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こんなに儚く可憐で愛らしい生き物を俺は知らないし。

一体いつまでその姿でいてくれるのかも、経験するしかないだろう。

そんなもの経験したくはない。





金を貯めてようやっと買った。この剣。

「さっきまでは俺のことを対等と思っていたでしょ?」

本当なら絶望してションベン漏らして命乞いしてみてみてもいいのに。このブヨブヨ共はまだヘラヘラ笑っていやがる。

「両断!!」


時計を見ると短い針が2を指していて普段のルーティーンならもうとっくに睡眠していなければ明日の仕事に支障が出る瀬戸際まで追い込まれていた。

でもだって。俺としては現状、其処らの邪魔をしてくる雑魚共を成敗しただけでまだ何も成すべきことをしていない。そもそも成すべきことがあるのかどうかも終始疑問に思っているし。人々に促されるがまま「迷子森」に巣食う「子喰い狸」を討つ。事実関係は知らないけど討つ。

時刻は午前3時を回ろうとしていた。息子達が寝ている2階の寝室からは物音一つ聞こえない。

と思ったら妻がドカドカドカ階段を降りてくる音が聞こえてくる。

「母狸」が現れた。俺は目を閉じて祈った。




#小説 #書いてみた

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