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遠くへ行きたい

二十歳くらいのころ、誰も知る人のいない遠い国で、いま本当にひとりぼっちなんだな、と思った時のことを今でも時々思い出す。携帯電話もない時代で、どうやって日本に電話をかければよいのかも分からなかった。私がここにいることを家族も友達も誰も知らない。あの圧倒的な孤独感。

心臓がきゅんと音を立てそうなくらい心細かったのだけれど、その気持ちとじっと向き合っているうちに、自分の中に何か新しい力が湧き上がってくるような不思議な感覚が生まれたことも、鮮明に覚えている。

たぶんその時、大人になる覚悟を決めたのだと思う。

海外どころか帰省もできないこの頃。バーチャルツアーで遠くに行った気持ちになるのは楽しい。けれど決してあの時のような気持にはならない。

もちろんそれは、私がもう二十歳じゃないから。なんだけどさ。ふー。


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