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【有益】地の文のつくり方【現在の視点人物+〇〇が基本/その他は詳細説明】

 こんにちは、山本清流です。


 小説を書きはじめて、早くも5年以上が経過。

 5年前の僕に伝えたいことを書き記します。


 いまの僕の心の声は以下のとおり。

 正直、小説の地の文にはテンプレートがあると思う。テンプレートを守りながら書けば、誰にでも書ける。基本は、現在の視点人物+〇〇の組み合わせ。そのほかは、詳細説明や、関連する事柄の説明など。センスなしで、ロジカルに書けば、初心者でも大丈夫なはず。

 ちょっと暴論かもしれないですが、法則みたいなのを見つけたので、共有しておきます。

 さっそく、深掘りします。


 【地の文の作り方】

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 上記したとおり、『現在の視点人物+〇〇』の組み合わせと、その詳細説明です。

 暴論かもですが、地の文って、正直、これだけで充分だと思います。


 【たとえば?】

 とはいえ、急にいわれても、面食らうと思います。


 そこで、三冊、僕のお気に入りの小説を用意しました。

 貴志祐介の『硝子のハンマー』、道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』、東野圭吾の『マスカレード・ホテル』。この三つ。


 この三つの小説の冒頭を見ていきましょう。まずは、『硝子のハンマー』。(行頭字下げしてないですが、小説の本文は字下げされてます)


地下鉄の階段を上がると、眩しい朝の光に包まれた。          沢田正憲は、大きく口を開けて、あくびをした。急に冷たい外気に触れたために、涙で視界がぼやける。                     昨日の晩は、久々に素面のまま眠りに就こうと思っていたのだが、ふとテレビをつけると、水着のグラビアアイドルが大勢、プールでゲームをしているのが目についた。年末恒例の特番の余興らしい。            ブラジャーが取れるのではないかと期待して、画面に見入りながら、ほんの一杯のつもりで泡盛のオンザロックをちびちびと飲り始めたのが間違いだった。いつしか、一杯が二杯、二杯が三杯になり、気が付いたら、一リットル入りのペットボトルを一本空けてしまっていた。

 『沢田正憲は、大きく口を開けて、あくびをした』の文。

 現在の視点人物+〇〇になっていますよね。


 そのあとの文で、「昨夜にテレビを見て、酒をたくさん飲んだこと」が説明されています。『沢田正憲があくびをした』、その理由が、詳細説明として後に続いているのです。


 続いて、『向日葵の咲かない夏』。(行頭一字下げしてないですが、小説の本文は一字下げされています)


油蝉の声を耳にして、すぐに蝉の姿を思い浮かべる人は、あまりいないだろう。雨音が聞いて、雨滴のそれぞれが地面に接している瞬間を想像する人がいないように。                           大抵の人にとって、油蝉というのは――無数の個体が発する声が混ざり合い、重なり合って生まれる、あの濁った、うねるような音のことだ。   そして、僕はその音が嫌いだ。                    どこかおかしい。どこか狂っている。熱い季節になると、僕はいつもあの音を聞いてそう思う。緑の多い公園の脇は、なるべく足早に通り過ぎ、部屋の窓越しにケヤキの並木を睨みつけながら、鳩尾に力を込める。そして叫び出したくなる。どうかその音をやめてくれと。

 『僕はその音が嫌いだ』の文。

 現在の視点人物+〇〇になっていますね。その文の前では、蝉の鳴き声の説明をしていて、その文の後では、「どんなふうに嫌なのか」説明されています。


 続いて、『マスカレード・ホテル』。(行頭一字下げしてないですが、小説の本文は一字下げされています)


電話が鳴った。内線電話だった。十六階のエレベーターホールにある館内電話からだ。                             山岸尚美は、嫌な予感を覚えた。ついさっき、ひとりの男性客のチェックインを済ませた。その客に提供したのは十六階のシングルルームだ。ベルボーイの町田が荷物を持ち、客を部屋へ案内しに行ってから五、六分が経過している。町田は入社一年目の新人だ。何か重大なミスをしたのでなければいいが、と危惧した。

