【詩】嘘
「ねえねえ、なんで、あの人たちは結婚したの?」
「彼らが愛しあっているからだよ」
「じゃあ、なんで、あの人たちは子供を産んだの?」
「それも、彼らが愛しあっているからだよ」
「じゃあ、なんで、あっちの人は天涯孤独なの?」
「愛すべき人を見逃してしまったのかもしれないね」
「なんで、見逃してしまったの?」
「さあ、勇気がなかっただけかもしれない」
「愛しあうためには勇気が必要なの?」
「そうさ」
「やっぱり、頑張った人が幸せになるんだね?」
「そのとおり。頑張れば、幸せになれるよ」
「じゃあ、幸せじゃない人は、頑張ってないの?」
「頑張ってないから、そうなるわけさ」
「ちゃんと勇気を持って、見逃さないで、真面目に生きてれば、いいんだね?」
「そうすれば、きっと、うまくいくだろう」
「でも、ときどき、悲観してしまう。そんなときはどうすればいいの?」
「頑張ればいいのさ。悲観しても頑張り続けることだ」
「頑張ることができるのは、未来に対して悲観してないからじゃないの?」
「そうも言えるかもしれないが、そんなのは理屈の話さ」
「なんか、変だよ。だって、未来に対して完全に悲観してる人が頑張るわけないじゃん」
「ならば、頑張っている人は、少なからず楽観しているとでも言うのかい?」
「でないと、頑張る動機がないでしょ? 頑張れば幸せになれるっていう楽観がないと、頑張らないわけじゃん」
「だったら、頑張ってない人は悲観的に苦しんでいて、頑張ってる人は実は楽観に酔っているということになってしまう」
「それはおかしいよ。だって、頑張っていれば--苦しんでいれば--幸せになれるんでしょ? その考えでいくと、楽をした人のほうが幸せになってしまうことになる」
「じゃあ、その考えが間違っているということさ」
「そういうことか!」
「そのとおり。いいかい。頑張っていれば、幸せになれる。これは嘘じゃない」
「じゃあ、頑張ってみるよ」
「応援するよ。そして、不幸な人を見つけたら、ああ、この人は頑張ってないんだな、って思うだけでいい。それで、すべてが解決するのさ」
「よし! 頑張るぞ!」