【独学】ミクロ経済学の勉強ルートとアドバイス

 みなさん、ミクロ経済学に興味はございませんか?

 僕は、大学生のときにミクロ経済学の面白さに気づき、独学で勉強してきました。

 そんな自分の経験を踏まえながら、ここでミクロ経済学の勉強ルートについての一案を紹介したいと思います。(僕は高校卒業時の偏差値が50くらいでしたので、それくらいの方向け)

 ここで対象としているのは、公務員試験のためとか、大学院に進むためとか、そういう勉強をしたい方ではなく、ただ知的好奇心を満たしたい方です。

 何を隠そう、僕は試験にはあまり興味がないし、そもそも公務員とか大学院とかを目指したことはないので、そういう方面の勉強はよくわかりません。

 ただ、新しいことを知って、社会のメカニズムを理解して、へぇ! となりたい、そこのあなた。

 そう、あなたです。

 とある有名な経済学者は、経済学者に必要な資質として、温かい心と冷静な頭脳、と表現しました。

 みなさんにはもう温かい心があるわけですから、そこに冷静な頭脳を追加すれば、たちまち経済学者になれます。

 さあ、一緒にアマチュア経済学者になり、社会問題を冷静に議論しましょう!


 【経済学入門】

 まずは入門書です。

 いきなりミクロ経済学を勉強しても問題はありませんが、

 まずは経済学一般を学んでミクロ経済学の位置付けを理解したほうがいいかと思います。

 そこで、まずは経済学全体の入門書です。

 検索すればたくさん出てくるように、いろいろな入門書があります。

 評判のいい入門書ならなんでもいいと思いますが、僕が勉強したのは、『マンキュー入門経済学』です。

 これはたいへん説明が丁寧なので、とても重宝します。

 大学ではこれがスタンダードな入門書のようです。

 とりあえず、経済学ではこんなことをやっているのだな、ということがわかります。

 現代の主流派経済学にはミクロ経済学とマクロ経済学があり、その二つの分野のイメージをざっくりとつかめればいいでしょう。

 細かいところは理解できなくても落ち込まないでください。

 内容が難しいわけでも、あなたの理解力が乏しいわけでもありません。

 ただ、経済学の独特な考え方に慣れていないだけです。

 一読したあとでちゃんと理解しているのか、不安がある場合は、何度も読み返してもいいです。

 丁寧に書いてあるので、何度も読んでいれば、徐々に把握できるようになります。

 また、日本人のような道徳的な国民のみなさんの耳には、少々議論が非道徳的に聞こえる箇所もあるもしれません。

 そこにこそ、科学としての客観的な視座があります。

 経済学者がときどき失言をするのはそのせいだろうし、大学の先生でも感覚のずれている方がいらっしゃいました。

 それは彼らがサイコパスだからではなく、彼らが科学者として冷静に社会を見ている証拠なので、あまり気にしないでください。

 経済学では人間を美化することはないし、そもそも人間に対して価値的な評価はしません。


 【ミクロ経済学の入門】

 さて、続いて、ミクロ経済学の入門書です。

 これにも優れたテキストが多く、検索すればスティグリッツとか、クルーグマンとか、たくさん出てくると思います。

 僕が勉強したのは、レヴィットのミクロ経済学です。

 基礎編と応用編があり、合わせると1000ページを超えてしまいますが、かなりオススメ。

 現実のデータがたくさん出てくるので、理論と現実の関係が明快であるうえ、

 出てくる設定がとてもユーモラスで、読んでいて楽しいです。この人、小説家としての才能もあると思います。

 長すぎて説明が丁寧すぎるので、頭のいい人にとっては冗長かもしれませんが、

 多くの人にとっては、これくらい丁寧であったほうが適切だと思います。

 読み方としては、何度も再読するのがいいでしょう。

 よほど頭がよくない限り、すらすらと理解するのは、はなから諦めたほうがいいかと思います。

 書いてあることはべつに難しくはないのですが、慣れていないと、難しそうに見えてくるのです。

 だから、一読で終わらせようとするのは無謀ではないか、と。

 補論として微分が出てきますが、数学が得意でない場合は、これは読み飛ばしていいです。

 最初から微分まで手を伸ばすと、負担が大きいので。



 さて、ここで、みなさんの勉強をスムーズにするために、ミクロ経済学の全体像をちょっと紹介します。

 レヴィットに限らず言えることですが、大概のミクロ経済学のテキストは二部構成になっています。

 まずは、価格理論を、そのあとでゲーム理論や情報の経済学を、という流れが一般的です。

 まず、価格理論では、理想的な市場(完全競争市場)について学びます。

 先に結論を言ってしまうと、完全競争市場における資源配分は効率的である、ということを学びます。

 これは長い経済学の歴史の中で数学的に証明された事実であり、経済学でとくに重要な事実です。

 (しかし、テキストのレベルによっては、そこまで踏み込まない場合もある。レヴィットのテキストでは、基礎編で完全競争市場を説明し、その効率性の証明は発展編の一部として載っている)

