【詩】教室

五年前に交わした約束をまだ口の中に残していた。さすがに発酵してしまった。内部からこみ上げてくる腐臭に我慢しながら、届けたくて、届けたくて。おとなしく影になり、おかげで静かだという称号を得たことに、ちっとも満足はなかった。どちらかといえば不満。ズタズタと内臓の内壁を削り、掘削された石油で動いていた。枯渇したのは三日前だった。内部に動力源を失った肉体は弱弱しく悲鳴を上げたきり、ほとんど臨死状態になったのに、頑丈に閉ざされている口の扉を閉ざしつづけるためのエネルギーを優先的に確保していた。教室という一神教を死骸にするための言葉を、歯と歯の間にセットしてある。いつでも全面戦争を開始することができた。教室はただそこに岩石のように無言で立ち尽くしている。どんなに脅しても無反応だった。欲を言えば交渉をしたかったけど、交渉するための言葉をどこかに忘れてきてしまった。

ひかり
に照らされてるのは周辺

伸ばした手を
焼けただれそうな痛みが

全裸の死骸
やめて見ないで
見られたくないものが
いっぱい
詰まってるから

規制線のむこうに転がってる黒い死骸を、好奇心に満ちた教室の目がマシンガンのように銃撃している。焼けただれた口がきつく閉ざされているのを見て、その中に入っている言葉を解剖したくなった。でも、もう、わかってた。銃弾なんか、詰まってなかったんだね。誰かを笑わせるために思いついただけの、ちょっとしたジョークを、何年間も、口の中で我慢していたんだね。違うの?