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ソルティドッグの夢【ままならない身体】

不意に訪れた哀しみ。大好きな柑橘系を食べれなくなってしまった。

先日、膠原病の薬を変えることになった。数値が良くないのに痛みは取れない(治したい)から仕方ないのだけれど、それにしても「禁忌」の食品が多い薬は、とても堪える。

グレープフルーツを筆頭とする柑橘系……これから旬! なのに!
しかも、フレッシュな状態だけではなく、熱したものもNGだという。もちろん、免疫抑えすぎて動けなくなるのは困るから、禁忌を犯そうなどとは思っていない。

しかし。それはそれとして。お馴染みの味が急に懐かしくなってしまう。

「ソルティドッグ、もっと飲んでおけば良かったなぁ。オランジェット、もっと食べておけば良かったなぁ。あ、家にあるオレンジピールどうしようか。あれ? ジュレと鴨肉の組み合わせとか、フルーツサラダも無理っぽい。もしかして、季節のフルーツタルトも……」考ええばキリがない。

どうかすると「食べることぐらいしか楽しみがない」と言いがちな性質なので(それも問題だが)、とにかく哀しみが深まるばかりだ。

とはいえ、悲劇のヒロインになりたいわけではない。

一番怖いのは、自分が忘れて口にすること。先ほど、さっそく「ビタミン補給を……」と言いながら、無防備にジュースの棚に手を伸ばしていた。我に返ったからいいものの、あやうくシークワーサージュースを飲むところだった。本当にすっかり忘れていたのだ。分かっているけど、自分が怖い。

もしも誰か、わたしが柑橘系の食べ物に手を伸ばしているのを見た時は、どうか止めていただきたい。

もしもサポートいただけたら、作品づくり・研究のために使います。 よろしくお願いいたします。