栄冠は誰の手に?ひらめき☆マンガ大賞【加筆済み】
ひらめき☆マンガ教室第3期の最終講義が6/27に迫りました。ここで発表されるのは、「第3回ひらめき☆マンガ大賞」。今までのペナントレース的な10回に及ぶ課題の点数に加えて、最終課題に勝負が委ねられております(加算方式ではありません)。
しかし、独走していた由田果さんが提出しないというまさかの(途中からそんな気配はあったけど…本当にそうなっちゃうとは…!)展開に。さらには、前回選出された矢作さんも完成稿提出せず。
野球で言うところの「M1なのにゲーム差1.0以内にひしめき合っている」的な、絶対にありえない混戦であります。
ここに最終稿が並んでいるのを眺めていて、2つのことを思いました。
まず、マンガという媒体について。
ゲンロンの他のスクールに比べて、マンガ講座はとにかく作品を問われています。プレゼンテーションが得点にほぼ左右されません。1年間学んでわかったのですが、これは、ひたすらにマンガの特性なのだなと思いました。複製が前提のマンガだからこそ「誰に向けたどんな作品が」が重要。作家性は作品の内側に存在するもの。時には批評的な側面があっても、売り方も、それはイコール「作品」に含まれるのだと実感しています。
そして、卒業式であるということ。
この講座を通じて取り組んできた、マンガとどう関わっていくのかを見極める、ということが如実に現れていると思いました。それは、ノミネート外でありながら作品を提出する人がいる一方で、完成稿を出さない、出せない、というカードを選んだ人がいるのがわかる。先日、オンラインで行われた通常コマの「最終講義」では実感がなかったのですが、けれども、本当にいよいよこれで卒業なんだな、という雰囲気がそこかしこに感じ取れます。
というわけでノミネート作品から!(これまでの点数順 ※同点は課題提出率にて算出)
【大賞ノミネート作品】
タケチイチコ
「空と蜘蛛」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/takechi1ko/15828/
完成度が高い…。赤鬼・青鬼とカンダタのやりとりにリアリティを感じる。トリクラスタなので、小鳥さんがかわいいの推せる。お釈迦様もイジワルで尊い顔。そうしたツボを押さえたキャラクターがしっかりとしていて、かつ読後感の余韻がよい。想定読者が「武富先生」というのはジワる案件。
Kubota
「蔓延性フラットライナーズ」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/kubota/16005/
最初の入り方、やはり良くて、いつのまにか48ページ読んでしまう。吉住さんには、もっとわかりやすい華やかさがあっても良かったなぁとは思いました。(愛くるしいでもクールでも、たぶん尾形みたいなクセはあると思う)それにしても、最初に作者名を入れた方が良かったのではー。
景山五月
「こころよるやま」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/gogatsu/16065/
主人公の孤独感がわかるようになってて良い。子供世界の残酷さも、よく出ている。主人公と狐の眼の表情に惹きつけられますね。演出が多彩で飽きさせませんが、とりわけ「線の扱い方」のバリエーションに富んでいます。何よりかわいい。かわいいぞ〜〜。
ハミ山クリニカ
「こんな晴れた気持ちのいい日に宇宙の真理とか言ってくれ」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/kllinika/15914/
人面犬から星座早見盤に変わったのは狙いどおりだと思いました。250万乙女の聖書(バイブル)時代の人間じゃなくても、天文好きのセンパイなら、世代を超えてリーチできる。ラストの成長していく感じは、大人から見ると胸が熱くなりますね。
吉田屋敷
「ビームガンアンドハイパーバズーカ」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/yoshida444/16685/
8頁でこの展開、凄い。吉田さんのエクスプロージョン描写が好きです。読み切りでもあり、バディものが始まる予感もします。時節柄、ボディポジティブ的なことへの応答が裏テーマあるのかな?と思って読みました。
暮介
「親殺しの館」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/guresuke/15755/
ネームから完成稿から「的確に仕上げる」ことができているなと思いました。いろいろなところがクリアになると、話がスッと入りやすいですね。ラストは、サバイバーの話としては食い足りない部分もあっと思うのですが、演出と相まって初読は気になりませんでした。
【大賞は選外だけど素敵な作品たち】
拝島ハイジ
「おとなげ」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/heidimasa82/15935/
