YOROKOBU PALE ALE誕生(中編)
思わぬご縁で叶った「クラフトビールをつくりたい」という想い。
私たちは、「函館×上勝町」を表現できるビールをつくるべく、さらに具体的にそのコンセプトを考えました。
そこで、以前から薄々思っていた、「生の海鮮にクラフトビールって意外と合わないんじゃないか問題」を解決できるビールをつくってみよう、ということになりました。
そして何か函館らしさ、を表現できる原材料。さらに、上勝町の「ゼロ・ウェイスト」のエッセンスを感じられるもの。
そんなことを考えながら色々と素材を探すうち、「昆布」に辿り着きました。
そこから、函館真昆布をつかい、ビールのスタイルもサワー、IPA、ペールエールなど色々試し、さらに昆布の濃さについても色々な濃さでの試作をして頂きました。
いよいよ待ちに待った試飲のとき。それぞれのスタイル、昆布の濃さも様々。
海鮮や、匂い強めの魚卵、野菜など色々な料理を用意し、試飲会を開催しました。
そしてわかってきたことは、クラフトビールのホップの強さが海鮮に合わないのではないか?ということ、そして昆布の味は温度が上がってくるにつれ風味が広がりやすくなるということ。ホップの香りの強いIPAスタイルは候補から外し、ゆっくり飲んでいるうちに温度が上がることも想定し、ぎりぎりのラインを設定しました。
そして実は試作段階での一番人気はサワースタイル。ただ、このサワーというスタイルはその名の通り酸味が強く一般的な”ビール”というイメージとは少し遠い。とてもおいしいのですが、”ツウ”のためのクラフトビールという感じがしてしまいます。
一方”ビール”としてわかりやすいスタイルであるペールエールは、昆布が加わるとぱっと華やかな風味が広がり、こちらはわかりやすいおいしさ。
クラフト感をつきつめるのか、受け入れられやすさをとるのか・・・議論と試飲は続きました。
そして立ち戻ったのが、『何のためにビールをつくるのか』という、このプロジェクトの根幹である目的の議論でした。
・みんながわいわい囲む食卓にこのビールがあり、気持ちよくビールを飲みながら、函館のことを知ってもらいたい。
・このビールを飲んで上勝町のこと、そしてゼロ・ウェイストという取り組みについても知ってもらいたい。
これが私たちの目的です。
ここに立ち戻ると、結論はシンプルでした。
まず第一弾としては、より多くの人においしいと感じてもらえるもの、そして気軽に飲んでもらえるものにしたい、ということで、ペールエールスタイルを採用することに決まったのでした。
とはいえ、この頃は気候が変化してきていて、函館で昆布がとれなくなってきていることも聞いていました。あえて希少な食材をビールに使うことはどうなのか?という議論もありました。
そこで思い出したのが、「昆布を出荷するときに、四角い形に揃えるため、切り落とした切れ端が発生する」というお話でした。
早速昆布を取り扱っていらっしゃる方に伺い、切り落とした昆布をビール用に使わせて頂けることになりました。
*現在は南茅部漁協様のご好意で、漁協様より函館真昆布をご提供頂いています。
そして次に必要なのは、ビールのラベルです。
ラベルは、すぐに決まりました。
以前から、「もしビールをつくるときがきたら、カモメに関係したデザインにしたい」と決めており、友人の画家に「カモメのいる景色のビールのラベル」の絵をすでに描いてもらっていたのです。
海があって、山があって、そこから元気な太陽が顔をのぞかせる・・・
函館育ちの私には函館山のようにもみえたり、旅先でみた他の山のようにも見えたり。見る人によって自由に感じてもらえる、そんな自然な絵がとっても気に入っています。
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