、プリズマンとの戦いで得るものがなかった以上、今すぐにでもラーメンマンと戦いたいのだがな」
「……キョキョキョ、マリキータマンよ……だったらテメェの望みはすぐに叶うぜ……」

「な、なんなんじゃこれは~~~~~~~~~~~!!!!」
 その時、スワローズ・ネストで戦うキン肉マンの叫びが画面越しに響き渡った。
 彼が悲鳴を上げるのも当然のことだろう、スワローズ・ネストが地響きを上げ、突如として宙に浮かんだのである。
 いや、スワローズ・ネストだけではない。
 スーパーフェニックスが戦う、安土城もまた浮かび上がったのである。

「お前がオレの心臓にパワーを送り込みやがるもんだから、超人万有引力の法則が働いて今戦ってるリング同士が引き合ってんだよ……リング同士がくっついちまえば……当然」
「試合は仕切り直しにせざるをえんじゃろうな」

 その時、スワローズ・ネストと安土城が軌跡の融合を果たし、二つのリングは一つに繋がった。

「五大城決戦、残りの二戦は引き分けで一時決着!改めて……」
 ハラボテ・マッスルが次の言葉を紡ごうとした瞬間、オメガマン・アリステラがキン肉マンへと襲いかかった。

「ならば、このままキン肉マンとスーパー・フェニックス、そしてオレとパイレートマンのタッグで戦うまでだ!」
「何ぃ~~~~~~!?」
「渡りに船と言わざるを得ないだろう、オレがもともと戦いたかった男が目の前にいるのだからな」
「い、いや……待て、そうじゃ!フェニックス!!お前がいれば百人力じゃい!私とタッグで戦ってくれ!」
「……いや、キン肉マンよ。タッグを組むことは出来ない」
「なんでじゃ~!?」
「だが、せっかくのリングだ……このオレがお前達二人を相手にしてやろう」

『なんということだ~~~!!!キン肉マンスーパー・フェニックスから掟破りの一対二宣言が飛び出しました!』

「キャミキャミ……ということは五大城決戦は仕切り直し、オレとラーメンマンの試合を始めても構わないということになるな」
「ま、待て~~い!試合を再開するだの再開せんだの、一人で戦うだの、私が置いてけぼりで仲間はずれはないか~!ラーメンマン!何とか言ってやってくれ!」
「キン肉マンよ」
「なんじゃ!」
「そのリングに残って戦いを続けるんだ。フェニックスは未だお前に対して罪の意識を背負っている。ならば、フェニックスの罪の意識も二人の相手も……そのリングでまとめて相手に出来るのはお前だけだ」
「ラーメンマン……」

「とりあえず私は……目の前の相手に集中しなければならないようだからな」
 キン肉マンの画面越しの声を背に受けて、ラーメンマンはファイティングポーズを取った。
 それと同時にマリキータマンが構える。

「ええい……予想外のことばかりじゃが……ノック!」
 ハラボテ・マッスルの隣に控えるノックが、ハンマーを構えた。
 
「試合開始じゃ!」
 ゴングの高らかな音色が響き渡った。
 瞬間、鎖から解き放たれた獣のようにラーメンマンとマリキータマンは駆けた。

「キャミッ!キャミッ!キャミッ!」
「チャターッ!」

『おおーっと!マリキータマン初手から容赦ないパンチの連打だーっ!ラーメンマン、それを回避しつつ!ローキックを見舞うー!』

「ラーメンマンよ、甘いローでオレを打てると思ったのならば、見込み違いも甚だしい。オレは超人ボクサーではない……当然、蹴り対策も完璧だ」
『マリキータマン、ラーメンマンのローキックを膝で受け、ラーメンマンを殴りつけるーっ!華麗な一撃ーっ!からのラッシュに入った!』

「キャミッ!キャミッ!キャミッ!キャミッ!」
「ッチャァーッ!アタッ!ワタッ!ホアッ!」

『一撃、二撃、三撃と打ち込まれていくマリキータマンのパンチ!だが、ラーメンマン……マリキータマンのパンチの隙を縫って、逆に手刀の乱打を見舞っていく!両者躱す!両者打つ!両者躱す!両者打つ!打撃戦では互角かーっ!」

