見出し画像

深呼吸をしに奥長瀞へ

11月21日に埼玉県長瀞へ向かった。目的はカメラで紅葉を撮りに...といえば聞こえはいいのだが、魂にこびりついている季節的な訴えが行動を起こさせているというのが本懐だ。ただただシンプルなこと、人気のない山奥で深呼吸がしたくなるのだ。

「カメラを使って紅葉を撮りに行く」ということも自分から滲み出てくる欲望のひとつということに嘘はない。趣味のカメラに興じ、紅葉映えを狙いたいというのもある。川又から北西へ向かうと中津峡という渓谷があるのだが、真っ赤な紅葉が咲く女郎紅葉が有名だ。

川又ではなく中津狭の女郎紅葉を写真に収めようというのが当初の目的だったが、2022年9月13日に土砂崩れがおきたことにより、中津狭へ向かう道が封鎖されてしまった。1年ほど経過し道は通れるようになったのだが、中津狭へ向かうバスはいまだ運休中だ。

千葉県に住んでいる人間がバスで奥秩父の川又や中津狭へ向かうには、三峰口からでているバスに乗らなければならない。朝の7時台に2本出ているが間に合わせることが難しいので、午前中最終となる10:50発の「川又行き」になんとしても乗らなければならない。

いくつものローカル電車を乗り継ぎ、バスに乗ること50分。バスの中はぼく一人が独占している。辿りついた場所はそこまで人の気配がないような大自然真っ只中という感じではなく、バスから降りると住民らしき人から声を掛けられた。「紅葉ですか?」

話しを伺うと「雁坂小屋」という山小屋のオーナーで、雪深くなる前に小屋を締める準備の最中とのこと。自分としては紅葉予報でタイミングを計ったのだが、「今年の紅葉は早かったから、終わりのフェーズにはいっているよ」とのこと。

貴重な情報を噛みしめながら、荒川の源流沿いをひたすら歩く。時期も過ぎていることからキャンプ場も閉まっていて人の気配はない。山肌はうっすら緑がかっている。川のそばに降りていき、ザックをそこらへんにおく。両手を伸ばして大きく息を吸い込んで吐く。

報われた。頭の中がシャキッとして報われたような気がした。わざわざ時間をかけて人のいないところへ行き、深呼吸をしてみる。それだけでぼくは生きている実感がわいた。車で行けばもっと時間を確保できたはず。だが、あえて時間をかけてみるのもまた一興だ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?