【詩】あなたになりたくない

 もしも誰かと入れ替わるなら

 あの俳優になるだろうか

 あのアーティストになるだろうか

 幸せな人と入れ替わりたいけど

 誰が幸せなのかわからない

 あの人はいつも笑っているから

 あの人と入れ替わったら

 僕も笑い続けることができる

 あの子はいつも踊っているから

 あの子と入れ替わったら

 僕も踊り続けることができる

 でも幸せなのかわからない

 あの俳優は誹謗中傷されて大変そうだし

 あのアーティストにはプレッシャーがありそうだし

 あの人は無理をして笑っていそうだし

 あの子は涙をこらえてお道化ている

 あなたはどうですか?

 あなたは本当に幸せですか?

 みんなは「あいつ楽してる」って言うけど

 あいつもあいつで苦しんでそうだし

 みんなは「あいつ許せない」って言うけど

 あいつもあいつで悲しんでそうだし

 家に籠っている人も学校に行かない人も

 それぞれに違う形の涙を流していそうだし

 誰と入れ替わることができたら

 幸せになれるのかわからない

 「あんな幸せな人はいない」って風の噂

 「あの人は幸せだねぇ」って街の声

 「あの人になりたい」って人ばかり

 「自分が嫌だから」って言われても

 あの人が本当に幸せなのかわからない

 僕はあなたになりたいと思ったけど

 あなたがどれだけ幸せなのかわからないから

 万が一あなたのほうが苦しんでいたとしたら

 入れ替わらないほうがよかったってなる

 あなたが放った言葉とか

 ときどき見せる仕草とか

 一生懸命に思い出して考えるけど

 あなたが幸せであることを証明できない

 僕はあなたになりたくない

 あなたの隠しているものが見えないから

 幸せのために賭けたくないから

 あなたは誰か、候補はいませんか?

 この人なら絶対に幸せだって人のこと

 「それはわたしだよ」って言ったあなたのこと

 僕はいまだに信じていない

 僕はあなたになりたくない