「テャァーッ!」
『打撃戦ではキリがないと見たか、ここでラーメンマン伝家の宝刀、レッグラリアートを見舞った!』
「シェルタリング・ピューパ」
『だが、ラーメンマンのレッグラリアートが全く効いていない!これは一体どういうことなんだ~っ!?マリキータマンの全身を分厚い膜のようなものが覆っている!これはまるでマリキータマンを包む全身鎧のようだーっ!』

「グァ!」
『勢いよくレッグラリアートを放ったラーメンマン!突然のマリキータマンの奇策に負傷!マリキータマン、まるで成虫になる前のサナギのようになってしまった!』

「ならば……っ!」
『おおっと!ラーメンマン、サナギのマリキータマンの背後を取り、キャメルクラッチで捕らえようとするが――ピクリとも動かない!』

「この状態のオレに技を極めるなど、岩に技を仕掛けるようなものだ」
「グォーッ!」
『マリキータマン、サナギの状態のまま、後ろにヘッドバットを放ったーっ!自身の背後を取ったラーメンマンに対する強烈なカウンターだーっ!』

「どうした、ラーメンマン。早く見せてみろ。状況を打開するあの力を。それとも寝かされて、何の技術も発揮できぬまま、死ぬか」
『マリキータマン、そのままラーメンマンに馬乗りになり、パンチの連打だ!硬く重い拳が何発もラーメンマンに突き刺さっていく!』
「岩に技を仕掛けるようなもの……さっき、そう言ったなマリキータマンよ」
「キャミャッ!」

『おおっとラーメンマン、頭を振りかぶり辮髪でマリキータマンを打ち付けた!そのまま脱出……しない!何を考えているラーメンマン!?己の掌をマリキータマンに当てたぞーっ!?』

「だが、魔雲天にサンシャイン、そしてキング・ザ・100トン……テリーマンはその岩に技を掛けるような戦いを何度も行ってきたのだ。私が諦めるわけにはいかないな!」
「キャ……キャミャ~ッ!?」
『なんと、マリキータマン!ゼロ距離からの掌打で真上に吹き飛ばされた~!?』

「超人拳法の技の一つ発勁、その掌打は内部を破壊する……そして!」
『ラーメンマン!打ち上げたマリキータマンの両膝をキャッチした!』

「超人の一念岩をも通す~~~~!!!!」
『これはキャメルクラッチと対を成す必殺技!九龍城落地だぁ~~~~~!!!!』
「マリキータ・モルティングーーーー!!!」
『だがマリキータマン!空中で脱皮し、九龍城落地から逃れたぞーっ!さらに……飛翔し、ラーメンマンを背後に捉えたーっ!!』

「なにっ!?完璧に捉えたはず……?」
「昆虫は成虫になる過程でサナギの中でドロドロに溶ける……つまり、お前が技を掛けたのはあくまでもサナギであって、オレそのものではない……お前のセットアップを外す形で脱皮しただけに過ぎない……そして、ウイングラッピングシャットーッ!」
『マリキータマン、硬い鞘羽の内側に格納されている半透明の後ろ羽にラーメンマンの身体を包み込んだーっ!まるでラーメンマンが透明な薄い繭に囚われてしまったようです!』

「ホアッ!タッ!タァーッ!」
『ラーメンマン!抵抗するも破れないーっ!このままサンタクロースに担がれた袋のように、マリキータマンの羽の中に担がれて落とされるのでしょうか!?』

「ウイングラッピングブレーンクラッシャー!」
『マリキータマン、ラーメンマンを己の羽に閉じ込めたまま、鉄柱にラーメンマンの頭部を打ち付けるーっ!!』

「打った感覚がないだと!?」
 思わず驚愕の声を上げるマリキータマン。
 それも当然のことだろう。

『いや……マリキータマンの後羽が破れている!!ラーメンマン脱出していたぞーっ!?』

「烈火太陽脚ゥーッ!!!!」
「キャミャッ!」
『動揺したマリキータマンの胴体にラーメンマンの飛び蹴りが突き刺さったーっ!!』

「どうやって、オレのウイングラッピングから脱出した」
「昆虫の羽はキチン質と呼ばれる、甲殻類の殻や昆虫の外骨格と同じ成分で出来ている……そしてそれらの生物はキチン質を作り出すと同時にキチン質を分解する酵素を作り出すことが出来る」

