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同人誌制作バトル感想戦(勝手に感想を言うだけの回)

に書いたように、昨年わたしが聴講していたマンガ教室のオンラインイベントが開催中。3サークルが同人誌を販売して、売上部数を競います。昨年までは、コミティア内のブースに出店していたのですが、今年はオンラインのみ。ですが、集計期間はおよそ1ヶ月に及ぶ長期戦。1作品でも誰かの手に届きますように…と祈りながら、このnoteを書きました。

たくさんあるので、作品の感想は2センテンスまで。それではどうぞ!(売り切れ間近だとのことですが…!)

『欲 その望みは破滅—。』(ひらめき☆マンガ教室第4期チームA制作)

マンガ以外の特集・インタビューが面白い。マンガに限らずクリエイティブ領域に興味がある人におすすめ。作品それぞれを見れば「破滅」や「欲」そのもの。サークル内の表紙コンペや作品のあとがきから漂うのは、部活的な調和。しかし、読み終えてみれば、むしろ「祝祭の終わり」を予感させる。

▼作品のそれぞれの感想▼
iyutani「毒煙」

表紙と同じ作者さんで、めくりを促すための、プロローグ的な役割に徹しています。ストーリーの脳内補完も苦にならない、美少年・花・眼帯・学生服……次々と繰り出される欲望の波状攻撃に眼福です。

片橋真名「僕だけのひみつ」
ゆるBLと異性装、愛でたい欲望について。読み手に対する【ひみつ】の構造が練られていて、主人公の「あざとかわいさ」と親和性が高いです。

桃井桃子「えいえん、あるいはラブホテルの休憩時間」
ゆる百合。アイドルな少女小説家、学生時代の想い出……詰め込みすぎ?とも思うけど、ほどほどに開いた空間とムダのないセリフで、読みやすい。

motoko「王城の鼠たち」
出世欲にまかせた無鉄砲ぶりがかわいいギャグ冒険もの。一般的なRPGゲームの世界に馴染みがある人ならスッと入っていけるものだと思う。

かずみ「永遠の愛」
子どもが見ても惹かれる絵なんだけど、いろんな意味で自覚する大人のみにすすめる作品。ジュブナイル小説的な仕掛けで幼女への欲望を描くのは、切なさ倍増。

かれーとさうな「晴れときどきV」
誰でも配信ができる世の中だと了解しているからこそ成り立つ笑いでツボ抑えた4Pギャグマンガ。そして何気によい話なので、心が荒んだときに読みたい。

瀬戸チヒロ「恋はストレートと共に」
「王道の少年マンガ」と「王道の少女マンガ」が合体して、零れ落ちたおかしさをひとつ残さず集めてきた感じ。手描きとスクリーンの使い方がアンバランスだけど、それも「あえて?」と思いたくなる。

丫戊个堂「ミステリー好きとクトゥルフ好きがぐうぜん出会って破滅?になるハナシ」
コナンのダブルデート回すべてを圧縮した概念はこんな感じかもしれない。設定が複雑で渋滞しそうなのに、最終的に謎さえも葬り去れるので、「「破滅」というテーマには全能の神感がありますね。

watagashi「僕を軽蔑してほしい」
主人公がもともと自覚していたのは「この顔が怒りで歪む瞬間を見たい」とという欲望だったはずだけれども……。とにかく、ひとつの人格にSとMは共存し得る。

内存ナコト「ロフト」
「自粛生活」に飽きた人はみな、二度読みして震えるべき。掲載の順序もあいまって、まったく別の危うさにアンテナを張ってて油断する人も多いのでは。

のり漫「結婚記念日のディナーは。」
O・ヘンリー「賢者の贈り物」をメタ的に現代の日本でやるとこうなる、という感じ。さらにメタ視点を駆使すれば、着地点を「破滅!かと思いきや…?」に変更することも可能だったかも。

田山「うたげの日々」
ピーター・パンmeets乙女ゲー的設定に忍び寄る現実の影。小学校を卒業して制服を着ることを選んだ時点で、少女は「外」の可能性を本当気づいていたはずで、余計に哀しい。

『読めば、聴こえる。』(ひらめき☆マンガ教室第4期チームB制作)

「とにかくマンガで表現する!」という気概に満ちた本。作品のみならずデザインやコラムも「音」を軸にしていて、ゴールを見据えた展開が面白い。人が紆余曲折を経て生きていく道程がぼうっと立ち上がる。ボリュームやテーマの緩急が効いていて、さながら楽曲のアルバムを聴いてるよう。

▼作品のそれぞれの感想▼
清水しの「音無さんを許さない」

無敵でかわいい音無さんと学級委員長の、友達以上ゆる百合未満のやり取りがちょうどいい。ピヨピヨした劇伴が似合うな。

横たくみ「モノラルラブ」
誰に何を言われようとも、あいみょん「君はロックを聴かない」が脳内で流れる作品。少しばかりの疑問が出ても、リズム・テンポ・人物の表情が消し去ってくれそうです。

