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『いのちをうつす』展へ

上野にある東京都美術館で『いのちをうつす』展が開かれている。タイトルに沿うように6人のアーティストがいろんないのちのあり方を表現している空間だ。きのこであったり野草であったり鳥であったり。なかでも目を引くのが大きな体の、馬・牛・ゴリラのいのちだ。

本展のポップアップ画像には、体に宇宙が閉じ込められているかのような馬が表紙を飾っている。名前はメジロマックイーン。生涯獲得した賞金は10億円を越え、親子3代連続で天皇賞・秋の優勝馬という、血筋よし・スペックよしの伝説に残るタイトルホルダーである。

・1970年:天皇賞・秋 優勝馬メジロアサマ〈祖父〉
・1982年:天皇賞・秋 優勝馬メジロティターン〈父〉
正直なところ、筆者は馬そのものや競馬という競技に興味はない。馬の体から感じる宇宙空間のような見え方に、ただただ見入ってしまうのだ。赤っぽかったり青っぽかったり、星のような雪の結晶のような、燦然と煌めく馬の体に閉じ込められた宇宙空間に。

白いキャンバスには、白黒模様の大きな体で、牛がこちらを見つめていた。まじまじと見ると筋骨隆々な体だ。4本足でしっかり大地を踏みしめる半面、重力に従うお腹とつぶらな瞳がアイらしい。キャンバスの奥のほうから鳴き声が聞こえてきそうだ。

赤や黄色といった強めの発色が背景であっても、圧倒的な存在感で迎えてくれたのがゴリラだ。こちらも大きなキャンバスから、つぶらな瞳をのぞかせている。微笑んだり、何か気にしてたり、子を想っていたり。堂々とした生きざまからシンパシーを感じる。

普段の生活からは直接会うことが難しい生き物について、想いを馳せる時間が生まれた。カメラを趣味でやっているが、たまにはカメラを持たず見るに徹するのも悪くない。大きな体のひとつのいのち。どう捉えるかはあなたの自由である。


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