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わたしのタコス

6月ぐらいからずっとトルティーヤプレス(編集者注:鉄の塊です)を持って移動している気がする。
東京と大阪でレッスンを行っているので、スーツケースの中には常に重いあいつが入っている。

きっかけは友人の一言。
「りょうこ、夏はタコスのレッスンをしてよ!
 サルサやスパイスで味付けをしたお肉を並べてトルティーヤで巻いて食べたいよ!」

ん??タコス????

わたしの頭の中にあるぼんやりとあるタコスのイメージは、何かの皮に包まれた、ひき肉とトマトと玉ねぎ。
あと缶詰に入った豆とボトルに入ったトマトのソース。

もうずいぶん前に遡る。
大学時代の恩師がアメリカ人女性教授だったので、ゼミの飲み会と称したホームパーティーを自宅で良く開催してくれていた。
そこで必ずと言って登場していたのが、私の頭の中にぼんやりと残っているタコスだった。
学生だった私は日本に登場したばかりのコストコへの買い出しを手伝って、大量のひき肉とタコスシーズニングを炒めた思い出がある。

大学の外国人住宅に在る先生の家は、海外のような素敵なインテリアに囲まれていて、海外に独特の柔軟剤のような匂いがした。
そこにタコスのスパイスの香りが混じり合っていた事を記憶している。

前置きが長くなったが、わたしのタコスに対する知識はそんなもの。
ただ、どうせレッスンするのであれば色んなことを調べた上で皆さんにお伝えをしたい。
残念ながら、メキシコに行くのは間に合わないので、本やネットでメキシコ料理について調べることにかなりの時間を費やした。
そして、ラッキーなことにメキシコシティにオンラインレッスンを受講してくださっている生徒さんが居て、彼女にタコスやメキシコ料理について詳しくインタビューをする事も出来た。

そこで知った事は、我々が思うタコスとメキシコにおいてのタコスには乖離があると言う事だ。

わたしが大学時代に食べさせてもらっていたタコスは、どちらかと言うとアメリカのパーティ料理で、どうもメキシコのスタイルとは少し違っている。
そもそも具材にひき肉を使ったものが、メキシコにはそんなに見当たらないし、小麦粉を使った皮よりもやはり、とうもろこし粉(マサ粉)を使った皮の方が一般的なようだ(マサ粉はとうもろこしを石灰処理して薄皮を取り除き粉にしたものです)。
そこには色んな理由があるみたいなのだが、ここに書くと長くなるのでまた別の機会にしたいと思う。

今回のタコスのレッスンでは、せっかくならばと塊肉を使ったり、焦がした野菜でソースを作ったりした。
日本では手に入りにくい食材もあるので、そこは代用出来るものを探しながらであったのだが、遠からずのものに仕上がったのではないかと思っている。

いずれにしても美味しく食べれば良いのだけれども、料理教室と言うからには食べ物の背景や歴史についても出来る限り調べてお伝えしたい。
食文化とは良く言ったもので、歴史、風土、宗教は複雑に絡み合っていて常に変化をしている。

まあ、長々と何が言いたかったと言えば、そんな事を再認識させてくれたタコスに感謝をしていると言う事。
そして、生徒さん達も楽しんでくれたようで60名近生徒さんからトルティーヤプレスを買ったという連絡を貰い、レッスンではなんだかんだと具材を挟んで8-9枚のタコスを平らげている人もいた。

有難い事だ。

余談だが11月と12月の対面レッスンのテーマは「檸檬と生姜の料理会」

なのだけれども、このレッスンでは、心残りだったお米を挟んだタコスを紹介して今年一年を締め括ろうと思っている。

と言うわけで、年末までわたしのスーツケースにはトルティーヤプレスが入っていることになるだろう。
そして、いつかメキシコにトルティーヤプレスを持って旅に出たい。