翼を守ろう

そんなに立派な娘さんを、どうやって育てたのですかと問われたマララさんのお父さんは、彼女の翼を折らないようにしました、と答えたそうだ。

過酷なイスラム社会に生きるマララさん。彼女が直面している状況とは比べ物にならない恵まれたところに私はいると思う。それでも心が折れそうになることは、ある。

仕事で必要に迫られて、あれこれスピーチ動画を見ていた時、偶然に辿り着いた上野千鶴子先生の東大入学式の祝辞スピーチ。話題になったので内容は知っていたけれど、改めて肉声で全内容を聞いて胸を打たれた。

フェミニズムは、女性が男性のように振る舞おうという話ではないのだ、と上野先生は明確に述べておられる。大切なのは、弱者は弱者のままで尊重される社会であることだと。

能力に恵まれ、恵まれた環境で翼を伸ばして成長した結果、東大の入学式という晴れの場にいる若者たち。「頑張れば報われるとあなた方が思えること自体、恵まれた環境があったからこそ」「その力を、恵まれない環境にある人たちのために使って欲しい」

そして「あなたたちがこれから生きていく正解のない問いに満ち世界」を生き抜くために、未知の世界に飛び出し、多様な異文化と接し、新たな知を生み出すメタ知識を身につけよ、と。厳しくもあたたかいメッセージだ。

「ちゃんと自分の頭で考えなさい」私が子供の頃、母は口癖のように言っていた。今になってみると、母は私の翼を鍛えようとしてくれていたと思う。マララさんも、東大新入生も、私も、そんな思いに育てられたのだろう。

大切に守られ育てられてきた自分の翼を活かそう。
そうして、未来を担う子供たちの翼を守ろう。


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