【日記】直木賞を受賞する前から、佐藤究の鬼才ぶりには気づいていました
こんにちは、山本清流です。
先日、佐藤究さん(先生のほうがいいのかな?)の『テスカトリポカ』が直木賞を受賞しました。
すでに『テスカトリポカ』を読んでいた僕としては、すごく嬉しいニュースでした。
書店に出かけてみると、『テスカトリポカ』はもちろん、『QJKJQ』や『Ank:a mirroring ape』、『サージウスの死神』も並べられていて、
大きく宣伝されているのが、感無量です。
直木賞を受賞する前は、書店に並んでいないことも多かったですし、
傑作に違いない『テスカトリポカ』を扱っていない書店もあった中で、
ついに世間が気づいてくれたのだな、という思いです。
僕は、以前から、「この人はとんでもない」と気づいていました。
佐藤究作品との出会いをちょっと回顧してみたいと思います。
あれは、たしか大学一年生の終わりのころでした。
またしても友達をつくるのに失敗した――というより、つくる気がなかっただけかもしれませんが――僕は、
孤独と自己嫌悪な日々を過ごしておりました。
その中、偶然に手に取った『QJKJQ』。江戸川乱歩賞を受賞した作品だったので、
堅苦しいやつかな、とあまり期待していなかったのですが、
電車の中、読み始めた瞬間に、衝撃を受けました。
流れるように頭に入ってくる文章、スタイリッシュな雰囲気、ダークなユーモアにあふれた、この愛おしい世界。
僕はほとんど目が離せなくなり、ノンストップで読み続けました。
あのとき、僕の頭はかなり興奮していました。
硬くてごつごつとした現実にぶつかっていた僕は、
『QJKJQ』の、現実を嘲笑うかのようなポップさと浮遊感に魅了されてしまいました。
こんなの、書いていいのか? とは思いました。
このような作品が世に出されれば、非難の声があふれるのではないか、と心配もしました。
しかし、なによりも間違いがないのは、たしかに「面白い」ということでした。
倫理的に問題になりそうなところはあるのだけれど、だからこそ、すごい吸引力で惹かれました。
あのときの僕には、『QJKJQ』がドンピシャだったんです。
同じころに出会った『江戸川乱歩傑作選』と恒川光太郎の『秋の牢獄』をくわえて、
この三冊は、とても大切な本になって、それから長い間、タイトルを見るだけで幸せでした。
「文学が人を救う」というのは、まさに、あのときの感覚を言うのかもしれません。
少なくとも、僕は、人生に楽しみが増えたことが嬉しくて、救われました。
かなり個人的な話になってしまいましたが、
それ以来、僕は佐藤究作品に惚れ惚れしています。
とくに、『Ank:a mirroring ape』はお気に入りです。
直木賞を受賞したことで、いろいろな書店に並べられるようになったと思いますから、
この機会に、ぜひ。おすすめします。
読んでいただき、ありがとうございました。