【方法】ちゃちゃっと構成を考えるにはどうすればいいか【答え:舞台を四つ、つくればいい】
こんにちは、山本清流です。
今回は、小説の構成について、偉そうに語っていきたいと思います。
構成って、いろいろ方法論があって、覚えるのは大変ですよね。
それらの方法論を駆使しようとすると、さらに難題です。
そこで今回は、簡単に構成を考えるにはどうすればいいか、提案します。
小説版、ハリー・ポッターシリーズを参考に。
要約は以下のとおり。
ハリーポッターシリーズは、ほとんど次のような構成になっている。現実世界→魔法世界→ホグワーツ魔法魔術学校→ラストの舞台。つまり、四つの舞台を順番に並べている。その比率は、だいたい、現実世界(1)→魔法世界(2)→ホグワーツ魔法魔術学校(6)→ラストの舞台(3)である。これを押さえておくと、便利かもしれない。
以下、深掘りしていきます。
【四つの舞台が存在する】
上で見たように、現実世界、魔法世界、ホグワーツ魔法魔術学校、ラストの舞台。この四つです。
ハリーポッターシリーズを知らない人には伝わらないかもしれないので、
とりあえず、『賢者の石』だけ、解説しておきます。
【例:ハリーポッターと賢者の石】
①ハリーは最初、ダーズリー氏の家の物置小屋にいます。そこで普通の少年として生活を送っています。(現実世界)
②しかし、変な手紙が届くようになり、大男が現れて、魔法世界に連れて行かれます。ダイアゴン横丁に行き、グリンゴッツ魔法銀行などに寄ります(魔法世界)
③そして、ついにホグワーツ魔法魔術学校での生活を始めます(ホグワーツ魔法魔術学校)
④最後、賢者の石を守るために、賢者の石が隠されている地下室へと進んでいきます(ラストの舞台)
ハリーポッターシリーズは、全部、こういう構成でつくられています。
【その比率は?】
ハリーポッターシリーズは、若干、ラストが短い傾向にある気がしますが、
一般的な構成術によると、その比率は、
現実世界(1)→魔法世界(2)→ホグワーツ魔法魔術学校(6)→ラストの舞台(3)
になっているはずです。これは三幕構成の比率です。
四つの舞台を同じような比率でつなげたものを、J・K・ローリングは七作も書いたのですね。
【専門用語で、解説】
実は、専門用語で解説すると、
現実世界+魔法世界=第一幕
ホグワーツ魔法魔獣学校=第二幕
ラストの舞台=第三幕
と呼びます。
そして、この四つの舞台のつなぎ目には、それぞれを糊付けするイベントが発生します。
現実世界→(インサイティング・インシデント)→魔法世界
魔法世界→(第一ターニングポイント)→ホグワーツ魔法魔術学校
ホグワーツ魔法魔術学校→(第二ターニングポイント)→ラストの舞台
この三つのイベントは難しくはありません。ただ単に、「舞台を移動する」というイベントが発生するだけです。
【2時間映画で考えてみよう】
ハリーポッターシリーズを二時間映画で一般化すると、次のような感じです。
0~10分→現実世界(ダーズリー氏の家)
10分→現実世界から魔法世界へ移動するきっかけ(手紙が届く、空飛ぶ車が現れる、迷子の魔法使いお助けバスがやってくる、ウィーズリーの一家がやってくる、マッドアイたちがやってくる、ダンブルドアがやってくる、など)
10分~30分→魔法世界(ダイアゴン横丁を歩く、空飛ぶ車で空を飛んでいく、ダイアゴン横丁近くの屋敷で過ごす、クィディッチワールドカップに出かける、不死鳥の騎士団の本部や魔法省の法廷に行く、など)
30分→魔法世界からホグワーツ魔法魔術学校へ移動する(ホグワーツ特急でホグワーツ魔法魔術学校まで行く)
30分~90分→ホグワーツ魔法魔術学校
90分→ホグワーツ魔法魔術学校からラストの舞台へ移動する
90分~120分→ラストの舞台(賢者の石の地下室とか、秘密の部屋とか、叫びの屋敷とか、迷路とか、魔法省の神秘部とか、分霊箱のある洞窟とか)
つまり、四つの舞台をつくり、四つの舞台の間にそれぞれ「舞台を移動する」というイベントを三つつくり、それらの舞台を「1,2,6,3」の比率で並べればいいということになります。
以下では、もう少し踏み込んで、重要なポイントを考えましょう。
【いちばん重要なのは、第二幕】
ハリーポッターシリーズでいちばん大事な舞台は何だと思いますか?
そう、ホグワーツ魔法魔術学校、です。
一般に、いちばん大事な舞台を第二幕に持って来るというのは鉄則になります。
まずは、第二幕の舞台を考えるのがよいでしょう。
そこが物語の中でいちばん目立つところです。
次に考えるべきは、第二幕の前、第一幕をどうするか、です。
【魔法世界が果たしている役割は?】
現実世界とホグワーツ魔法魔術学校の間にある「魔法世界の舞台」が果たしている役割はなんでしょうか。
現実世界からいきなりホグワーツ魔法魔術学校に行ってはいけないのでしょうか?
この答えは、実は単純です。
いきなり本題に入ると、急な感じがしてしまう、からです。
いちばん大事な本題に入る前に、肩慣らしをしておこう、というわけです。
ですから、「魔法世界の舞台」は、厳密には、現実世界と魔法世界のグラデーションで、スペクトラムのような役割とも言えるかもしれません。
赤色から急に青色へと移るのではなく、その中間色を間に挟んでから、青色へと移行しようというわけです。
『秘密の部屋』などはまさに中間色で、ロンドンの街という「現実」と、空飛ぶ車という「魔法」が混在した舞台が描かれています。
イメージとしては、
(現実世界)→(現実世界+魔法世界)→(完全な魔法世界であるホグワーツ魔法魔術学校)
という感じです。
そのような観点からハリーポッターシリーズを観てみると、なかなか面白いかもしれません。
【では、第三幕は?】
第三幕と第二幕の間には中間色はいらないのか、という問題があるかもしれませんが、はっきりいって、いりません。
第三幕は、第二幕の続きだからです。
現実世界から魔法世界に移動するというような飛躍はなく、
第三幕も同じように魔法世界です。
このように、四つの舞台をつなげていくことで、全体が完成しているのであります。
とくに、第二幕の舞台と冒頭の舞台をつなげるために、「魔法世界」という舞台が用意されています。第三幕は第二幕の続きなので、急に切り替わっても問題はないのです。
【最後に】
今回は、舞台を四つつくればいい、というお話しでした。
これはあくまでも提案で、舞台を四つつくっておけば構成を考えやすいかもよ、というやつです。
ハリーポッターシリーズは、もちろんファンタジーだからこそ、こういうわかりやすい構成になっているのです。
とはいえ、その思考法はあらゆる物語にあてはめられます。
ほとんどの物語は、なにもないところから始まって、なにかが起こり、非日常世界へと舞台が移り変わります。
ですから、ハリーポッターシリーズが参考になるところも多くあると思います。
なにか参考になっていれば幸い。
以上。山本清流でした。ありがとうございました。