「一体それが何だってんだ……?」
 マッスルガム宮殿のブロッケンJrが疑問の声を上げる。
「なるほどな……」
 その一方でテリーマンが頷く。
「昆虫がキチン質分解酵素を作り出すのは脱皮の際だ、そしてマリキータマンはさっきラーメンマンに自身が脱皮する様子を見せていた。動物や昆虫の真似をする象形拳はラーメンマンの故郷である中国が本場、当然……ラーメンマンも出来るってわけさ」
「あぁ~~~~!!!ラーメンマンは脱皮の象形拳を行って、マリキータマンの羽を破ったってことか~~~!!」
「コーホー」

「なるほど、大したものだラーメンマン」
 マリキータマンが驚嘆の声を漏らす。
「だが、オレが見たいのはそのような小細工ではなく、お前たちの持つ謎の力だ。そのためにはお前をもっと追い詰めなければならないようだな!ロールシャッハ・ドット」
『おおーっと!マリキータマンの胸のナナホシが一つに混ざり、そして新たなる形を作っていく!』

「ふーむ、これは……顔だな、この帽子、お前が殺めたブロッケンマンか?」
『マリキータマンの胸に浮かぶラーメンマンの深層心理はブロッケンマンの顔が写っているーっ!』

「お前が殺めたブロッケンマンに対する罪悪感を抱えているというわけか……」
「…………」
「ならば……ロールシャッハ・ミメティスモーッ!」
『なんたることだーっ!マリキータマンの顔にあるナナホシがブロッケンの顔を形作っていくーっ!』

「顔を変えただけで……」
『ラーメンマン、果敢に飛び蹴りを仕掛けていった!』

「顔を変えただけ……それはどうかなーっ!」
「ゲホホーッ!」
『おおっと!マリキータマン!ラーメンマンの飛び蹴りに対し、毒ガスの迎撃だーっ!ラーメンマン思わずのたうち回るーっ!』

「これはお前の深層心理を映し出したオレの擬態だ。これはメトキシピラジンと呼ばれる異臭をもたらす成分、本物の毒ガスではない……そして」
『のたうち回るラーメンマンに対し、ブロッケンマンとの戦いを彷彿とさせる猛烈なストンピングで攻め立てるーっ!』

「タァーッ!」
『ラーメンマン、転がるように立ち上がり、そのまま飛び上がってチョップだーっ!』
「チョップ比べと行こうか、ラーメンマン」
『おーっと!ラーメンマンのチョップに対し、マリキータマン……まさかまさかの!?』

「ベルリンの赤い雨ーっ!」
「グォーッ!!」
『なんということでしょう!チョップ対決はマリキータマンが放った予想外の必殺技!ベルリンの赤い雨によってラーメンマンが敗北しました!!』

「オレの実力ならば、お前の深層心理を読み取ればこの程度の技を再現することは十分に可能だ」

「あのヤローッ!!」
 マッスルガム宮殿のブロッケンJrが、何度もサタンの結界を叩く。
 こんなものを見せられて黙っていられるわけがない、しかし無情にもサタンの結界はブロッケンJrの抵抗を受け入れない。

「落ち着け、ブロッケンJr」
「ウォーズマン」
「ラーメンマンがあのような偽物に負けるわけがない、お前はどっしりと構えていればいい」

『文字通り、ラーメンマンにチョップの雨が降り注ぐーっ!ラーメンマン!必死で回避しようとするが、あまりのラッシュに避けきることが出来ない!』
「キャミ!キャミ!キャミャミャ~ッ!!お前の真の力を見せてみろ!!」
「ムグゥ~ッ!」
『まるでサンドバッグ状態!打たれるがままだ!ラーメンマン!』

(侮っていたわけではない……だが、恐るべき相手だマリキータマン!)
「テャァーッ!」
「キャミャッ!」
『ラーメンマン、延髄斬りで反撃に転じる~っ!そのまま反撃の……』

「キャミャミャ~ッ!!」
「ヌワァ~ッ!!」
『ここでマリキータマン、毒ガスを繰り出す!!一切隙がないぞ!!』

「お前の力を見せる気が無いというのならば……」
『マリキータマン!ラーメンマンに背を向け……』
「ミミックニードル」
「グェァ~ッ!」
『背の棘でラーメンマンを刺し貫く!』

「ここで死ぬがよい、ラーメンマン」
『ここでとうとうラーメンマン、ダウンだ~!』

「ラーメンマン」
 倒れ伏したラーメンマンの中にいくつもの声が響く。
 己の名を呼ぶ声だ。

「ラーメンマン」
 プリズマンの声。
「ラーメンマン」
 ブロッケンJrの声。
「ラーメンマン」
 キン肉マンの声。
「ラーメンマン」
 そして、ブロッケンマンの声。