 『山岸尚美は、嫌な予感を覚えた』の文。

 現在の視点人物+〇〇になっていますね。


 そして、そのあとに、『どんな嫌な予感なのか』について具体的に書かれています。詳細説明です。


 以上、見てきたように、「現在の視点人物+〇〇、その詳細説明」が延々と続くのが地の文です。

 たぶん、どの小説を手に取っても同じだと思います。


 【テンプレートを理解する】

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 テンプレートは、「現在の視点人物+〇〇、その詳細説明」。

 これだけです。


 これを延々と繰り返していけば、地の文になります。

 そう考えると、案外、地の文ってシンプルですね。


 もちろん、視点人物以外も登場します。「Aさんが叫んだ」とか「Bさんが肩をぶつけてきた」みたいな文も登場しますが、「それに対して視点人物がどう反応したか」のほうが地の文においては重要だと思います。

 たとえば。

 Aさんが叫んだ。私は両手で耳を塞いだ。Aさんの声は煩かった。鼓膜を破りそうなほどだった。塞いでいなければ、どうにかしていたかもしれない。

 みたいな感じです(下手な例で恐縮です)。


 【ちなみに】

 僕が考えるに。

 会話文は、「視点人物+〇〇」、「会話相手の人物+〇〇」、「会話文」、「会話文の補足説明」。この四つの要素で成り立っています。


 会話文は、ちょっとややこしいですね。またの機会で話したいです。


 さて。脱線したので、話を戻しましょう。


 【テンプレートを理解する】

 わかりやすくするために「現在の視点人物+〇〇」を基本形と呼びましょう。

 上で取り上げた3つの小説の冒頭5ページに登場する基本形の数を数えました。(数え方はいろいろあると思いますが)

〇『マスカレード・ホテル』の冒頭5ページ……18個         〇『向日葵の咲かない夏』の冒頭5ページ……11個          〇『硝子のハンマー』の冒頭5ページ……11個           

 ついでに、地の文の数も数えました。

〇『マスカレード・ホテル』の冒頭5ページ……58文         〇『向日葵の咲かない夏』の冒頭5ページ……52文          〇『硝子のハンマー』の冒頭5ページ……75文

 

ということで、地の文における基本形の比率は、

〇『マスカレード・ホテル』の冒頭5ページ……31%         〇『向日葵の咲かない夏』の冒頭5ページ……21%          〇『硝子のハンマー』の冒頭5ページ……15%

 という結果になりました。

 

 【この結果から推測される仮説】

 つまり、地の文に占める基本形の比率が高くなれば、読みやすくなり、

 地の文に占める基本形の比率が低くなれば、深みが出てくる。


 これが指摘できるのではないかと僕は思います。


 【仮説の補正】

 ついでに、会話文の数も数えました。

〇『マスカレード・ホテル』の冒頭5ページ……30個         〇『向日葵の咲かない夏』の冒頭5ページ……12個          〇『硝子のハンマー』の冒頭5ページ……0個

 ということで、全体における会話文の比率は、

〇『マスカレード・ホテル』の冒頭5ページ……34%         〇『向日葵の咲かない夏』の冒頭5ページ……19%          〇『硝子のハンマー』の冒頭5ページ……0%


 会話文も文として数えて、基本形の比率を計算しなおすと、

〇『マスカレード・ホテル』の冒頭5ページ……20%         〇『向日葵の咲かない夏』の冒頭5ページ……17%          〇『硝子のハンマー』の冒頭5ページ……15%

 という結果になりました。


 全体から考えると、全体の15~20%くらいは基本形にしたほうがよさそうですね。


 もちろん、5ページしか調べてないので、なんら信頼性のないことはご了承ください。


 どんな比率で書いたら、自分らしい小説になるのか、ぜひ研究してみてください。僕も、研究してみます。


 今回はこれくらいで。お読みいただき、ありがとうございました。