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とかくに人の世は

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通とおせば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

夏目漱石の草枕。あまりに有名な書き出しの一節だ。

論理的にやろうとすると他人とぶつかってしまうし、かといって人の気持ちばかり気にしていると足をすくわれる。意地を張っても窮屈な思いをする。人の世というのは、まあなんとも住みにくいところだなあ…ってね。

まあ確かにね、今も昔もおんなじね、って話なんだけれど、漱石は少し違う視点で見ていたみたい。

曰く「住みにくいなあって気持ちが高まってくると、どこかもっと気楽なところに引っ越してしまいたくなるけれど、どこに行っても同じことだと分かった時に芸術が生まれる。」

生きるって苦しいこともあるけど、でもせっかくだから、少しでも楽しめるようにしていこうよ、ってことかなあ。

「人生は死ぬまでの暇つぶし」なんて言葉もある。せっかく戴いた暇があるのだから、楽しいことや誰かの役に立つことに使いたい。ただ暮らしているだけでも、毎日いろんな発見がある。

夏が終われば空が高くなって、しばらくすると金木犀が香る。風が冷たくなって、今夜は鍋にしようかなぁなんて思ったりする。季節のある国に暮らしていることの幸せ。日々の小さなことたちがみんな、いとおかし。さて、今日は何をしようかな。


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