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マザリング:ケアが必要な存在を守る

つい先日、念願叶って豆柴の子犬を迎えた。生後60日で環境が変わった彼はとても心細いようで、きゅんきゅん夜鳴きをするわ下痢をするわ。全く目が離せなくて寝不足が続いている。何を隠そう子育て未経験のワタシ。なんだかすこーし甘酸っぱい気持ちでこの新しい小さな家族のお世話をしている。自分が守るべき小さな命が腕の中にいるという、不思議な感覚。

お迎えの日。ブリーダーさんのところに向かう早朝の電車で「マザリング」というコトバに目が留まった。中村佑子さんという映像作家の著書「マザリング 現代の母なる場所」の紹介記事だ。

 私は「母」に代わる言葉をずっと探していた。そして、出会った言葉に「マザリング」があった。「マザリング」とは、オックスフォード現代英英辞典によれば、「the act of caring for and protecting children or other people」つまり「子どもやその他の人々をケアし守る行為」という意味である。「マザリング」は性別を超えて、ケアが必要な存在を守り育てるもの、生得的に女性でないものや自然をも指すという。 
(「マザリング 現代の母なる場所」 中村佑子著 まえがき より)

マザリングとは、女性が子どもを身ごもり育てることに限定されない、子供を産まない女性にも、男性にも開かれた概念だそうだ。性別を超え、ケアが必要な存在を守り育てることを意味する。

紹介記事を書いた田中俊之氏は、育児だけではなく、介護や看病で他者に寄り添った経験があるひとは、マザリングの重要性を理解するだろう、と述べている。田中さんが共感するのは、中村さんの指摘「私たちのいる社会は、健康な人が健康に働けることしか前提になっていない」という点だ。

一方で、社会の中心に位置する男性には、その意味と意義が捉えきれない可能性がある。考えてほしい。なぜ、自分自身の痛みにすら耳を傾けず、鈍感でいられるのか。多くの男性がこの問題から目を逸らして生きている。
(2021/2/20 日本経済新聞 「母になる」意味 社会的に考察 田中俊之著)

ケアを必要とする存在を皆で守り育てることのできない社会への問題提起。最近のニュースを思い起こすだけでも、複雑な気持ちになる。小さな家族を迎えに行く電車の中でこの記事を見つけた。この偶然に、なんだか不思議なつながりを感じたりもする。うまく説明できないけれども。


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