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店舗開発のお仕事2:商圏調査・物件調査

Tanoue@店舗開発P

①    商圏調査・物件調査


出店戦略により、出店エリアや路線を決定したら、実際に商圏(エリア)の物件を検証しながら決定していきます。出店戦略を検討する段階で、証券調査を並行して行うこともあります。

1) 商圏調査
仮に将来の多店舗化を目指し、城西地区渋谷区への1号店出店を開始する、とします。業態は客単価3500円程度の居酒屋とします。
渋谷駅周辺は家賃相場が高いため渋谷区内で良さそうな商圏を探すと、京王線の笹塚駅、小田急線の代々木上原駅があります。それぞれの駅の状況は以下になります。
*乗降客数は各電鉄会社のHPより
・笹塚駅(京王線)新宿から1駅:4分 乗降客数61,710/日(2021年)

京王電鉄HPより


・代々木上原駅(小田急線)新宿から4駅:7分(急行・快速特急1駅:5分)
 2021年:小田急線乗降客数207,581人/日 千代田線乗降客数215,269人/日
 *上り・下りとも同じホームで乗り換えるが、千代田線の乗降客数の平均
  が小田急線よりも多い。両線とも小田急線と千代田線の乗降客数含むと
  思われる。正確な実数は不明だが、実際の代々木上原駅の乗降客数は
  40,000人程度と推測されている。

小田急電鉄HPより
東京メトロHPより

笹塚駅から代々木上原駅は新宿から並行して走っていることもあり、2駅間は徒歩なら20分、車なら6~7分ほどの距離にあります。しかし駅前の様相は随分違います

【笹塚駅】
駅前の用途地域は、準工業地域・商業地域・近隣商業地域。コロナ前は8万人前後の乗降客がいた。近くに上場企業本社が3社あり、隣の幡ヶ谷駅にもテルモ(株)など大手上場企業がある。(笹塚駅―幡ヶ谷駅間は徒歩12分)
駅前は京王グループによる複合施設や京王モール、ショッピングセンターがあり、日中の交流人口が多く、甲州街道沿いなどに大手チェーンの飲食店が多い。
現在、駅北側の新宿中村屋工場跡地が「笹塚駅南口地区 地区計画」に基づき、三井不動産により再開発中であり、その先を北側に進むとは代々木上原に向かう住宅地があります。一方で笹塚駅南側は甲州街道を挟み十号通り商店街を抜けると中野区に向かう住宅地があります。上場企業の本社や背後の住宅エリアを考えると平日は通勤する会社員、平日は住民層の潜在顧客が見込めそうである。
 交通アクセスは、京王線笹塚駅、都営新宿線始発駅。バス路線は、渋谷駅から中野駅、阿佐ヶ谷駅行のバスが頻繁に運行しており、途中バス停が笹塚駅周辺に複数ある他、渋谷区のハチ公バスが周辺に細かく停車するため、アクセスが良い。
注)笹塚駅は準工業地域ということもあり、かつては桜護謨や新宿中村屋の工場がありました。そのため、大きめの商業施設があります。

【代々木上原駅】
 駅前の用地地域は、第一種低層住宅専用地域。駅ビルとしてアコルデ代々木上原があり、スーパー・飲食店・書店が入居する。駅前にチェーンの牛丼屋、ダイソー、駅近くに串カツ田中が1店舗ある他は、チェーン店はコンビニのみである。ミシュラン店舗/ビブグルマン店舗が点在し通好みの飲食店(個人店)が多く、目的性の高い飲食店が繁盛している。
周辺には複数の大使館や東京ジャーミー(イスラムモスク)、古賀政男音楽博物館などの宗教、文化施設があり日中の交流人口はさほど多くない。
 交通アクセスは、小田急線・千代田線始発駅である。渋谷駅からのバスは大山町停車があるが本数は少なく、ハチ公バスが20分に1本駅前に停車するが、バス停は隣接する代々木八幡エリアに多く点在する。
*代々木上原駅から代々木八幡駅は徒歩8分/650m

地図で位置関係を確認すると以下の図になります。

徒歩で各駅間を移動した場合の分数(Google Mapより)