 ブロッケンマンはラーメンマンの名を呼ぶだけだ。
 それ以外のことは何も言わない。

「ブロッケンマン……我が最大の強敵よ、アイツは手強いな。だが……お前ほどではないよ」
 人が聞けばうわ言としか思わないだろう。
 だが、ラーメンマンは確かにブロッケンマンと会話を行っていた。

『ラーメンマン!血塗れになりながらも立ち上がった~っ!!』
「キャミャッ!そうでなくてはラーメンマンよ、さぁお前の力を……」
『だが、マリキータマン!ラーメンマンに対して容赦ない毒ガス攻撃を吹き付ける~っ!』

「ベルリンの赤い雨!」
「「なっ」」
 驚きの声を上げたのは、マリキータマンだけではない。
 この試合を見ているブロッケンJrも同様である。

『おおっとラーメンマン!!掟破りのベルリンの赤い雨でマリキータマンの毒ガスを切り裂いた~っ!!その手は光り輝いています!!』

「私のブロッケンマンに対する思いは罪悪感などではない……最高の対戦相手に対する尊敬と感謝だ~~~!!!」
『ラーメンマン、そのままマリキータマンを飛び越し……キャメルクラッチを極めた~~!!!』

「シェルタリング・ピューパ」
『だが、マリキータマン!キャメルクラッチを掛けられた体勢のまま、再び蛹化したぞ~っ!?』
「甘いなマリキータマンよ、既に岩に技は……掛かっている~っ!!」
『ラーメンマン、何たる力か!まるで鎧のようなマリキータマンの身体をみしみしと軋ませている!』
「そちらこそ甘いな、ラーメンマン。オレが脱皮して再び技から抜け出すことが出来ることを忘れたか!?」
「出来るものならば、してみるが良い。脱皮はサナギの背を割るもの。お前の背は私が完全に捕らえている」
「甘いのは……そっちだ~!」
『おおっと!!マリキータマン!!サナギの正面から抜け出て、ラーメンマンのキャメルクラッチから逃れた!!しかし……その肉体は不完全な作りかけのものだ~っ!』

「キャ……キャミャッ……オレには覚悟がある……このような姿になっても」
「マリキータマンよ、今度は私がお前を占ってみせよう」
『一体何をする気だラーメンマン!?脱皮したマリキータマンのサナギを猛烈な摩擦で熱を加えていくぞ~っ!』

「亀卜という占いがある、亀の甲羅に熱を加えてその形で運勢を占うものだ……この形は……」
『マリキータマンのサナギに熱が加わって……浮かび上がったのはアリステラの形だ~っ!』

「占ったから何だと言うんだ~っ!!」
「これはお前の深層心理を表す……これはオメガマンに対する友情、ではない。依存の気持ちだ!」
「依存だと、キャミキャミ、笑わせるな~っ!」
「共に地獄に堕ちることを友情とは言わない」
『マリキータマン、ラーメンマン、共に駆け……リングの中央で激突した~っ!』

「キャ、キャミャ~ッ!」
『マリキータマン、ラーメンマンのキックで蹴り上げられた~っ!ラーメンマン、そのまま再び、九龍城落地のセットアップに入った~っ!』

「ま、まだだ……まだ脱出の余地は、キャッ……キャミャッ!」
『おおっと!!マリキータマン、蛹化出来ないぞ!?』

「私はかつてモンゴルマンとして霊名木のマスクをつけていた……そのためか、汗に植物の成分を含むようになってしまってな……今、私からは虫が嫌いで嫌いでたまらないエッセンシャルオイルが流れている」
「ま、まだだ……まだオレはアリステラのために……」
「羽化に失敗したお前では耐えきれない……だから、マリキータマン……」
「まだだ!まだ!」

「お前は負けていい、後はキン肉マンに任せておくが良い」
カン!カン!カン!カン!

『決まったぁ~~~~~~~!!!!!数多の技を持ったマリキータマンでしたが!!千万の技を持つラーメンマンの必殺技、九龍城落地によって沈みました~~!!』

イタリア・デルモンテ城
正義超人軍
○ラーメンマン(九龍城落地)マリキータマン●
              オメガ・ケンタウリの六鎗客

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