カラッとした絵柄で湿度のある話を。「生徒×先生」への答えの出し方に可能性を感じる。これが唯一の正解ではないけど、こうした視点のマンガはあまり世に出ませんよね。大人になれば、おのずとこうした関係性の理解が出てくるのに、そうした作品を「啓蒙・告発」以外に見ることが少なすぎて。そんな世の中の構造のイビツさも思ってしまいました。うん、いいマンガ。
(個人的な経験からすると「あ、でもそれは…どこからどこまではいいのか…」みたいなことにもなってくるけど、でもこういうマンガ、あってもいいよね)
鴫原一起
「価値」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/kuzikuzira/15867/
ネームの原型がなくなっている……!でも、想定掲載媒体を定めると、精度が高くなるのかなと思いました。カノコちゃんのメガネが外れているので新キャラ?と思ってしまったのがもったいないなと。
土屋耕児郎
「コンビニエンス」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/namatsuchiya/15726/
2期で取り組んだ中で、いちばん丁寧な描写だと思いました。ページ数と企画のボリュームもちょうど良い「読ませる」作品。2011年から始まり、時代はいま、だとしたら、今の感じが出ても良いかも…などと思いましたが。最終ページの願望の行方が気になる。この男性の今後は一体どっちだ……?というラストは、土屋さんの間合いだなぁと思う。
菜は菜っ葉の菜
「何それ!?菜っぱちゃん!」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/pillow/16308/
そうか、今思えばわたしは、中島さんに嫌われていたのかもしれない。中島さんの描く瞳の表情が好きだし、この最終作品、お仕事マンガとしてもすごく推したいです。センスが試される感じ、あの圧迫感……うん。社で回し読みしたい。
グヤグヤナンジ
「新しい音」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/guyaguyananji/15793/
やっぱりこの話好きです。ビートの感じが出ている。データの処理の仕方かもしれない、ペン入れの効果がもっと出ていたら、と思うところがあるのですが……とにかく、このマンガをプレゼントする人に喜んでもらえたらいいなと思いました。
禄縞ろろこ
「ルナシスヲエーコ」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/loloco/16631/
ご、ごじゅうろくページ!裾切ルナのペン入れ見れて眼福。いや!だから!そうじゃなくて!いろいろ詰め込みすぎて、電車の中で笑いがこらえられずにマスクしながら変態野郎になってしまったじゃないかッ。こちらは全然イケメンジャないから、ただキモいだけなんですけどー。完成稿アピールと内容が若干ずれているのも気にならないぞ。
市庭実和
「事故物件でグッモーニン」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/tilapia/15685/
このお話の企画は、中間ワークショップのものが原型。半年間ぐらい、進化し続けているのですが、さすがに一番完成されている。おどろおどろしさとかわいさが共存しててよい。ずっと知っていると読めてしまう部分もあるけれど、これはネーム時よりもまとまってて初読でも迷子にならないほど、クリアになってなって思います。
かいじる
「もこもこせいかつ」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/kanizem/16781/
なにが・・・・起きたの・・・か・・・?その手があったか・・・なる・・・ほ・・・ど・・・!(でも好きな話だよ。同人誌にも載ってる)
ここから加筆です…ごめんなさい!!
ohミステイク!などとユニコーンを歌っても誰もわからないと思いますが、とにかくごめんなさい。
五月十三日
「君が望むこと」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/admwtjgmgm/15594/
見とれてたのに…!掲載していなかった……(平謝り)
主人公が自分で考えて話をしたいと思った相手は表情がとても豊かで、その前までの女性たちは文字しか浮かんでいないのが、なんか、良いなと思いました。ペン入れの効果が、女性のエロ表情に集中していたような気がします。でも五月さんの描く女性、いい表情なんですよね。あと、牧瀬くんが尊い。報われない感、いい。
飯島 健太朗
「松屋でごちそうさまでしたって言うのむずすぎ問題」
ごめんなさい…!すごく面白かったのに…!こちらに載せていなかった……(平謝り)
以前の課題のブラッシュアップですね。「あるある」をちょっと角度を変えてナンセンス的なフィールドに持ち込むの、絵柄と相まって、ひとつの世界を作っているなと思います。飯島さんは描き込めてしまう人なので、フラットなコマとのバランスがとれると、立体感が出てくるので、締まって見える。いつの間にかカルャー誌に載っていそうな感じもします。コミティアに出すそうなので(秋かな?)楽しみです!!!
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