 あなたは共産主義者かもしれないし、市場原理主義者かもしれませんが、どうあれ、この事実は変わりません。

 (しかし、これを、資本主義はよい方法だ、というように理解するのは明らかな拡大解釈なので、注意が必要です)

 価格理論は、主に上記の最終目標を理解するためのものであり、

 それを理解したうえで、でも、市場がうまくいかない場合もあるよね、という展開でゲーム理論や情報の経済学が始まります。

 この展開は、ミクロ経済学の発展の歴史と同じ流れであり、この流れを意識すると頭が整理しやすくなるかと思います。



【ミクロ経済学を極める】

 さて、ここまで勉強すれば、ついにあの名著に挑むことができます。

 経済学部出身の方ならご存知かもしれません。とても有名なテキストがあるのです。

 それは東大の著名な教授が東大での講義資料を基にして書いたミクロ経済学の中級書であり、

 しかも、数学に対する知識はほとんどなくてもミクロ経済学の奥深くまで踏み込めるようになっています。

 その名は『ミクロ経済学の力』です。

 このテキストは、ほかのテキストに比べればとてつもなくわかりやすいし、面白いです。

 だからといって、読むのが楽だというわけではありません。

 厳密な数学は出てきませんが、数式処理や数学表記は出てくるので、それらの議論に根気よく付き合わなければ置いていかれます。

 最初から5回くらいは再読することを想定していたほうがいいかもしれません。

 証明などのところは難しそうに見えて嫌になるかもしれませんが、

 そこは頑張って、ゆっくりと議論を追っていきましょう。

 ちゃんと議論を追っていけば、いつか理解できます。理解できたときは、本当に興奮します。

 論理を読み解くのに大変なところも多いですが、それは何度も読んでいるうちに解消します。

 また一方で、議論についていけなくなってしまう原因としては、そこまでの議論を忘れてしまうこともあるでしょう。

 小説を読んでいるときに、あれ、この人誰だっけ、となるのと同じです。

 それも、やはり何度も読んで、頭の奥に染み込ませていけば、解決できます。



 このテキストの冒頭にも書いてあるとおり、

 公務員試験などは暗記によって突破されているところがあり、このテキストの内容をちゃんと理解していない官僚もいますし、

 マスコミでもあまり理解していない人がたくさんいます。

 ここに到達すれば、間違った情報を書き続けているニュース記事や、堂々と間違いを主張するコメンテーターなどを鼻で笑うこともできるかもしれません。

 しかし、あなたは温かい心の持ち主です。

 心の中だけで、こっそりと笑ってあげましょう。




 【さらに進むには数学】

 とりあえず、『ミクロ経済学の力』を理解していれば、

 もう十分にミクロ経済学には慣れ親しんでいることになります。

 そして、おそらく、そんな人間は現代の日本では稀有な存在だと思います。

 ほとんどの人間はここまで辿り着かないので、おそらく一生、経済の学問的な議論にはついていけないし、

 なんとなく易しく書いてある啓蒙書や、池上彰さんの説明に頼るので、精一杯でしょう。

 しかし、ここまで到達していれば、経済モデルの議論にもついていけるし、

 たとえば、いま話題のベーシックインカムなどについても、直感的な議論ではないところまで踏み込めるでしょう。

 それは大きな進展です。

 算数ができなければお金の計算ができないのと同じです。

 ミクロ経済学を理解していない人には到達できない思考領域に入っているのです。

 ちょっとくらいは、胸を張ってもいいかもしれません。

 ここよりもさらに進むためには数学の勉強が必要ではないか、と僕は感じています。

 なので、また気分が向いたときに数学を勉強しようかな、と思います。

 知的好奇心のための勉強は、目標の期限がないので無理をする理由がなく、気分に合わせて進められるので、そこも気楽なポイントですね。

 みなさんも、よかったら自分のペースで、ゆっくりと勉強してみてください。

 以上、ありがとうございました。