 別の視点で jstatmap から、笹塚駅半径2キロ圏内のエリアと商圏の状況を確認します。

笹塚駅半径2Km範囲

商圏レポートを確認します。

分析レポートを出力すると国政調査を元にしたデータがでます。
先に出力した半径2キロ正円が楕円形に変形しています。
基本分析を確認すると、1次エリア内の顧客対象年齢20歳ー64歳人口が174,310人だと分かります
jSTAT MAPの商圏レポートは、5年毎の国勢調査に基づいています。そのためリアルの状況を確認する場合は、東京都の総務局統計部データや、各行政機関のデータを確認します。              

 両駅とも新宿駅から急行で1駅、電車で4,5分の距離の位置にあり、両駅間は徒歩20分程度ですが、駅前の様相は随分違います。自社が展開する業態にとってどちらが良いのか、現地視察やデータを元に検討し出店エリアを選定します。
 設定した客単価3500円程度の大衆向け居酒屋業態の展開を目指すのであれば、笹塚駅の方が1次エリア内に174,310人の顧客人口が居住していること、上場企業があることからサラリーマンが需要に応えてくれそうです。また、笹塚駅の2キロ圏内には代田橋駅や方南町駅も入るため、バスアクセスでの顧客も拾えそうです。
 
 上記のように出店を計画する場合、近隣商業地域かつ背後に住宅地が控えている商圏が良いと第一検討エリアにするのであれば、笹塚・幡ヶ谷・初台や中野エリアなどの近似の商圏の中で物件を探して行くとよいと思います。
 数カ月経っても良い物件が見つからず、他の商圏に広げて探す場合も、駅前近隣商業地域から住宅地に続くエリアを探して行くと想定したような属性の方々(お客様)がいる傾向が強いです。

また、商圏調査では、商圏データの収集で終わらず、必ずターゲット商圏内を歩き、街を歩く人々の属性や競合店、ターゲット商圏で人気の飲食店はチェックします。

注1)笹塚駅のように乗降客数が6万人以上(コロナ前は8万人以上)の駅は
   普通の住宅地ではなく、近隣に企業があることが多いため、周辺の企
   業を調査します。
注2)TG(トラフィック・ジェネレーター)になるような大型施設が近隣に
   近い未来できる予定がある場合は、チェックが必要です。例えば、駅
   南口が商店街やSCがあり賑わっていても、北口にシネコン付きにの大
   きなSCができる予定があると、人流が変化することがあります。

2) 物件調査
 出店エリアを決めたら次は物件選定を行います。
物件の場所は1Fに拘りますか?駅を基点とした人の流れを掴む通りに物件があり1F物件は家賃が高く手が出ない場合、専用階段のある2Fや地下物件も検討して行きます。どうしても1Fに拘り家賃を安く抑えたい場合は、大通りから少し路地に入った1.5等や2等立地も合わせて検討していきます。
 仮に駅前の雑居ビルを検討する場合、その区画に営業上必要な電気・動力・水道・排水・ガス等の必要設備容量があるか、排気(ダクト)設備はあるか、看板は設置できるか看板の視認性は良いか、消防法上必要な2方向避難が取れているか、などの確認が必要です。
特に注意確認する3つの設備ポイントがあります。
a)     排気ダクトは臭いの問題で、近隣トラブルを避けるためにビルの屋上までダクトを上げることを求められることがあります。最初の調査段階でチェックしておきます。新規でダクトを屋上まで上げると工事費用が大きく跳ね上がります。
*炭火を使う業態は、一般ガスの排気量の3倍が必要なため業態よっては注
 意が必要です。
b)     既存の電気容量が不足しビルのキュービクルに空きが無く、東京電力に 低圧内の申請可能な場合でも、配線工事が申請後に1.5カ月~2カ月近く掛かることもあります。
*キュービクルはビル専用の変電所、ビル全体の電気容量が500Aを超えると設置が必要。
c)     ガスの容量の確認。ガスメーターの容量、区画内への配管状況によってガス会社に確認が必要です。

飲食店用物件を探す場合、前テントが飲食店でも業態が変われば、必要な設備容量が変わります。状況によって本管などの工事が必要な場合がありますので、確認をします。
開業までの空家賃がどの程度掛かるか、把握しておくことで総投資コストの管理や収支予測、予実管理が堅実にできます。

次回は契約条件交渉(経済条件)について書きます。


店舗開発のお仕事についてマガジンに纏めています。
独立前の3つのチェーンストア勤務時代の業務、独立後のスパイカ(株)の業務内容について記載しています。

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