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【公開】長編小説『独白』が完成するまで④【執筆について】

 こんにちは、山本清流です。


 2019年の9月に『独白』という小説を書きました。

 登場人物の独白形式で、物語が展開する長編ミステリです。↓

 無料(結末以外)なので、ぜひ。

 

 この小説の創作過程について公開していく企画です。

 ①アイディア、②アイディアを具体化、③プロット、④執筆、⑤推敲の5つのプロセスに分けて、解説します。今回は、④執筆です。

 あくまでも僕の一例ですが、「こんな感じで小説を書いているのか」とイメージできるかと思います。

 はじめから読みたい方は、こちらへ。

 さっそく、創作過程を覗いていきましょう。


 【執筆を進める】

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 プロットをつくったあとに、執筆を開始しました。


 【基本はプロットのとおり】

 基本はプロットのとおりでした。


 プロットで考えた順番、内容を小説としての文章にしていきました。

 プロットが命でした。

 

 【僕の考え】

 プロットの段階で小説はほとんど完成しているかもしれません。


 とくに、『独白』の場合は、プロットが細かかったので、

 単純な作業をしているような感覚が強かったです。


 これは、ひとつの考え方ですが。


 プロットの段階で丁寧に考えて、執筆の段階では思考停止。職人作業。

 そういう戦略もアリでは、と思います。


 【でも、プロットを修正したくなる】

 書きはじめると、プロットに違和感を覚えたりします。

 そういうときは再考し、プロットを修正したりします。


 たとえば。下記は、橋本の遺書の章の、プロットの一部。

 〇自分を壊す、開き直る痛み
    ・カウンセラーの先生に、開き直ってみるという手もある、という提案をされた。そうすれば、自分へのハードルが下がって生きやすくなるし、開き直ってくる相手に対しては攻撃もしにくい。お前はクズだ、っていうのを婉曲的に言ってくるわけだけど、そのときに、そうなんだよ、クズなんだよ、って答えれば、相手もそれ以上の攻撃はしにくくなる。が、しかし、それをするのはプライドが許さなかった。やってもいないことを認めることはできないし、自分を下げるようなことをしたら、その弱さにたくさんのハイエナが群がってくるような気がするのである。教室での騒ぎの一件以来、クラスの中では孤立するようになって、周りの子たちがみんな、敵に見えた。ときどき悪口を言われたりして、そのたびに敵対心を強めていた。その中で、自分を下げることは、とてつもなく難しいことだった。あまりにも痛いことだった。どうすることもできず、今に至る。もう方法がない。この短い人生の中で気づいたことは自分が無能であるということだけだった。自分が無能であることを認めることもできないくらいに無能であるということだけだった。ここで書くぶんにはよくても、自分は無能だ、と教室の中で口にすることはできない。もはや、どこにも出口はなかった。

 このプロットを読み返したときに、僕は違和感を覚えました。

 開き直るのはたしかに辛いだろうけど、「開き直る」とか「開き直らない」とか、なんだか、冷静に考えすぎている気がしたのです。


 そこで、橋本の遺書の後半は、ほとんど、冷静な思考を排除しました。

 ぐちゃぐちゃに思考が展開し、激しく感情が入れ替わります。


 そのほうが橋本の遺書には適していると思ったのです。


 そういうわけで、プロットのときに考えた「開き直る痛み」というテーマは深掘りしませんでした。


 ほかにも、たとえば。以下は、渡辺のブログの章の、プロットの一部です。

 〇唯子との出会い
    ・唯子と出会ったのは、小学五年生のときのことだった。やはり、そのときもイジメられていて、なにも抵抗をせずにいた。校舎裏でのことだった。黒子である自分はイジメられても仕方がなかった。それに、黒子であるのだから、イジメられているとき、わざわざ抵抗することもなかった。やめろ、とか勇気を振り絞って言い放つような、舞台上の主人公になるのはひどく疲れる。そんなことをする必要はなかった。と、そのように考えながらイジメられていたところで、不意に、声がかかった。「なにやってんの」。それが唯子だった。そのとき、渡辺は、上半身裸であざだらけだったのだが、唯子が現れてから、洋服をすべて着たのだった。そのことが不思議だった。黒子である自分が羞恥心を持っていることが意外だった。唯子に見られるのがすごく嫌だった。恥ずかしかった。「保健室、行こっか」と誘ってくれる唯子の前から、渡辺は逃げ出したのだった。そんなことはあり得ないことだったのだ。自分のことはすべて諦めているはずだった。やめて。来ないで。僕の前から消えて。そのとき、渡辺は、唯子と出会ったことをひどく後悔した。彼女のせいで、諦観に沈みながら生きることができなくなった。唯子など、消えてしまえばいい、と思った。彼女のせいで、人生が再び苦悩に満ちたものになりそうだった。
    ・やはり、その通りになった。もう、黒子でいることはできなくなった。自分を諦めることはできなくなった。いっそのこと、唯子を殺してしまおうか、という考えが起こった。そうしなければ、この人生はあまりにも苦しすぎた。自分の一つひとつの言動を見て、もっとちゃんとしなきゃ、と考えることが嫌だった。誰の視線も気にしないで生きていきたかった。唯子を殺すことだけを考えながら、しばらくの間、生活は続いた。こんなに苦しい生活は初めてのことだった。

 このプロットにも、違和感を覚えました。

 小学生の男の子で――それもかなり内気な男の子が、上半身裸でイジメられているところを同級生の女の子に見られたら、相当なトラウマになると思ったのです。


 ちょっと演出過剰だ、と思い直し、修正しました。

 本編では、上半身裸という設定を排除しました。


 こんな感じで、執筆の段階では、プロットをそのまま書き進めたわけではありませんでした。

 ときどき気になるところを修正しながら、書き進めました。


 具体的にイメージしていくと、「なんか、違うな」っていうところが、たぶん、いくつも出てくると思います。


 だから、最初から最後までプロットの通りに書く必要はないと思います。


 【表現と社会の狭間で】

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 『独白』を書いたときは勢いだけでしたが、書き終わったあと、「こんな作品を書いていいのか」という疑問を覚えました。


 本編を読んでいただけたら、わかると思いますが、かなり過激な内容です。風刺のつもりですが、読み方によっては、攻撃にもなりえます。


 新人賞で落選した原因は、主に、そこらへんなのでは、という気もしています。わかりませんが。


 【表現したいこと】

 小説を書くとき、なにか表現したいものがあると思います。

 恐怖かもしれないし、幻想的な景色かもしれないし、激しい怒りかもしれません。

 

 中には、幼女への恋心を表現したくなったり、人を殺してしまいたい欲望を描きたくなったりする人もいると思います。


 人間は、あくまでも動物で、社会よりも先に存在しているわけだから、

 社会にそぐわない欲望は誰でも持っているのでは。と思います。


 【それを書いていいのか】

 しかし、それを書いていいのか。そこが難しいです。

 

 僕なりの結論としては、書いていいと思います。実際、『独白』は書いてしまったし。


 あくまで小説なのだから。

 書きたいように書けばいいと思います。


 現在の僕は、そういうスタンスです。


 ※ただし

 世に出る以上、作品への責任を持つことも大切だと感じます。

 表現があまりに不適切であれば、何度も再考するべきかもしれません。


 次回の⑤推敲では、そのへんの難しい問題について取り上げたいと思います。続きはこちら。

 お読みいただき、ありがとうございました。