畑こんにゃく「シドラミソ」

新興宗教からの洗脳と覚醒。破防法を適用された、あの界隈を思い出しながら読み進める。ちなみに今日現在、「シドラミソ」で検索しても、この作品以外にGoogle検索に引っかからないのある……すごいぞメキメキ教。

広木素数「ラブソングのないサイドB」
愛の不在を嘆きながらも、良識音質についてのミスリードも、それはきっと、この主人公が善き大人に囲まれているのに気づいていないからで、でもそれは幸せなことなのだ。

つまようじ「先輩に告白したいJCの話」
恋する乙女が一直線に突っ走るマンガですが、作家によって「音のマンガです」と提示されるとマンガにおける擬態語とは何か……音であって、音だけではない……そんな重要な視点がハッキリと見えてくる。

こぐまあや「風鈴のひと」
痛くてかわいいマンガ。少し大人の女性と、彼女に夢中になった男子大学生の、思い思われが切ないけど、口の中がドットのトーンでかわいい。

くたくた「くゆる」
簡単に共感するべきことではないけど、このような感情を切り捨てるのはもっとよくない。大事なことが描いてある作品。

なないつ「彼女たちの本音」
小さな頃から、大好きな戦隊シリーズを観るたびに胸の奥でつぶやいてた本音が聴こえてくる。愛好家から賛否両論ありそうなのは承知の上ですが……!

kuzikuzira「大人の声」
取り残された人しか聞こえない音の変化を伝えるマンガ。決して多くないページで、一部の人しか知覚できないことを伝えられるのはきっと、コマそれぞれにムダがなく、意味づけがされているから。

pote「メイドインハート!」
ただただ、ひたすらにメイドさんがかわいい作品。タイトルと内容のリンクの仕方がとても良い。

藤原白白「Now on air」
大人(35歳以上)のための少女マンガ。モノローグと周囲とのセリフが複層的に進行していく少女マンガの文法に従って、男性主人公が奮闘する「かつての雰囲気」が味わえるのが、いいのだ(恋愛かどうかは関係ない)。


「ふれたい。」(ひらめき☆マンガ教室第4期チームC制作)

全身全霊、あらゆる方向へのホスピタリティが詰まっている。まず「コロナ禍」にあるすべての人に宛てたテーマと作品。掲載作品それぞれが登場する表紙(裏まで1枚絵でかわいい)。作品を深く知り、外の人にも知ってもらうためのデジタル企画。すべての試みは「ふれたい」を叶えるために!

▼作品のそれぞれの感想▼
木ノ上 万理咲「触れたい背中」

表紙のお姉さんが出てくる巻頭作品です。古本屋が舞台、幼なじみ、文学少女とヤンチャ男子が成長したら……という鉄板のお話ですが、「触れたい」に意味があってかわいい。

柴田 舞美「外に行きたい」
近未来とか妖精ファンタジー的な世界かと思いきや、二重・三重の仕掛けがあるのが心にくい。小さな壮大な冒険。

矢野七味「ねこまわり」
割と日常系の描写から始まり、コマの運びとともに読者を知らない場所に連れていく。振り返ったらもときた道が分からなくなった、そんな感じにも似ている。

俗人ちん「ハリくんに触りたい!」
触りたいのに触れない。ゲームの世界のお話ですが、現実でも「かわいいネコちゃんに逃げられた……」という虚しさの「あるある」をわかりやすく届けてくれる。

あまこう「丑三つ時」
「怪奇譚とBLは相性がいい」と言い出したらなんでもよくなりますが、そんなことを言いたくなるマンガ。すり抜ける虚しさに耽溺する方向もあったと思うけれど、それを笑いに変えるお気楽さの中の恐怖が、バランスがよい。

 盛平「赤ずきんちゃんの寄り道」
さまざまな「王道」設定と可愛らしさを過剰に掛け合わせていくことで生まれる、不思議な世界。とにかくかわいい。

コバヤシ「Don’t touch 貧乏神」
この神さまは、もはや死神さま………?ギャグに異論をはさむほど野暮なことだとわかっているけれど、ヤクザなブラザー2人の生を見つめてしまう……読み手がギリギリだからかもしれない。

あへー「霊能ガールと二重人格ボーイ」
ボーイは何故二重人格なのか、ガールが自分の気持ちに素直にいつになるのか……。病をなんらかの霊能的なものに頼っていた時代を思い出させるヒマもなく、パワーで押していて、すごい。

シバ「ミレンの和太鼓

「ヒロインかわいい!」だけでも成立しそう。だけど、そこで終わらせずになぜ人の内面に「ふれたい」のか?というところまで踏み込んでいるところに意欲が見える。

うめていな「ヒカリの見つけ方」
とにかく、ラスト6ページに圧倒される。「ふれたい」の最後を飾る作品として、ここに置くしかないと思います。

そして……詳しくはコチラ!

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